02

その頃、教室では……彷徨は不機嫌なオーラを出していた。三太は、「彷徨、こえぇよぉ〜〜」とびびりながら教室の出入口に立っていた。
すると、ぱたぱたと走ってくる音が聞こえそちらに顔を向けた。
「あ、黒須く〜ん」
「天地さん、小西さん」
走ってきたクラスメイトに一抹の光を感じて、彷徨の方を見ながらななみたちに歩み寄った。
「あれ? 光月さんは?」
「ん、ちょっとねぇ〜西遠寺くんは?」
「あぁ〜そうそう、彷徨のヤツさ〜すっげぇ怖いんだよ〜〜なんとかしてくれよ〜〜」
三太は情けない声を出した。ななみは苦笑いをし、綾はどうやらネタになるのか頭にプチみかんを乗せていた。
ななみは、とりあえずジッと彷徨の方に目を向けると近寄っていった。
「ちょっと、西遠寺くん!!」
声を掛けられ、見てみると、天地が見下ろしていた。
「………なんだよ」
まださっきの事で自己嫌悪で陥ってるせいか、言葉に刺がある。やや細めた瞳でみられ、ななみは一瞬言葉に詰まるも
「……さっきのはいくらなんでも言いすぎじゃない」
降り掛かる言葉に彷徨はムッとした。そんなこと自分自身で分かっているのだ。
先程から、いやと言うくらい胸がもやもやとして時折痛い。原因は分かっている。だが、他人に言われると余計自分に腹立たしくなるのだった。
ジロッと見てくるななみをちらっと見た後、フイッと顔を逸らした。ななみも彷徨が反省しているのは何となく感じ取れた。
(…まったく、素直じゃないわよね)
ふぅっとため息を吐くと
「未夢……泣いてたわよ」
その科白にぴくりっと彷徨は反応した。
「渡り廊下にいるわよ」
「………」
彷徨は、はぁ〜とため息を吐くとガタンっと席を立った。
「………やっぱり、お前ら未夢の友達だな…」
「なによ、それ」
「……褒めてんだよ」
お節介なトコが似てると思いつつ、今はそれに感謝した。
ひらっと手を振り、彷徨は教室から出ていく。その姿を3人は見送った。
「なんだかんだ言って、彷徨のヤツ…光月さんにメロメロだよな〜〜そういえば、光月さんのキスの相手って誰なんだろ…」
三太の呟きにななみと綾は顔を見合わせ、プッと笑った。
「いやぁ〜西遠寺くんの反応が見物だねぇ〜〜」
「うんうん。すっごくびっくりすると思う〜〜」
「え? なになに? どういう事? 俺にも教えてくれよ〜〜」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彷徨が渡り廊下に向かっている時、未夢の瞳からはまだ雫が零れていた。
未夢は、泣かまいと一生懸命我慢をするのだが、心に深く突き刺さったのか苦しくて…そして、痛かった。
そこへちょうど人が通りかかった。
「るーんるー♪るーんるー♪ってそこにいるのは未夢っちぃじゃないかぁ〜」
肩にオカメインコのオカメちゃんを乗せ、スキップしながら歩いている望だった。くるくると無駄な動きをし、未夢の前に跪くと、薔薇をすちゃっと差し出した。
「どっ、どうしたんだいっ? 未夢っち。美しいきみが泣いているなんてっ!?」
下から顔を見上げるように望は、未夢をみて涙が零れている事に驚愕した。
「こ、これは……その…」
慌てて涙を拭おうとするが、その時ふわりっと頬に望の手が触れた。
「大丈夫かい? 未夢っち…でもそんな風に涙を流すきみも一段と美しいよっ!」
「の、望くんっ…」
目の前にある顔に未夢は真っ赤になってしまった。
「さぁ、泣かないで未夢っち……」
そう言って望が未夢の涙を指で拭おうとしたその時
「何してるんだっ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
渡り廊下に来た時、彷徨のいた所から、未夢と望の顔が重なっているように見えて、彷徨は思わず声を張り上げた。
未夢の頬に手を添えてる光が丘をジロっと睨み付けた。それに気づき、光が丘は少し残念そうに未夢から離れた。
「なにって…美しい未夢っちが涙を流していたから、慰めていたんだよ」
ねぇ〜未夢っち♪と言うように望は未夢を見た。
未夢は、恥ずかしいのか真っ赤になりじたばたと手をばたつかせていた。
「う、うん…そうっ…そうなの……」
その碧玉の瞳はまだ潤んでいて、やや赤くなっていた。
彷徨は、そんな2人のそばに来ると未夢と望の間に割り込むようにして、望の方を見た。未夢からは見えない彷徨の顔は、望を睨み付けていた。
望も一瞬、瞳をギラつかせたがフッと笑うと
「とりあえず、ここはきみに譲るよ。西遠寺くん、じゃあ、未夢っち。」
ちらりと未夢の方に笑顔を向けると、校舎の方へと行ってしまった。残された2人には沈黙が走る。
「あのさ……さっきの…」
背中を向けたまま彷徨は話し掛けた。未夢は、ドキっとしてギュッと胸を押さえた。
さっきの言葉か蘇り、苦しくて涙が込み上げてくる。
「…な、なに……」
