恥ずかしいくらいの甘い時間

「うっわぁぁぁぁ〜宿題忘れてたよ〜〜」
そんな嘆きを口に出しながら、三太は自分の教室である2年1組のドアを開けた。
誰もいないと思われた教室内に人影が見えた。窓際の机に長い髪を広げて突っ伏しているのは、親友の同居人である光月未夢だった。
西日を受けて、その金色の髪はキラキラと光っていた。寝ているのだろうか規則正しい呼吸が聞こえて来て、三太は起こさないように近づいた。
さらさらとした髪になぜか触れたくなり、そっと触るがするりと指を滑り落ちた。
(今まであまり気にしてなかったけど…光月さんてやっぱり可愛いんだな…)
つくづくあの女に興味がないという親友が不思議でたまらなかった。こんな美少女と一緒に暮らしていて何も感じないのだろうか?
自分だったら、この素直で明るい女の子が同じ屋根の下、一緒に暮らしていたらどきどきして意識しちゃうだろうに…。
まぁ、親友の話ではドジでマヌケで…と悪い事ばかり聞かされるが、それを話す時の親友の顔が10年以上付き合っていて初めて見るくらい穏やかな顔をしているような気がするのだが…。
フッとそんな事を思い、三太は不器用な親友が自分の気持ちに気付いてないのかと思うとやや笑いたくなった。
(どう見たって彷徨が光月さんに惚れてるってバレバレなのにな〜)
しーんと静まり反った校内にぺたぺたと人の歩いてくる音が聞こえてきた。
なぜか分からないが三太は慌ててカーテンの影に隠れてしまった。なんとなく、この場を誰かに見られたくなかったし、未夢にも気付かれたくなかった。
やがて、足音は自分の教室の前までくるとガラリとドアを開けた。そこにはさっきまで思い浮かんでいた、親友――西遠寺彷徨の姿があった。
彷徨は、教室に入ると寝ている未夢のそばに歩いていった。
大切なモノを扱うようにそっとキラキラ光る髪を一房掴み、そっと口元へと寄せてキスをした。
それはスローモーションのように優しく…絵のようだった。
そして、普段なら絶対聞けないような甘く優しい声音で彼女の名を呼んだ。
「…未夢」
「…ふっ……んぅ…か…なた…?」
「起きろ、風邪ひくぞ」
「用事済んだの…?」
まだ眠いのか未夢は、んぅ…と目を擦っていた。
「あぁ。だけど、お前寝て待ってる位なら先に帰ってていいって言ったろ? 今日はワンニャーが買い物なんだし…」
隣の机に座りながら話す彷徨に、未夢はやや顔を赤らめながら口を開いた。
「んー、でも彷徨と一緒に帰りたかったんだもん……迷惑だった?」
やや上目遣いで見上げる未夢の姿に彷徨ばかりか、影で聞いている三太まで真っ赤になってしまった。
(うわー、うわー、なんか分かんねぇけど聞いてて恥ずかしくなってくるぜーっ!!)
ここにあの演劇大好きな綾がいたら、ネタだわぁ〜と目を輝かせていたに違いない。
「べっ…べつに迷惑じゃねぇよ…」
「そぅお? よかった…」
その声に彷徨は、机から降り自分の席へと向かい帰り支度をした。カバンを肩に掛け、未夢の方を向いた。
「ほら、帰るぞ」
「あっ、うん。待って」
ぱたぱたと赤いカバンを持ち、長い髪をなびかせながら彷徨の待つドアへと急いだ。
その後、廊下から二人のじゃれあいが聞こえなくなるまで三太はカーテンの影から出てこなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ようやく出てきた時には、窓からまたもやじゃれあいながら校庭を歩くクラスメイト二人
「なんだよ…あいつら……すっげぇイチャイチャじゃねぇか…」
聞いているこっちが赤面するぜ。と苦笑いしながら明日どうやってあの親友をからかってやろうか。などと考え、宿題のプリントを机から出しカバンに入れ、三太は教室から出ようとした。
ふと、さっき二人がいた場所を振り向いて
「いいよなぁ〜俺もラブラブになりたいぜ」
短い髪の少女を思い浮かべ、ボソリと呟きながら教室から出ていった。
END
あとがき
またもや懲りずに書いてしまいました。なんか分からない話ですね。
三太視点でラブラブな彷徨未夢を書いてみたくなったのですが、三太くん難しいよ〜
うまく書けませんですみません。ちなみに彷徨と未夢はまだ付き合ってません。
彷徨は一応自分の気持ちに気付いてますが、三太にはのらりくらり誤魔化しております。
そしてタイトル…訳が分からなくて申しわけございません。タイトルつけるのって物凄く苦手なんです。
それでは、ご覧になって下さってありがとうございました。
この作品は『だいすきだよ』に投稿させて頂きました。
桜花様もありがとうございました。