雷鳴の夜


「お久しぶりぶり。貧乏宇宙旅行者の夜星星矢で──すっ♪遊びに来ちゃった」

「あ、星矢さんいらっしゃいです。今日はどうしたんですか?」

「やぁ、ワンニャー元気かい? 遊びに来ただけだよ〜未夢ちゃんや彷徨くんは?」

「彷徨さんは買い物で未夢さんはルゥちゃまと遊んでおられますよ」

ワンニャーが答えるとちょうど居間にルゥん抱えて未夢がやってきた。

「あれ? 誰が来たのかと思ったら星矢くんか、いらっしゃい」

ふわりっと笑顔を振りまく未夢に星矢は、にっこり笑って近づいた。

「やぁ、未夢ちゃん♪今日も可愛いね─。あ、ルゥくん、こんにちわ」

「あ─ぃっ」

ぷかぷか浮いてルゥは星矢の方に飛んでいった。

「今日はいったいどうしたの? 星矢くん」

星矢に座布団を勧めて、未夢は畳に座った。

「遊びにいらしたそうですよ、お茶ですぅ」

「へぇ〜そうなんだ。流さんや輝さんは元気なの? どうぞ」

ワンニャーが台所からお茶を運んで来たのを未夢は受け取り、お茶を差し出した。

「ありがとう、うん。相変わらず元気だよ」

「そっかぁ〜相変わらずですか〜」

未夢はアハハっと笑いながら、お茶をぐびっと飲んだ。と、その時玄関の方で戸が開く音がした。

「ただいま〜。おーい、なんか雨降ってきたぞ〜」

「あ、彷徨が帰ってきたみたい。って雨?」

くるっと縁側の方をみると、パラパラっと雨が降って来たようだ。

「本当だ、雨だね。って未夢ちゃん洗濯物大丈夫なの?」

「あっ…そうだった―っ!! キャ──っ、濡れないでぇ〜」

バタバタと縁側に走っていく未夢を星矢は、追い掛けた。

「未夢ちゃん、手伝うよ」

台所に荷物を持ってきた彷徨は、居間から出ていく星矢をみて

「なんだ、夜星来てたのか」

「お帰りなさい、彷徨さん。星矢さんは遊びにいらしたみたいですよ」

「ふ──ん…あ、ワンニャー、みたらしだんごはなかったぞ」

「ガ────ン…」

頼んだ大好きなみたらし団子がないことにワンニャーはショックを受けてしまったのは言うまでもなかった。

「ひゃあぁぁぁ〜あまり濡れなかったよ〜」

やがて、パタパタと洗濯物を持ち未夢は居間に戻って来た。それを追って星矢もタオルなどを持ちやってきた。

「はい、未夢ちゃん」

「ありがとう、星矢くん。助かったよ〜〜。あ、彷徨お帰り〜」

ちょうど台所に立っている彷徨をみて、未夢はにっこり笑いながら言うと、彷徨はその笑顔が照れ臭かったのか、ぷいっと横を向いた。

「あ、あぁ……ただいま…」

「ん? どうかしたの? 彷徨、雨に降られて具合でも悪いの?」

「いや…別に」

きょとんと首を傾げ見上げてくる未夢に彷徨は内心(お前は反則しすぎるんだ…)と未夢の満面の笑顔に対し、ドキドキ高鳴る胸を抑えた。

「星矢さん、よかったらご飯食べて行きますか?」

「え? いいの?」

「そうだね、手伝ってもらっちゃったし私はいいと思うよ」

ワンニャーの提案に話題が変わるのを安堵して、彷徨もあっさりと賛成したのだった。

「ま──…いいんじゃない……泊まっていく気なんだろ? ど─せ」

「やった!この天気だし、お言葉に甘えるよ」

そんな訳で、いつもの4人の夕食に星矢も加わり、いつもより賑やかな時間を過ごした。

「今日は未夢さんが後片付けでしたね。私はルゥちゃまと先にお風呂を頂きますね。さぁ、行きましょう。ルゥちゃま」

