第2ボタン


渡り廊下を歩きつつ、未夢は空を眺めた。
雲が風に流されているのか、雲の形があっという間に変えていく。

「……風が強いんだ…」

ザワザワと木々が揺れ、髪もスカートもはためいていた。
金色の髪が風に煽られ、目の前が見にくくなるのを未夢はなんとか手で抑えていた。

「未夢、なにやっているんだ?」

不意に声を掛けられ、振り向くと同居人であり、学校一の人気者・西遠寺彷徨が立っていた。
彷徨も風で視界が悪いのか目元に手をかざし、風を凌いでいた。

「彷徨こそ、なにしてるの?」

「俺は職員室の帰り、次、自習だってよ」

「そうなんだ、やったぁ♪」

ニコッと笑うその笑顔に彷徨は、照れを隠すように口元を抑えた。

(………不意打ち…)

誤魔化すように、持っていたプリントの束でポンっと叩くと

「プリントがあるんだよ、バーカ」

「むぅ〜バカとはなによ! バカとは──っ」

口から言葉が出た瞬間、ザアァァァ─っ!!と風が吹いた。
彷徨は、未夢を庇うように手を出そうとしたが長い金色の髪がなびいてくるのが目にかかった。
一瞬、流れる長い髪に、晒された白いうなじに瞳が奪われてしまった。ようやく、風が治まり未夢がつぶっていた瞳を開けた。

「はぁ〜すごい風だったねぇ〜」

「あ…あぁ…」

彷徨は少し顔を赤らめたが、未夢は気付かずにいた。ぐしゃぐしゃになった髪を抑え、歩きだそうとしたその時

「痛っ…!?」

「え?」

未夢の言葉に彷徨はハッとし、未夢は涙目になりながら、自分の髪を目で辿った。気が付けば、彷徨のボタンに未夢の髪が引っ掛かっていた。

「あ…」

「ちょっと、待ってろ。外すから…」

「う…うん…」

パッと上を見上げると、すぐ近くに彷徨の顔があって未夢はドキっとした。
ダークブラウンの瞳、前髪がちょっと長いさらさらの茶色の髪、整った顔。

(や、やだっ!! こんなに顔近いっっ)

その姿に、未夢は顔を赤くしながらドキドキと高鳴る心音が聞こえるんしゃないかと思った。早く離れて欲しいと思って

「は、早く…してよっ!!」

「うるせーな、待ってろ。大体ちゃんと髪梳かしてるのかよ」

「し、失礼ねっ!! ちゃんと梳かしているわよ…」

真っ赤になりながら、反論しつつぶぅっと頬を膨らませた。
彷徨は普段、未夢の近くにいることは多いがこんなに接近する事はあまりない。さらさらの髪を手にしてみれば、柔らかく甘い香りが鼻先を擽った。
なんとなく彷徨も気恥ずかしくなりつつ、誤魔化そうと憎まれ口を叩いていた。それでも、綺麗な髪が痛まないように大事に扱っていたその時

「………ふっふふ…あんなに近づいて…ふったりはっ やっぱり なっかよっしさーん…」

独特のメロディと共に突き刺さる視線を感じ、振り向くと瞳を光らせたクリスが立っていた。
未夢も彷徨も焦るが、焦れば焦るほど髪は外れず、未夢が動いてしまい余計に絡まっていく。

「ば、ばかっ!! 動くなっ、余計にっ…」

「だ、だって…クリスちゃんが……」

いつもなら、急いで離れるも今日は絡まっている髪のせいで離れる事が出来ない。

「いつまでくっついているんですの〜? そんなに外れないのなら、私がとって差し上げますわぁぁぁぁ〜」

どこから取り出したのか、シャキーンと鋏を掲げ、離れない二人にクリスは「キシャアァァァァ!!」と走り寄ってくる。

「く、クリスちゃんっ!?(えっ? 切る気なのっ?)」

さぁぁぁぁぁ──…と顔を青くして、未夢は目をつぶった。

(いやぁ〜っ!! 私の髪〜〜)

ブチッ!!

「はっ…外れたぞっ!! 花小町…だ、だから鋏なんてしまえっ!!」

ババッと離れて、彷徨は焦りながらクリスの肩を掴んだ。髪を突っ張る痛みが消え、未夢もホッとしながらクリスの様子を伺った。
肩に手を置かれたのが功したのか、クリスは顔を真っ赤にしながら

「彷徨くんの顔がこんなに近くにぃぃぃ〜恥ずかしいですわぁぁぁぁ〜」

ブシューっと熱を出し、ふわふわと飛んでいってしまった。

「ははっ…」

苦笑いをしながら、彷徨はそれを見送った後、未夢の方を振り向いた。未夢は腰が抜けたのかその場に座り込んでいた。

「大丈夫か? ほら」

呆然としている未夢の手を取り、立たせてやった。

「あ、ありがと…」

「はぁ〜危なかったな…」

その言葉に未夢はハッとして、さっきまで絡まっていた制服のボタンを見た。すると、ボタンは引きちぎられていた。

(彷徨……ボタンちぎってくれたんだ…)

「…ボタン……」

「え?」

「……ごめん。ありがとう…」

なんとなく、髪を守ってくれた事が嬉しくて素直にお礼を言った。彷徨は、そっぽ向くと照れ臭そうに頬を掻いた。

「…せ、せっかくのお前の取り柄だしな……」

(あんな綺麗な髪、むざむざ切られて堪るか!!)

そう思い、手の中にあるボタンに気付いた。未夢はまだ申し訳なさそうにしていて、彷徨は思いついたようにスッと未夢の目の前にボタンを差し出した。

「ほら、ボタン付けてくれよ。そんくらい出来るだろ」

着ていたワイシャツを脱いだ。中にTシャツを着ていたが、未夢は目の前で脱がれてやや顔を赤くした。
バサっと頭に被せて、彷徨はさっさと歩いていく。

「早くしねぇと休み時間終わるぞ」

「あ、待って…」

顔を出し、追い掛けようとしてワイシャツからの香りにトクンっと胸が鳴った。

(…彷徨の匂いだ……)

ワイシャツを手に取ると、未夢は周りをキョロキョロと見渡し、誰も見ていないのを確認するとそっと、彷徨のワイシャツ……先程、自分の髪が絡まった第2ボタンのあった位置へ口唇を落とした。
途端に真っ赤になり、ぱたぱたと手で扇いだ。

「おーい、未夢。早くしろよ」

前方から掛かるその声に恥ずかしさはますます上がり、狼狽えながら未夢は歩きだした。

「わっ…分かってるわよっ!!」


その後、教室内にてボタン付けをしているのをななみや綾に大変からかわれたのは言うまでもなかった。




END




あとがき

うぅーん。微妙な出来ですな。なんか、鋏を持つクリスちゃんはやりすぎたかもしれんです。本当ごめんなさい。(>_<)
ちなみに、クリスちゃんは後半いないのは彷徨に肩を掴まれ、真正面から見られてしまったので熱が上昇したので保健室へ行ってます。戻ってきたのは、授業が終わってからでした(苦笑)

リハビリなかなかうまく行かないです。駄文読んで下さってありがとうございました。

しかし、タイトルに意味がないような気がするなