Canon

Treasure

流れ落ちる雫の音が
心地いい



テレビがら流れるピアノの音色が

心地いい








Canon





『また…雨降ってきた‥』



隣に座る蜜柑が、嫌そうに顔を歪ませる


「お前は‥雨、嫌いか?」


『うん。晴れてる方が、好き』




そうか‥。と言ってまた、雑誌に目線を戻す。





俺は雨は嫌いじゃない。


雨の音は眠りを誘うから

シトシトと静かに聴こえる音は、とても心地良い。


蜜柑に言ったら、否定されるだろうけど。



『あーあ‥今日は蛍とセントラルタウン行くはずやったのに‥』



窓の外を眺める蜜柑は、ため息を一つ附いた





「俺は暇潰しか‥?」


『何でそんな事言うん?』



聞こえないように、呟いた声に反応されて少し焦った




「雨が降って中止になったから、俺のとこ来たんだろ?」



現に、さっき一時だけ雨が止んだとき、とても嬉しそうに今井の所に走っていった


結局再び雨が降り出して
『セントラルタウンには行かない』と、今井に言われたらしくガッカリとした表情で部屋に戻ってきた




『それはそうやけど、棗の所にいるのは別の理由やよ?』


「理由‥って、なんだ?」



理由なんてわかっているけれど、お前の口から聞きたい。




『棗と一緒に居たいから』



求めてた言葉を、当たり前の様に返すお前が、どうしようもなく愛しい‥



「…俺の所に居ても楽しくないだろ?」


雑誌を閉じて再び蜜柑を見つめながら、呟いた



『そんな事無い、楽しい』


「…さっきお前、ため息附いてたじゃねぇか」




俺が苦笑いしながら言うと、蜜柑は思わぬ事を言った




『そういう所、好きや』



突然の言葉に、つい、声をあげてしまった




『今の棗、面白かった!!』



笑顔で言うものだから、怒るに怒れない
俺がコイツの笑顔に弱いのを、自覚してやってるのだろうか‥?

