全てを溶かす言葉をもう一度

Treasure

雨のように雪のように冷え切った身体に心


全てを認めてもらいたかった・・・
愛してもらいたかった・・・

*************************************

「雪・・降らへんのかなー?」
12月24日
クリスマス・イヴの教室に響くその声はとても透き通っていた

棗は透き通った声を出す蜜柑の綺麗さに目を細めて言った
「さぁな。」
そして重たい瞳を閉じた

蜜柑の温かい手がぎゅうっと棗の腕を掴む
「寒い・・・」
そう声を漏らす蜜柑に重い瞼を開け棗は手を伸ばす

蜜柑の体は温かかった
棗は逆に寒くなるのではないかと蜜柑の体に伸ばしていた手を離す
「嫌っ!!」
蜜柑はそう叫び棗の胸へと飛び込む

「嫌や・・離さんといて・・。」
棗は目を大きく見開いたままだった

教室には蜜柑の寝息だけが聞こえ始める
棗は蜜柑の寝息で我に返り顔を赤く染めた
蜜柑の茶金の髪が時折入ってくる隙間風により靡いている
その光景はとても綺麗で神秘的なようにも見えた
純粋な聖母マリアのように・・・


「大好きだ。」
しーんと静まり返っている教室に響く棗の声はとても純粋に聞こえた


「もう一回言って。」
蜜柑は棗の胸にあった顔を上げて言った
「蜜柑お前聞いてっ・・?」
動揺する棗に蜜柑はえへへへと笑いながら「もう一回」のポーズをとって言う
「もう一回言ってっ!!」

棗は頬を真っ赤に染めて立ち上がる
勢いのあまり棗の上にいた蜜柑はごつんと椅子の上と倒れ頭を打つ
だが棗はそんな事お構いなしに鞄を持ちドアへと進む
その後を頭を抑えた蜜柑が追いかける

「もう一回だけやからぁっ」
と声を上げて
「却下。」
棗の即答にへこたれず蜜柑は声を上げ続ける
もう一回
もう一回と・・・

ぶつんと音を立てて棗の我慢が解かれる
くるりと後ろを振り向き蜜柑の髪を一房掴み自分の方へと寄せる
勿論蜜柑も棗の方へと引っ張られる

痛みのあまり声を上げようとする
だが・・上げられなかった

蜜柑の髪は解放されぱさぁっと音を立てる
それと共に棗は寮へと戻る

蜜柑だけが廊下に残された
冷たい廊下は蜜柑の熱のせいで暖かい空気に包まれる


「うちは大好きって言って欲しいって言っただけやぁっっ」
棗のいない廊下に響き渡る声はとても温かく幸せそうだった
そしてそう叫ぶ蜜柑の口元は濡れていた






大好きよりも愛情を示せるのは甘い甘い口付け


冷たい体と心をも溶かす
熱い熱いもの・・・







あとがき

ちょっと早めのクリスマス記念フリー小説
第二弾等もあります
でもそれはもうちょっと先です
多分12月入ってからですね・・・
んー12月末までフリーでお願い致します

琥珀



あまりにもドキドキする話でしたので頂いて来ちゃいました♪
本当に文才があって大変羨ましい限りです!!


頂いた日:'05/11/17


-50-

Treasure / top