「……悪かったな…あんな事言って…」
くるりと振り返った彷徨の頬が少しだけ赤くて…少しだけ困ったような表情をしていた。
涙が零れそうな未夢にそっと手を差し伸べようとした。未夢は慌てて瞳を逸らすと
「い、いいよっ!……だって…か、彷徨には……その、どうでもいいことだろうし……関係ないだろぅ──」
「関係なくないっ!」
未夢の言葉を遮って、彷徨は叫んだ。と、未夢の肩に掴むとジッと見つめてきた。
「か、彷徨…?」
「関係なくなんかないからな…」
そう言うと、顔が近付くと、涙が溜まっていた瞳に生暖かいモノが触れた。
「なっ…!?…っんぅ……」
驚く未夢をよそに彷徨はそのまま口唇を塞いだ。目の前にある彷徨の顔に、瞳を見開いていたがやがて柔らかい感触にゆっくりと瞳が閉ざされていく。
長いような短いようなほんの数秒の後、2人は口唇を離した。
なんとなく気恥ずかしくて、彷徨は未夢の肩に額をのせた。
未夢はというと、突然の出来事に真っ赤になったまま呆然としていた。
「さっきの嘘だからな──…」
「………え…?」
発せられた言葉に未夢はポカン…とした。しかし、彷徨は構わず言葉を紡いでいく。少し恥ずかしそうに……。
「さっきの…教室での『未夢なんかにしない』…だなんて嘘だから…」
「………」
「…俺………未夢が好きなだから…本当はキスしたいって思った───」
言葉と共にギュッと抱き締められていて、未夢は甘えるように彷徨の胸に擦り寄る。そして、彷徨を見上げると
「私も…私も彷徨が好きだよっ……」
ふわりっと泣き笑いをして、やがて口唇が重なった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
帰り道、気持ちが通じあい恥ずかしながらも2人は手を繋ぎあって帰っていた。
西遠寺の石段に差し掛かろうとした時、くいっと引っ張られた。未夢は不思議に思い、繋がれた手元をみて彷徨を見上げた。
「…どうしたの?」
「誰なんだ?」
ややそっぽ向いて話す彷徨に未夢は首を傾げた。
「なにが?」
「なにがって……キスした相手だよ」
「えっ…彷徨じゃない……」
「あのな……さっきのじゃなくてっ! ファーストキスの相手だよっ!!」
落胆しつつもくるっと未夢の方を見ると、未夢は真っ赤になりながらジッとこちらを見ていた。
「だ、だから〜彷徨なんだってばっ!!」
「は?」
「だからねぇ〜…その…怒らないでね?────……」
未夢は戸惑いがちに話し始めた。
「おまっ…アレはお前のせいだったのかよっ!!」
話しの聞き、彷徨は思わず叫んだ。
「ふぇ〜〜ん…悪かったと思ってるよ〜〜ルゥくんにも彷徨にも〜〜」
「………はぁ…」
肩を下げ、ため息を吐く彷徨をみて未夢は不安げに見上げる。
「彷徨怒ってる?」
「……別に」
「嘘、怒ってるじゃない。ごめんね」
恐る恐る尋ねると無気力な彷徨に未夢は、困ったように謝った。
「だから怒ってない。呆れてるだけだ」
「ううっ……本当にごめんねぇ〜」
「だから───じゃあ…朝と夜ある事してくれたら許してやる」
またため息混じりで言われてしまい、未夢はしょぼんとしてしまう。
彷徨もどうしたもんかと思いながら、ふと仕返しというのか悪戯心が沸いてくる。にやっと笑うと未夢を見下ろした。
未夢は、パッと顔を上げた。
「なになに? 私に出来る事ならなんでもするよ。」
「その言葉、後悔するなよ? じゃあなぁ、毎日…」
「毎日?」
「朝と夜に…」
「朝と夜に?」
「俺にキスすること」
悪戯っぽくベッと笑いながら未夢を見やる。未夢は一瞬、ポカンとした後みるみる顔が真っ赤になっていく。
「えっ…えぇぇぇ!!? な、何言って…」
「なんでもするって言ったよな?」
「で、でもでもでも〜〜」
じたばたと手を動かす未夢をみながら、彷徨は言った。
「なんだよ、いやなのか?」
「いやって訳じゃなくて………恥ずかしいよぉぉ〜」
真っ赤になる未夢が可愛くて…愛しくて…手を伸ばして、自分の胸に引っ張った。
ぐっと腕の力を入れ、未夢の長い髪の香りを感じ、華奢で柔らかい身体の感触を堪能した。
「かっ…かなたぁ〜〜」
未夢が情けない声を出すのを聞き、そっと顔を覗くとなんともいえない顔をしていて彷徨は笑った。
そして、未夢から抗議が出る前にそっと口唇を塞いだのだった。
END
あとがき
うわーん…尻切れトンボだよ〜〜
なんか、最後どうしたらいいなか分からず仕舞いで強引に終わらせちゃいました。
しかも、彷徨くんなーに言っちゃてるのかな〜?(笑)
つまり、おはようとおやすみのキスをしろ!だなんて…誰だっ!!お前っ!?
って感じです。(お前の脳内の方がおかしいよ)
本当、後半ごちゃごちゃですみません、すみません。
このような作品を読んで下さいまして、本当にありがとうございました。
2006/10/6