もしそうなら、嫌な女だ




「なんであそこで好きってなるんだよ?」



今度は逆に俺がため息を附きながら問う



『だって、気にかけてくれてるんだなって思ったから』


「は?」



『ずっと雑誌読んでるけど、ウチのため息も気付いてたし』


笑顔で言葉を続けながら、俺の方に戻ってくる



『棗と居ると落ち着くから』



言いながら俺が寝ころんでいるソファーの隣に膝を着き、そっと口唇を重ねた




『ため息、ワザと』


再びにっこりと笑いながら言うものだから、怒ることも出来ず呆れながら言った


「騙したのかよ」


『試したの』


「同じだ」


『…ιでも、お詫びしたから許して?』

「……お詫び?」


『キス♪』



少し顔を赤らめながら言うから



「特別に許してやるよ」


『棗やっぱ優しいvV』



小悪魔的な蜜柑の笑顔には、かなわない
俺は本当に蜜柑が好きなんだと、改めて実感してなんだか恥ずかしくなった




『テレビ、つけていい?』


「ああ…」



俺がソファーに座り直すと、その隣に座りながらテレビの電源を入れた



『面白そうなのやってないなぁ…棗、どれがいい?』


「それでいい」


『これ?クラシックじゃん』


「イヤなら変えろ」


『別に、棗が見たいならイイけど』




こんな風にさりげなくあわされると嬉しい。




「…お前の好きな物って何んだ?」


『はぁ?何…いきなり』


「…いいから」


『…ん〜‥甘いもの?』


「なんで疑問系なんだよ」


『だってわかんないんだもん…棗は?』

「…俺は‥いちご‥」


『いちご?!‥意外』


目を見開き言うから、少しだけムカついて、からかう事にした




「そういや、お前‥いちごパンツはいてた時あったな」



『ー―ッ棗の嫌いなトコ思い出しわ…』


「どこだ」


『セクハラする所』


「そんな事ねぇよ」


『ある!!』



即答‥キレたら暫く機嫌なおらねぇから、この辺で折れとくかι



「はいはい…そうだな悪い」


『謝ってない〜』


「ごめん」


『………お詫び、して///』


「…いいぜ」



照れながら可愛いこと言うから、深くしてやる



『え?んぁ…ゃ‥ぁ…』



口唇をはなすと蜜柑が寄りかかってきた



『なに…アレ‥』


「お前、聞こえてたのか」



妖笑しながら耳元で囁くと更に顔を紅くした



『…なにが‥可愛いこと言うから、ふっ深く…なんや///』


「………」



ぁ〜ゃばぃ…
可愛い過ぎ…




『なつめ〜?聞こえてる??』


「―ッあぁ‥聞いてる」


『…なにボーっとしてんの?』


「…お前‥可愛いな」


『はぁ?!///』


「冗談だ」



本心だけどな



『冗談って…それはそれでムカつく‥』



頬を膨らませる蜜柑が余計に可愛くて、口元が緩みそうになるのを必死に隠した


………。


「なぁ…お前、何時まで俺ん所にいんだ?」


『ぇ〜?9時とか?』


「用事ねぇんなら泊まってけよ」


『へんな事しないならいいよ♪』



余りに笑顔過ぎて逆に怖い笑みだ‥ι

けど‥



「バカかお前。一晩一緒に居て、なんもしないなんて事俺がするハズないだろ?」


『……だったら帰る』


「……ドコまでなら大丈夫なんだよ」



結局負けι
棗は蜜柑に甘すぎる‥



『キス…と抱き締めるくらいまで』


「じゃあヤるのは我慢してやるから、泊まれ。」


『…信用できない』

「あ?」


『だって前もそう言って結局‥///』



………チッ



「……雨、強いぜ?この雨の中外に出たらビショビショになるんだろうなぁ?」

『……わかったよぉ‥泊まる‥』


「そうか、いい子だ」



と、棗は胡散臭い程の満面の笑みで蜜柑の頭を撫でながら、「遣らずの雨…か‥」とボソっと呟いた



『遣らずの雨ってなにー?』


「……お前は雨、嫌いなんだよな?」


『え?そうだけど』

「俺は嫌いじゃない」


『うん?それが何?』


「雨の音はよく眠れるし…遣らずの雨‥って事もあるからな」


『だから〜その遣らずの雨ってどういう意味?』


「…人に聞いてばかりいないで自分で調べろ‥」


『‥わかったvV』


冷たく言うが蜜柑は笑顔で返した





「なんで笑うんだよ」



『…棗は気付いてないかもしれないけど、棗が「自分で調べろ」って言うときはいつもイイ意味なんだよ♪』



マジかよι



「…やっぱ調べるな。忘れろ。」


『イヤ♪』


「〜〜〜ι」



どうしようかと悩んでいると、クラシックばかりが流れるテレビから、ゆったりとした優しいメロディが流れてきた



〜♪〜〜♪♪〜



『この曲‥落ち着くかも』



優しく綺麗な曲調のそのピアノの音は、降り続ける雨の音と溶け合うように響いて、消えていく


その音に魅せられた蜜柑は、さっきの事をスッカリ忘れている



「単純‥」


『なんやって!?』


ヤベっ‥口に出してたかι



「なんでもねぇよιそれよりこの曲のタイトル、教えてやろうか?」


『知ってるの?!教えて♪』


「……カノン‥」


『カノン?』


「あぁ…パッヘルベルのカノン‥有名な曲だぜ?」


『へぇ〜イイ曲だもんねぇvV』


「お前にわかるのかよ‥?」


『失礼な!!たっ確かにクラシックとか分かんないけど‥イイ曲だなとかくらいなら分かるもん!!』


「あ〜わかったから‥怒こるなι」



『………』


「…蜜柑?」



キレたか…ι?



