夏の海

「未夢っ…? なんで…」
じりじりと熱い夏の海。
彷徨は三太に頼まれて、三太の叔父がやっている海の家にバイトに来ていた。
まぁ、それも1日だけの話なのだがせっかくだから、遊びも兼ねて二泊三日で来ていたのだが、初日から思わぬ事が起きた。
目の前には、家で留守番をしているはずの未夢の姿。しかもベビーピンクの水着が彷徨の目のやり場を困らせていた。
「あ…えと……ななみちゃんたちに誘われて…」
「「そうそう」」
えへへと笑う未夢の両脇から、未夢の親友であるななみと綾がひょこっと顔を出してにやにや笑っていた。
「天地、小西っ!?」
「黒須くんから今日バイトしてるって聞いて、遊びに来ちゃったんだよーん」
「そんな訳で西遠寺くん、浮き輪貸して下さ〜い」
「あ、あぁ…」
ななみと綾はどの浮き輪にしようか見ていると、おずおずと未夢が彷徨に話し掛けた。
「ご、ごめんね…バイトしてる時に来ちゃって…」
「ホントだよな、俺が汗掻き働いてんのにお前らは遊びかよ〜」
そんな嘆きに未夢は、プッと笑いだした。
「なんだよ」
「ううん、彷徨でもそんな風に思うんだなって思ったら可笑しくて…あはは」
その笑顔に彷徨は、恥ずかしさを隠すようにベッと舌を出した。とその時、間延びする声が横から掛かった。
「あっれ〜? 光月さん? 天地さんに小西さんも来てたの〜?」
「三太、どこに行ってたんだよ」
「あぁ、呼び込みだよ」
「やほー、黒須くん。商売の方はどうなの?」
ななみが浮き輪を片手に、話し掛けると三太は喜びながら
「あぁ、すっげーんだぜ。さっきまで女の子の行列だったんだぜ、まっ、彷徨のおかげだな。」
うんうんと頷きながら語るも次の瞬間、脇からななみの肘がゴスっと当てられた。
「余計な事を…」
「なっ、なんだよ〜天地さ〜〜ん…」
涙目になって訴える三太を見ていた未夢だが、苦笑いをするとななみ達の方を向いた。
「な、ななみちゃん、綾ちゃん…仕事の邪魔したら悪いし、行こ?」
「えっ…未夢?」
「未夢ちゃん?」
「あっ、彷徨、これお金…」
未夢は浮き輪を持つとお金を渡し、すたすた行ってしまった。
ななみと綾は、早足で歩っていく未夢を見ると自分達もお金を渡し、慌てて追い掛けていった。
彷徨も追い掛けようとしたが
「「すいませ〜ん、浮き輪貸して下さ〜いvV」」
「え……どうぞ…(未夢…)」
客が来てしまったので、追い掛ける事が出来なかった。
ただ、未夢が歩いて行った方を眺めていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
未夢は、荷物が置いてあるシートまで来ると浮き輪を置きちょこんと座った。
ごそごそと荷物を漁り、中からタオルを出した。
「みーゆぅ〜もう先に行くからびっくりしたよ〜」
「そうだよ、未夢ちゃん」
さっきまで曇っていた顔を笑顔で隠し、未夢は上を向いた。
「だって、バイトしてるんだし、邪魔したら悪いじゃない」
その作り笑いにななみも綾も気付き、二人困ったように顔を見合わせた。
「せっかく来たんだし、遊ぼうよ!!」
未夢が努めて明るくそういうのを見ると、ななみは三太の発言を恨めしく思った。
はぁ〜とため息を吐き、横にいる綾を見るとこちらも同じ気持ちでいるのか、仕方ないよ。という表情をしていた。
「よーし、思う存分楽しもう〜!!」
「「おーっ!!」」
ななみが元気にいうと、未夢も綾も両手を挙げて叫んだ。
三人揃って浮き輪を持つと海に走っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
泳ぎ疲れたのか綾と未夢は、ヘトヘトになりながら荷物の場所に戻ってきた。
「なんで…ななみちゃん…あんなに元気なの〜…」
「しょうがいよ…未夢ちゃん、ななみちゃんなんだから…」
ストンっとシートに座り、タオルで体を拭きながら嘆きつつ、まだ海の中にいるななみを見ていた。
横に座っていた綾は立ち上がると
「喉乾いたから、ジュース買ってくるよ。未夢ちゃん何がいい?」
「えっ? じゃあ〜…レモンジュースがいいな♪」
「分かった、待っててね」
「行ってらっしゃーい」
走っていく綾を見送り、未夢はタオルを羽織った。
しばし、ボーッと歩いている海水浴客を眺めていると女の子たちの会話が聞こえてきた。
『ねぇねぇ、さっきの男の子すっごくカッコよくなかったっ!!』
『海の家の貸し出ししていた人でしょ!?』
『うんうん、すっごいカッコいいよね〜』
『あーん、一緒に遊びたいね〜』
『名前なんていうのかな?』
『後でもう1回行ってみない?』
『夜とか誘おうよ♪』
『いいかも〜♪』
………今の会話って…たぶんっていうか…絶対、彷徨の事だよね。やっぱり、彷徨ってモテるんだなぁ〜。
そんな事を思い、ふぅとため息を吐いた。とそこで思考を停止させる。
「なっ、なんでそんなのを気にしなきゃならないのよっ!?」
慌てたようにぶんぶんと首を振った。そして、またため息を吐いた。
ぼーっとまだ海の方を見ていると、ポロっと涙が頬を伝った。
「え?なんで……?」
なんで涙が出てくるのだろう…と疑問に思いながらも、心の奥底では何が原因かは本能的に分かっていたが、未夢はまだそのことを認めることが出来ないのだ。
認めたら…この関係が壊れそうで恐い…。
自分が変わってしまいそうで恐いのだ。
顔を下に向け他人に見られないようにしていると
「ねぇねぇ、かーのじょ♪」
不意に声が掛けられ、涙を拭いながら顔を上げると見知らぬ男性が2人目の前に立っていた。
「…え? あの……?」
誰?と言わんばかりに未夢の顔に疑問が走るが男達はそんなことを気にもせず話しかけてきた。
「ねぇ、1人で何してるの?」
「よかったら、俺たちと一緒に遊ばない?」
「お茶でもどう?」
一気に言われ未夢は呆然としていたが、男達は未夢の返事も聞かず腕を掴むと立ち上がらせようとした。
「えっ!? ちょ…ちょっと…」
さすがに馴れ馴れしく腕を掴まれて未夢は抵抗しようとするが、さすがに男性の力には負けてしまい無理やり引っ張られた。
「あ、あの…困ります!! 友達待ってるので…」
「じゃあさ、その友達も一緒に遊ぼうよ♪」
「そうそう、女の子たちだけじゃ退屈だろ? あっちの岩場に行こうぜ」
「だ、だから…行きませんってば!!」
「いいじゃん、大丈夫だって。何にもしないし」
肩を掴まれ無理やりに岩場に連れてかれそうになり、未夢は心の中で叫んだ。
(…助けて!! 彷徨!!)
「おい、その手離せよ!!」
後ろから声が掛かって振り向くと、待ち焦がれていた彷徨が腕を組んで立っていた。
「彷徨!!」
「なんだよ、お前」
「そうそう邪魔すんなよ、ガキ」
「いいから、未夢から手を離せ!!」
ダークブラウンの瞳が怒りを込め、男達を睨みつけるとその瞳の中に恐怖を感じたのか男達は未夢の肩から手を放した。
「なんだよ、男連れならそういえよ」
「次、探そうぜ」
微妙な捨てセリフは吐きそそくさと逃げて行った。
「…か…なた? なんで…ここに?」
未夢は少し信じられないといったような顔立ちをして、彷徨を見つめた。
そう…今頃はまだバイト中なはずで…もしかしたらさっきの女の子達と話しているに違いない。とそう思っていたから。
「なんだよ…助けてやったのにその言い草は」
「え…だ、だって……」
「それともアイツらと遊びたかったのか?」
「そ、そんなわけっ…ないじゃない!!」
そう、掴まれた腕がとてもイヤで堪らなかった。気持ち悪いと思った。恐かった……。
そう思ったら、ポロポロと涙が零れてきた。
「お、おい!? 未夢? どうした、なんかされたのか?」
ぶんぶんと首を横に振り、未夢は自分でもなぜか分からなかったのだ。
ただ、助けて。と思って願った人が来てくれて…ホっとした気持ちと嬉しいと思う気持ち、色々な気持ちが入り混じったのだ。
「ちがっ…違うの……」
「………じゃあ…なんで…」
「か…彷徨が…」
「俺が?」
「彷徨が…助けてくれて……とても嬉しかったの…ホッとしたの…だ、だって…怖かった…から…」
次の瞬間、ふわりと未夢は彷徨に抱きしめられていた。
「か、彷徨っ!?」
「……大事にならずにすんでよかった…」
そっと囁かれ、未夢は真っ赤になった。
身体が離れ、彷徨の顔を見てみるとやや赤くなっているのが分かった。
未夢はその顔が心配してくれた事を物語っていて、不謹慎だが嬉しくて笑顔になった。
「…なに、笑ってんだよ」
「だって…嬉しいんだもん」
「……ばぁーか。ほら行くぞ」
顔を隠し、彷徨はぎゅっと未夢の手を掴むと浜辺に戻った。
────ねぇ、なんで私がココにいるって分かったの?
────天地が見ていたらしくて…慌てて俺たちのトコに走ってきたんだよ
────そうなんだ…ななみちゃんに感謝しなくちゃね。
────なぁ…
────なぁに?
