ないしょの時間

「おい、未夢知らないか?」
「え? 未夢? 帰ったんじゃないの?」
声を掛けられたななみはキョロキョロしながら、分からないというふうに首を傾げた。
「いや、鞄あるからまだいると思うんだけど」
「じゃあ、まだ掃除じゃない? 裏庭だよ、分担区。未夢になにか用事あったの? 西遠寺くん」
「ああ、今日委員会あるの忘れてたから、買い物頼もうかと思ってさ」
「ふーん、伝えておこうか?」
「いや、自分で言うよ」
彷徨はそういうと、踵を返した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
裏庭を掃除し終え、ゴミも捨ててきた。未夢は、のんびりした雰囲気に終わってからも備え付けられたベンチに座っていた。
「なーんか気持ちいいなぁ……」
陽射しが気持ちよくてうとうとしてしまう。次第に瞼が下がり、未夢はくーくーと可愛いらしい寝息を発て始めた。
一方、彷徨は未夢を探して、裏庭にやって来ていた。
「…ったく、アイツどこにいるんだ?」
ため息混じりに呟き、掃除の分担区にやってきた。
他の奴らはすっかり帰ってしまったらしい。さっき同じ掃除場所だった奴に聞いてみれば
『光月さん、ゴミ捨てじゃんけんで負けたから焼却炉じゃないかな?』
しかし、さっきそこを通り過ぎたが未夢の姿はなかった。それで裏庭へ来たのだか。
と、そこに一年の男子生徒二人組がいたので声を掛けようとした時
「なんかいいもん見たな」
「あれだろ、二年の光月先輩だよな? あれ」
「あぁ。やっぱ、可愛いし、綺麗だよな♪」
一瞬、手が止まり二人組の話に耳を傾けた。そして、首を傾げながら今度こそ二人組の片方の肩に手を置いた。
「なぁ、ちょっと…」
「えっ? って、西遠寺先輩!?」
「あのさ、み…光月未夢見なかったか?」
なにやら焦りまくる二人を見て、彷徨は一瞬眉を寄せた。二人は、それが怒っているようにみえたのかワタワタとしている。
「す、すいません! すいません!! 寝顔見るつもりはなかったんです!」
「そうなんです! なにかなって思ったら光月先輩でっ…」
「いや、それで未夢は?」
後輩の科白に疑問を抱きながらも、彷徨が聞くと二人はベンチが置いてある方を指差した。彷徨は軽く礼を言うと、そっちへ走り出した。
(寝顔って…アイツ寝てるのか?)
なんだか、無償に腹立たしくなり、彷徨は裏庭まで来ると備え付けられたベンチで眠っている未夢を見つけた。
(本当に寝てやがる……)
無防備すぎる。とため息をつき、ベンチへと近寄った。
すーすーと可愛いらしい寝息をたてる姿にどくん!と心臓が鳴った。
「おい! 未夢、未夢っ!!」
彷徨は、高鳴る心臓の音に負けないくらいに未夢に声をかけた。
「……んっ………」
「起きたか? 未夢…」
ぴくりっと動き、うっすらと碧玉の瞳が見えたので起きたのかと思ったのもつかの間、未夢はまたすよすよと眠りついた。
その姿に彷徨はやれやれと思う反面、とてつもなく未夢が可愛いと思えてならなかった。
(………くっそ〜〜なんだよ!? 今の………可愛いすぎるぞ!!)
自分でも無意識の内に未夢にメロメロだと感じてしまう。
(……はぁ〜〜このままじゃ、風邪引くよな…)
そんな風に思い、自分の学ランを脱ぎ未夢の肩に掛けてやる。そして、自分もその横に腰を下ろした。
委員会まで、後20分。後、5分経ったら起こそうと彷徨は思い瞳を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
フワッと掛かる暖かさと、横からくる心地よい温もりを感じて、未夢は気持ちよかった。
(なんでこんなに気持ちいいんだろう──?)
そんな風に思いながらも、意識が覚醒していく。もう少し、この気持ちよさに浸りたいのに……
そう思いながらも、碧玉の瞳はゆっくりと開かれた。と、目に入るのは男子生徒の学ラン。
「………え? えぇ!?」
途端にうつつだった瞳をパチっと見開いた。そして、横にある温もりに顔を向けると端正な顔のドアップがあり、未夢は驚愕した。
「かっ、かかか、彷徨っ!?」
「ん……未夢…?」
未夢の声に彷徨も目を覚ましたらしく、うっすらと鳶色の瞳を開いていく。
未夢は真っ赤になり、学ランを握りしめながら、ぱくぱくと口を開けていた。
「んぁ〜…俺まで寝ちまった……って未夢!?」
彷徨もすっかり未夢の隣に座っていたことを忘れていたらしく、真横で真っ赤になっている未夢にドキリとした。
「か、彷徨……えと、どうしたの?」
「あ、あぁ! 俺、委員会あるから、代わりに買い物当番頼もうと思って……って今、何時だっ!?」
「え、えと……3時半になるところ…」
未夢は持っていた時計を見ながら答えると彷徨は顔を青ざめていく。
「やべ! 委員会!!」
ダッと走り出そうとして、くるっと振り返ると
「未夢! 今日待っててくれ!!」
「えっ? い、いいけど…」
呆然としながらも頷く未夢によし!と言わんばかりに頷いた。そして、一瞬真顔になり
「未夢! お前、無防備にそんなところで寝るなよ!! 危ねぇだろ!」
注意して、彷徨は校舎へと走っていった。
「あっ、学ラン!!」
彷徨の学ランを持っていた事を思い出し、未夢は叫ぶも彷徨の姿はもう見えなかった。
「………ま、いっか」
一緒に帰るんだし。そう思いながら、未夢は空を仰いだ。
綺麗な青空にヒツジ雲が見えた。
END?
おまけ?
その頃、裏庭が見える校舎の窓から三人の男女がニヤニヤしながら、二人を見守っていた。
「なんか、青春だね〜」
「待ってろ! だって〜いいな〜未夢ちゃん」
「彷徨って光月さん絡むと別人だよな〜」
「あ、さっきの写真撮れた? 黒須くん」
「もっちろん! この黒須三太! あんなナイスショットを撮らない訳ないじゃんか!! どう? 上手く撮れてるだろ♪」
ペラっと取り出した写真は、さっきポラロイドで撮影したあの二人の姿。
それを見た少女たちは歓喜の声を上げた。
「やっだ〜!ものすごく絵になるよ〜〜!!次のお芝居はこの二人が主役よ!!」
「本当、本当!これでまだ恋人じゃないなんて………なにやってるんだかね〜」
そこに納められた被写体は、先ほどの彷徨と未夢の姿。
二人寄り添いながら、ベンチで仲良くお昼寝している姿だった。
END
あとがき
リハビリ、リハビリ。
うーん、これまた微妙なモノになってしまいましたぞ。
本当は、無防備未夢ちゃんに彷徨くんはすぐ起こして怒らせようと思ったのですが……
なぜか、このような方向へいってしまいました。
い、いかがでしたか?
感想お待ちしてます。ドキドキ…
読んで下さってありがとうございました(>_<)
2006/10/14