「あーぃ」

ふわふわと2人は風呂場の方へと行ってしまい、彷徨は居間でリモコンを片手にTVのチャンネルを変えながら見ていた。

「さぁて、チャッチャと片付けますか〜」

テーブルからカチャカチャと食器を流しに運びだした。

「あ、未夢ちゃん。手伝うよ」

「え、いいよ。大丈夫だよ」

「ん〜でも、ご飯ご馳走になったしね。」

にこにこ笑う星矢を見ると断るのも悪い気がして、未夢は考えると星矢をみて

「じゃあ、流してくれる?私が洗うから」

「うん、いいよ」

そんな会話を聞きながら、彷徨はなんだかムスっとした表情でテレビ画面を見ていた。
先程からずっと降っている雨は強さを増し、遠くから雷の音が聞こえて来た。

ゴロゴロゴロ…

唸るような雷の響きが未夢の耳にも届き、だんだん怖さが増してきた頃、稲妻が光り、未夢は焦って拭いていた皿を滑らせてしまった。

「ひゃっ…」

ガチャーンっ!!

「未夢ちゃんっ!? 大丈夫?」

「う──…落としちゃったよ…」

砕けた破片を拾おうと、しゃがみ込んだ時に彷徨も台所に姿を現した。

「大丈夫か? 未夢」

「あ、うん。ごめん…お皿割っちゃって……」

「…ったく。いま箒と塵取り持ってくるから待ってろ」

「ふぇーい…」

未夢は大きな破片を拾おうとしたその時、ガラガラガラ…ドド────ンっ!!

「ひゃあぁぁぁっ!!」

あまりにも大きな音がしたので、未夢は怖さのあまり近くにいた星矢に抱きついていた。

「ちょっ…未夢ちゃんっ!?」

「かっ…雷、ダメなのぉぉぉぉ〜」

まだ唸ってる雷鳴に未夢は怖さのあまり、星矢から離れる事が出来ずにいた。

「………なにやってんだよ」

ちょうどそこへ、箒と塵取りを持った彷徨が戻ってきたのだった。なんだか、その声はいつもより低めで星矢の顔を睨み付けているかのようだった。

(うっひゃあ〜なんか彷徨くん、怒ってるのかな?)

びくびくと雷の音に怯える未夢の位置からは彷徨の顔は見えないが、明らかに彷徨は不機嫌になっていた。

「ほら、箒と塵取り持ってきたぞ」

「ふぇっ…ありがと…彷徨ぁ〜」

星夜に抱きついていた身体を離し、未夢は彷徨から箒などを取ろうとした瞬間、ドドド─────ンッ!!
さっきより物凄い音がした為、未夢は恐さにいきなり彷徨に抱きついた。
ドンっと、自分の身体に絡まってくる細い腕、白い肌に彷徨は心臓が飛び上がりそうになった。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「みっ…未夢っ…落ち着けって」

バリバリバリ ドドド────ンッ!!

「いやぁぁぁぁぁっ!!」

ぎゅっとしがみついて離さないと言わんばかりに、未夢は彷徨にくっついていた。
そして──フッ……一気にまわりが闇へと化した。

「えっ? なになになに?」

「真っ暗になっちゃったよ」

「停電だな…」

辺りは真っ暗と化し、未夢は恐怖で震えてしまっていた。
彷徨をそれを感じ、懐中電灯を取りに行こうと思ったのだが、腕を振り払うのに躊躇してしまう。

「か、彷徨〜〜…」

真っ暗な中、未夢は情けない声を出してしまう。しかし、まだ外の雷は鳴り止まず、窓の向こうでは雷の白い光が走っていた。
雷はやや遠退いたものの音も大きく、稲妻が走ると未夢は平常心をなくしてしまうようだった。