『ぅ〜ねむぃ…』



……なんだι



「……今寝ると夜眠れなくなるぞ」


『だってコノ曲のせいやもん〜寝る〜‥』


「…しょうがねぇヤツ‥ι」




呆れながらも、棗は蜜柑をお姫様抱っこしてベットに向かった




『…お姫様抱っこ‥vV』


「嬉しいのか?」


『うん…///』


「じゃあ…またやってやるよ」


『恥ずかしいから…みんながいない時にしてね///』



半分眠りかかってる蜜柑の瞳はトロンとしていて、声も甘ったるくて‥棗は秘かに(ヤベぇ…)と思った




ベットに寝かせると蜜柑はまたしても、自覚のない甘い声とトロンとした瞳で棗を上目遣いで見つめて

言った



『なつめも‥いっしょ…ねよ?』


「――ッお前…///」




自覚が無ぇから、余計タチがわりぃんだよなι




「…やめとくι」



棗は自分を抑える自信がない為、断った…けれど流石蜜柑‥



『やだぁ…ねよぅ?なつめぇ‥おねがい』




再び上目遣いで…涙を溜ながらお願いした

棗…勝てるはずもなく



「わ…わかったから…泣くな///」







ありえない位広い棗の部屋に、つけっぱなしのテレビから繰り返し流れるカノンと、窓の外で降り続ける雨の音が‥響く



蜜柑に哀願された棗は、仕方無しにベットに入った

すると蜜柑は、嬉しそうに微笑みながら棗にピタッとくっついて眠ってしまった



「……生殺し状態だなι」



ボソっと呟いて、ため息をついた




『なつめ…』


寝言か?



『なつめ‥スキ〜』


「……俺も‥スキだ」



…だから‥‥

……勘弁してくれι




雨の日でも、蜜柑が側にいたら眠れねぇな‥














俺の好きなモノは
いちごと蜜柑‥


蜜柑はモノじゃねぇけど…

いちごよりもずっと好きだから
蜜柑よりも好きなモノなんかないから…お前には言わなかったけれど‥


いちごと蜜柑‥
そして今日、新しく好きなのが出来た


カノン



お前が好ききなら

俺も‥


そう思うのは…
やっぱり重傷だな‥












流れ落ちる雫の音が
心地いい



テレビがら流れるカノンのメロディが

心地いい







なんてことない
普通の時間が

こんなにも心地いいなんて‥

お前だから、
そう感じさせてくれるんだろうな





カノンのメロディと
雨と蜜柑が隣にいれば

俺は充分だから















遣らずの雨

愛しい人を帰さない為や、出掛けようとする人を行かせない為であるかのように降ってくる雨―‥










だから…


いつまでもこの時間が続くことを、願う





End





*。後書き。*



勝手に設定付けまくり(笑)


Q1.まず、テレビはアリス学園の寮にあるのか?

A。蜜柑の部屋には無いだろうけど、棗の部屋にはあるだろうと勝手に決めて執筆(爆)


Q2.男子と女子の寮は別々なのか?

A。わかんないけど、"遣らずの雨"って言葉を使うにはア〜するしか無かった(あるだろι)



まぁ色々ツッコミ所満載な駄作ですが、軽く流して読んで下さい。
ってもう読んでるけど(笑)

UP遅くなってすみませんでした(>_<)



まだ、話します(笑)


パッヘルベルのカノンは私の一番好きな曲です。
ピアノ弾くときは必ずこの曲を弾きますvV

結構有名な曲なので知ってる人も多いと思います☆

クラシック曲はこれからも時々でるかもです。
童話や神話、花、花言葉、クラシック曲などそういう事を小説に入れるの好きなんです(笑)


あと雨なのは書き始めたのが雨の日だったんで‥
一昨日だっけ?スゴい雨降りっぱなしだった日に、出掛けるのが中止になった腹いせに書きました(腹いせは嘘)

で、カノンを聴きながら書いたんですが‥本当あの曲はいいです♪

落ち着くvV


最初は[大人の甘い雰囲気]をテーマに書いてたのにナゼか戻ってる?!
最後の方の蜜柑は酔っ払いみたいだし(笑)

まぁコレはこれでいいかι


ちなみに裏タイは

「ナツ様、蜜柑にベタ甘vV雨の日の苦悩(笑)」

です(爆笑)


さて、次作書くかな〜もう書き始めてますが‥ギャグです、ギャグ。

笑えないギャグ(ギャグじゃないし!!)


つか、メールに書いてそれをコピってUPする作業が

ゴッツめんどい(強調)


書きかけが送信メールにたぁくさん☆(壊)

ありすぎてどっから手つけたらいいかワカラン(苦笑)


まぁ愚痴は裏話でするかι

んでは、ここまで読んで下さって有り難う御座いましたvV

2004/10/14/*。秋羽。*
†+-INSPIRE-+†

閉鎖にあたり、いくらでも頂いてもいいというお言葉に甘え頂きました♪
秋羽ちゃんありがとうございますvV
甘甘最高ですvV

本来リクエスト作品なのにいいのかなって思いましたが許可は頂いております。
はい。


-6-

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