⊆Let's cooking⊇
アークエンジェル艦内、艦長室。久々の休息。きっとザフト軍も地球連合軍も今は休息中という感じである。こういう時ぐらい戦争の事なんて忘れて、ゆっくりしたいものである。…が、この艦の艦長であるマリュー・ラミアスはパソコンに向かっている。そして休むことなく『カチカチ』と何かをタイピングしていく。マリューは眉間に皺を寄せながら時折コーヒーを口にするだけで、あとはまたパソコンという感じだ。そんなマリューに放っておかれているムウ・ラ・フラガは、もちろんいい気はしない。
「マリューさん。」
「…何です?」
マリューは目だけムウを向き、手を止める。
「久々の休息なんだしさ、少しはパソコンから離れない?」
「久々の休息とは言っても、いつザフトか連合が攻めてきてもおかしくないんです。だからせめて、逃げ道や新たな隠れ場、物資補給場を探しておきたいのよ。」
「気持ちは分かるがな。」
「あともう少しで終わりますので…」
「分かったよ。」
そしてまたパソコンに向き直り、手を動かし始める。
ムウはソファーに寝転がり、雑誌を読み始める。
それから一時間。やっとマリューの仕事が終わる。
「ふーっ…」
それにムウが気付き、雑誌を小さなテーブルの上に置く。
「終わった?」
「ええ。」
マリューはムウの向かいのソファーに腰を掛ける。
「…少し、寝てもいいかしら?」
「眠たいの?」
「とっても。」
「んじゃ、俺も一緒に寝るよ。」
「結構ですっ!!!!」
マリューは立ち上がり、ベッドに向かい、横たわる。
ムウはただその姿を眺めていた。
上着をイスに掛け、スカートのホックをはずす。
「私が寝てる間に、変なことしないで下さいね。」
「変なことって?」
意地の悪い笑みを浮かべながらマリューの目をじっと見る。マリューは思わずムウから視線を逸らす。
「…だから、その、変なことは変なことですっ!!」
「例えば…」
ムウはソファーから立ち上がり、マリューが寝ようと腰を掛けているベッドに向かい、マリューを力強く押し倒す。
マリューは来ると分かっていながら、その男性特有の力強さに勝てるわけもなく、押し倒される。
「こうゆうコト?」
「ちょ、ちょっと…やめてっ…んんっ!!」
ムウに唇を奪われる。
「いきなり何するのよっ、馬鹿っ!!」
「仕事ばっかで俺を放って置いたのが悪いんだろ?」
口調は怒っているが、顔は笑っているムウ。
「私は、この艦に搭乗している人の命を最優先にしているだけです。別に少佐を放って置いてる気はありません。」
ムウの余裕のある笑みが嫌で、わざと刺のある言い方をする。
「あっそう。…ていうか、俺、今少佐じゃないよ。ムウだろ?艦長さん。」
貴方だって、今艦長って言った。」
「あんたが艦長なのは事実だろ?」
「……。」
マリューは顔を赤くして視線を逸らす。体勢はまだ押し倒された形だ。
照れてるマリューが可愛くて、つい笑ってしまう。
「くくっ…。」
「何笑ってるのよ。」
「いや、マリューは本当可愛いよ。」
「…なんか、馬鹿にされてるみたい。」
マリューは頬を膨らませた。
「馬鹿になんかしてないさ。本気で可愛いと思ってるよ。」
そしてまたキス。
上着を脱いでインナーと下着だけになっているマリューの上半身をムウの手が彷徨う。そしてインナーをあげた瞬間、ムウの手をマリューが掴む。
「…何?」
「…電気くらい、消して下さい。」
マリューは頬を真っ赤にして言った。ムウは「お決まりの台詞だな」と思い、笑いながら「はいはい。」と言って電気を消す。
一、二時間経ったであろうか。マリューはまだ熱を帯びてる身体を起こし、横で寝てるムウの腕の中から抜ける。シャワーを浴び、軍服を着直す。
「…あれ、もうシャワー浴びちゃったの?」
「ええ、そういえば食料の補給できる場所をバルドフェルド隊長から聞くの忘れてたんで。」
「まだ早いさ。虎さんだって休憩くらいほしいだろ。だから、マリューも俺と一緒にまだ休憩。」
ムウはマリューの腰に抱きつく。「ん、もうっ!!シャワー浴びたんですから、二度はしないわよ!!」
「シャワーなんてまた浴びればいいだろ?続き…って!!」
マリューはどんどん上半身の豊かな膨らみの方に行くムウの手を思い切りつねくる。
「なにすんのさっ、マリューさん!!」
痛さに思わず手を離す。
「何って、つねくっただけですわよ。」
「だ〜か〜らぁ、なんでつねくるんだよ。」
「欲求の激しい狼をおとなしくさせる方法…って、カガリさんが教えて下さったの。」
「気の強い嬢ちゃんが…?」
「ええ。」
ムウは半ばカガリが誰かにこの手をいつ使っているんだなと、どうでもいいことを考えていた。
ムウもシャワーを浴び、軍服を着て戻ってくるとマリューがエターナルとコンタクトを取っていた。
通信回線画面の先に見える相手は砂漠の虎、バルドフェルド。先程言っていた食料の補給がどう、とかの話であろう。なんとなくムウはマリューは料理とかできるのであろうかと考えるのであった。
ようやく話終えたマリューとバルドフェルド。
「補給できる場所、あったか?」
「ええ、なんとか。」
そういうとマリューはデスクの前に座り、パソコンをいじり出す。
「仕事、終わったんじゃなかったの?」
「宙域図、確認したくて…」
それならパソコンで一々見なくても、この部屋の何処かに有るはずだ…と言いたかったムウだが、探す方が面倒なことに気付く。
「あのさ。」
「…はい。」
「マリューって料理できる?」
その質問にマリューは少し不機嫌になる。
「…私、料理できなさそうかしら?」
「仕事ができる女って、たいてい家事ができないだろ?だからマリューももしかしたらってさ。」
私は大半の女と同じように見られていたのかと、軽く肩を落とす。
「…料理くらい、できます!!」
マリューはガタッと荒々しくイスから立ち上がり、部屋を出ようとする。
ムウはマリューの手首を掴む。
「何処行くのさ?」
「…それが、貴方に関係あるかしら?」
微妙にキレているのが伝わる。
「何怒ってんの?」
「別に怒ってません。」
いやいや、怒ってますとも。マリューさん、態度に出てますよ…なんて言っても、「怒ってなんていません!!」と、怒鳴られるのがオチ。
「…あっ、そう。」
ここはおとなしく引いておこう。
マリューはそのまま部屋を出ていくと、食堂に行った。
マリューの後をこっそり付けていたムウ。
「…食堂、ねぇ。」
なんて独り言を吐く。
マリューはコップを取り、水を注ぐ。それを一気に飲み干す。まさか自分が料理もできない女と思われていたなんて…結構ショックであった。
「まぁ、無理もないかしらね…。」
「ふぅ…」と一息吐くと、イスに腰を掛ける。…と。
「なぁに、独り言言ってたの?」
聞き慣れた声。ムウだ。そして彼の腕は自分の肩に巻き付いている。その腕を掴み、
「…独り言なんで気にしないで下さるかしら。」
と、少しむくれた顔を見せたマリュー。
「俺って、気にしないでって言われると余計気になっちゃうタイプなんだよねぇ。」
と苦笑してみせた。
マリューはムウの腕を取り払おうとするが、その腕はマリューの肩にしっかりと抱きついていて、中々離してくれそうにない。
「手、邪魔なんですけど。」
「そう?」
「ええ。離して下さるかしら?」
「じゃあ一つ条件がある。」
「…何かしら?」
マリューはムウの言葉に肩眉を上げ、どうせまた「さっきの独り言は何?」とか「機嫌を直せ」など言うんだろうと考えていたら…
「マリューの手料理が食べたい。」
「はぁ?」
マリューは素っ頓狂な声を上げる。
「だぁかーら、マリューの手料理が食べたいから作って?なぁ?」
ムウはふざけてるのだと思い、マリューがムウを見ると真面目に言っているみたいだ。
「な、なんで手料理なんか…。大体、どうやって作るのよ?材料も使えるキッチンもないのに…」
ムウは不思議そうな顔をしてマリューを見る。
「…?材料ならあるだろ。それにキッチンなら今まさに目の前にあるし。」
更にマリューが不思議そうな顔をして、ムウに返す。
「確かにキッチンはあるけど…まさかこれを使えって言うの?!」
「もちろんそのつもりだけど?」
その言葉にマリューはカッとなる。
「ふざけるのもいい加減にして。」
冷めた口調でムウに言い放つ。
「ふざけてなんかないさ。」
真顔なムウを見て、マリューはムウから目を逸らす。
「ここのキッチンが使えわけないでしょ?」
半ば呆れ気味に言った。
「マリューはこの艦の艦長なんだぜ?使うくらい平気だろ。
ムウはにっこり笑って見せた。
マリューはムウの頼みを断り切れず、ため息を吐きながらキッチンで料理を始める。
「はぁー…」
「何ため息吐いてんだ?」
言った本人は楽しそうに一人席に着き、にっこりしながらマリューを見ている。
「…何でそんなに楽しそうなのかしらね。」
白々しく言い放つ。
「それは艦長殿の手料理が食べさせていただけるからでございます!!」
ムウは意地悪く笑いながらふざけて敬礼してみせた。
マリューは半分怒りつつ、戦闘時には見せないそのふざけた感じに笑顔がこぼれてしまった。
「しょうがない人ですわね、フラガ少佐。」
「艦長殿に甘えたい年頃でありまして。」
マリューは「クスッ」と笑いながら、手をすすめていた。
そして数十分後、できたのはハンバーグであった。
「うまそう。」
ムウはキッチンから席に帰ってきて、自分の向かいの席に座ったマリューとハンバーグを見比べてにっこりと笑う。
「うまそう、じゃなくて早く食べて感想聞かせて下さるかしら?」
「いかん、いかん。俺としたことが。そうだな。」
と、ムウはフォークとナイフを手にし、ハンバーグを口にする。
「ん、うまい!!」
その言葉を聞き、マリューは笑顔になる。
「そう、良かったわ。」
「マリューが俺の奥さんになったら、いつでもこんなうまい飯が食えるんだな。」
マリューは考えてなかった台詞に一瞬驚きながら、その台詞を嬉しく思い
「ええ、そうよ。」
と、頬を赤らめて言った。
そして二年後、ムウはまたマリューの手料理を口にすることができている。戦時中ではなく、すぐに補給しなければいけない日々でもなく、平和で二人きりの時間の中で…―――――
*fin*
頂いた日:2006/2/11
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