「彷徨くん、明かりないの?」

「あ、あぁ…懐中電灯が廊下に置いてあるはずなんだけど…」

そう言って歩き出そうとするが、未夢がしがみついたままで身動きが取れない。

「未夢、ちょっと離れろって……」

「ふぇ〜怖いよ〜〜」

だからといって、こんな半泣きの未夢を放っぽりだす訳にもいかず彷徨は困っていた。

「彷徨くん、僕が取ってこようか?」

「え、あ、じゃあ、頼めるか? 夜星」

「うん、いーよ! 本堂の廊下の方だね」

宇宙人ゆえが暗闇をものともせず星矢は、部屋から出て行った。が、しばらく待つも星矢は戻って来ず、停電も復旧しない。
雷も変わらずゴロゴロと唸り、未夢は彷徨の服をずっと掴んでいた。

「……ま、まだかな? 星矢くん」

「だな、見つからないのか? ちょっと行って来る」

傍らにいた彷徨が急に立ち上がり、行ってしまうのを未夢は慌てた。

「ちょ、ちょっと〜こんな暗い中に置いて行かないでよ〜〜」

未だ半泣き状態の未夢は、彷徨の後を追おうと立ち上がろうとして、足が何かに躓いた。

「いいからそこで待っ「きゃあぁぁ!?」」

彷徨が「待ってろ」と言うより早く、未夢が滑って転びそうになるのを驚いて、手で支えようとするが

「うわっ!?」「きゃあ!!」

間に合わず、二人は倒れ込んだ。
「痛い!!」という衝撃に未夢はとっさに目を固くつぶったがあるのは柔らかい感触だった。

(────え?)

と目を開くと、口唇に触れる温かいぬくもり。びくっ!!として、跳ねるようにその場から退いた。

「……………ん?」

声とともに眩しい光りが目を覆った。廊下の曲がり角から、笑いながら星矢が顔を出した。

「あ、彷徨く─ん、未夢ちゃん! 懐中電灯見つかったよ〜って停電直ったね…………ってどうしたの? 二人とも」

二人が、狭い廊下にて未夢は壁にぶつかるように背を当て、彷徨は倒れたのか廊下に肘をついて座っていた。
そして、慌てるような態度であるし、なんだか二人の顔が……

「な、なんでもないよ!!」

「こ、転んだだけだ!」

「なに、そんなに慌ててるの? なんだか、顔も赤いし……」

「「赤くなんかない!!」」

真っ赤になって否定しようにも説得力がない。未夢と彷徨は互いを見ると、ぱっと顔を逸らす始末だ。

「な─んか怪しいなぁ〜」

星矢が気になって、ジトーっと見るが

「あ、ルゥくんたち大丈夫だったかな? 私見て来るよ〜」

「おれ、割れた皿片付けるかな〜」

そそくさとその場から逃げるかのように、いなくなった。星矢は「何かあったな〜」とニヤっとしていた。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


パタパタとあの場から、離れた二人は同じ事を考えていた。

(……さっき、口ぶつかったよね?)

(……さっき、口ぶつかったよな…)

((どんな顔して、彷徨(未夢)に会えばいいんだよ〜〜??))


ほんの少しの暗闇で、どのくらい二人の距離は縮まったのだろうか?



END



あとがき

はい。ようやく書き上げました。
9月から書いていた中途半端な作品をようやっと完書き上げました〜(ホッ)
携帯水没して、ダメになったかと嘆きましたが出来上がって一安心。
まぁ、出来は?と聞かれたらそれは怪しいとしか言いようがございませんが(苦笑)
結局、何が言いたかったのかは既に忘れてしまいました。
暗闇で分からない事故ちゅーでも書きたかったのか、彷徨くんの星矢くんに対してのムッというのが書きたかったのか……多分後者だったような気もしなくない。

とりあえず、読んで下さってありがとうございました。
感想頂けたら幸いです。



2006/11/16


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