────………その水着さぁ〜
────なによ〜似合わないっていいたいんでしょ。どうせビキニなんて私には…
────違くて…似合いすぎて………オレが困る…(ぼそ)
────…え? 何? なんて言ったの?
────べっつにぃ〜いいんじゃねーの?
────本当!? ありがとう♪嬉しいよ
────そういえばさ、俺たち明日もいるんだけどお前らどーするんだ?
────あれ? 三太くんから聞いてない? 三太くんのおじさんトコの民宿に泊まるんだよ?
────マジで!?
────うん…ななみちゃんたちが言ってたもん。
────……じゃあさ、明日さ…一緒に泳ごうぜ。
────うん、約束ね♪
END
あとがき
なんか、微妙な出来になってしまいました…。
うーんなんか上手く書くことができませんねぇ…
ちなみにこの話はまだ続くんですよね。
ほら、次の日の遊ぶ姿を書きたいな…なーんて思ってたり(苦笑)
こんなの読んで下さってありがとうございました。
サイトUP:2006/08/31
〜おまけ〜
「よぉ〜し、今日もたくさん泳ぐぞ〜〜」
「「「おぉ〜〜」」」
ななみが腕をあげ、元気よく言い放つと綾と、そして今日はバイト休みの三太も勢いよく手をあげた。海へと一直線に走っていった。
「彷徨〜こっち、こっち」
彷徨が民宿から出てくると未夢は、手招きをして待っていた。
「なんだ、先に行ってたんじゃなかったのか?」
「だって、彷徨ひとりで淋しいかなって思って」
くすっと笑う未夢をみて、彷徨はなんだか照れ臭そうに頭をかいた。
「バーカ…お前じゃあるまいし」
「むぅ〜〜なによ〜彷徨のバカ」
ぷぅっと頬を膨らませる姿をみて、かわいいな。と思いつつも出てくる言葉は
「そんな膨れっ面して、どこのガキだよ」
にやりと笑いながら、未夢の頭にぽんっと手を乗せた。
「また、子供扱いして〜〜」
「おぉっ、怖っ」
「待ちなさーいっ!! かぁ〜なぁ〜たぁ〜」
走りだした彷徨を追って未夢も走りだした。浅瀬まで来ると、彷徨はニヤりと笑い、追い付いた未夢に水をかけた。
「ちょっ…いきなり水かけないでよっ!! しょっぱ…」
「ば──かっ」
「こ…のぉ〜〜まてぇ〜」
バシャバシャと未夢も彷徨へ向けて水を飛ばすも
「へっへー、とっどきませーん」
ベッと舌を出し、ザブザブと沖にいく彷徨の後をついて行った。
「待ってよ、彷徨〜〜…」
ズルッ!!
「きゃ──っ!? じっ…地面がな―…」
「おっ…おいっ……未夢っ」
じたばたと暴れ、溺れてる未夢のもとに彷徨は慌てて近寄る。
「落ち着けっ!! 未夢っ!!」
手を伸ばし、沈む未夢を掴み助けるもびっくりしてるのか必死にしがみついてくるのをようやく落ち着かせた。
「ゲホッ…ゴホッ…ゴホッ…」
「お…っまえ…びっくりさせるから…ハナに水はいったろ…」
「あっ…足…着かないと……怖いじゃないっ!!」
「お前って泳げるんだろ?」
「わ、私…25mしか泳げないから…」
ちょっぴり恥ずかしそうにいう未夢に彷徨は笑いそうになった。
「な、なによっ!!…助けてなんて……頼んでないわよ―――っ!!」
ムキーっという未夢に彷徨は少し手を緩めると、未夢は足を着こうと伸ばすが、なぜか地面がない。思わず、また彷徨にしがみついた。
「なんだよ、離れるんじゃないのか?」
「だっ…だって……ここ足着かないよっ…?」
「でも、泳げるんだろ」
しれっと言い放ち、彷徨は未夢を離そうとするが未夢は慌てて腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっと…」
「なんだよ…助けて欲しくなかったんだろ。手ぇ離せば?」
「〜〜〜〜あ…足がつったの!!」
真っ赤になる未夢をみて、彷徨は楽しそうに笑っていた。
「じゃあ、仕方ねぇな」
そう言って、未夢の背中に手を回し、腰を支えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「な─んか…思いっきり2人の世界よねぇ〜」
「ホントホント…ラブラブすぎて近寄れない…」
「彷徨でもあんな事するなんてなぁぁ〜」
ななみ、綾、三太はそんな2人の様子をゴムボートに乗りながら見ていた。そのことに彷徨たちが気付くまで後数秒だった。
END
あとがき
《おまけ》っていう訳で次の日の話なんですが…全然意味分かんないですね。
正に『蛇足』というべきですな。
へたに書かない方がよかったです。うん。
これを読んで下った方に感謝いたします。ありがとうございました。
2006/9/13