身長差

「あ、光月さんちょうどよかったわ」
不意に担任の水野先生から声を掛けられ、未夢は振り向いた。
「水野先生、どうかしたんですか?」
「帰る所、申し訳ないのだけれど…この本を図書館に戻してくれないかしら? 今から色々やることがあって手が回らなくて…」
ちらりと水野の手を見ると、4冊ほどの本があった。未夢は、ふぅっとため息を吐くと
「分かりました、図書館に戻せばいいんですね」
「そうなの。ごめんなさいね」
「いえ、大丈夫です。(今日の買い物当番はワンニャーだしね)」
そう言うと未夢は水野先生から本を受け取り、図書館へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
カラカラカラ…と図書館のドアを開き、中を見る。静観な空気がなんとも未夢には落ち着かない。
元気で明るい未夢は、このいかにも静かにしなくてはいけない場所は、苦手に感じる。
勉強をしている人、静かに読書をしている人を横目に見ながら(…静かにしなきゃね)とそ―っと足を運び、本を棚へと戻そうと歩いた。
なんとか3冊は棚に戻し、残りの1冊を持ちながら書棚の間をキョロキョロとしていた。
ようやく見つけた本を戻す場所を見ると一番上の棚だった。爪先立ちをして、本を上へと上げるが身長が足りなくなかなか入れられない。
「…脚立とか…ない訳?」
と回りを見るもこの通路にはなかった。
「うぅ〜なんでないのかね〜」
ため息混じりでもう一度、背伸びをすると手に持っていた本がフッと離れた。
びっくりしてふと上を見上げると、そこには同居人の彷徨が立っていた。
「えっ?……あ、彷徨…」
「なにしてるんだ? 未夢」
ひょいと未夢が頑張っても棚に戻せなかった本をいとも簡単に戻しながら、彷徨は未夢を見下ろした。
(…あれ?)
何か違和感を感じながら、未夢は彷徨を見た。ぼーっとしている未夢に彷徨は不思議そうに顔を覗き込んだ。
「…未夢?」
「えっ…あ、何?」
「何…って、俺が聞いてんだけど…」
はぁ〜とため息混じりに彷徨は肩を落とした。それでも未夢は、まだ彷徨をじーっと見上げていた。そして…
「ねぇ…彷徨…」
「なんだよ」
「背、伸びた……?」
「あ? さぁ、分かんねえ」
「……っず…」
「ず?」
急に俯いたかと思えば、キッと見上げてきた。
「ずっるーい!! 彷徨ばかり背伸びてーっ!!」
「バッ…おまっ…ここ図書館っ!!」
いきなり大声を出す未夢の口を手で塞ぎながら、彷徨は注意をした。
「もがっ…ふぁにふんのよ―っ!!」
「煩い、ココ図書館なんだから静かにしろよ」
未夢を見ると真っ赤な顔をして見上げていた。不意に彷徨も違和感を感じた。
(あれ?こいつって…)
屈み込んだ。そっと手を離すと、未夢はよっぽど苦しかったのかスーハースーハーと息を整えていた。
「もうっ!! いきなり口塞ぐ事ないじゃないの――っ!!」
ぼそぼそと小声ながらも未夢は彷徨に向かって文句を言うが
「なぁ、お前ってそんなに小さかったっけ?」
「はぁ? だから、彷徨が背伸びたんでしょ。ずるいなぁ〜彷徨ばっかり背伸びて〜」
ブゥブゥと不満を洩らす未夢に彷徨は苦笑しつつ、こんな未夢が可愛いなんて思ってしまった。
「こんくらいの方がいいじゃん」
「え──?なに……」
言葉を繋ごうと不意に上を向いた時、ふわっと未夢の口唇に何か柔らかいモノが落とされた。
………………………………?
………………………………………………??
………………………………………………………………っ!!!?
い…今……キ………ス…………………された…?
バッと彷徨を見上げると、ニヤっと笑いながら言った。
「な、ちょうどいい高さだろ?」
「〜〜〜し、信じらんな──っい!!!!」
真っ赤になって、彷徨の前から走り去っていった。彷徨は、口を手で押さえながら
「……やりすぎたか…」
呟くもべっと舌を出して笑っていた。でもそれは、いつもの意地悪風ではなく、照れた感じがしていたのは誰も知らなかった。
END
あとがき
よくある話で(笑)今回はだぁ!ver.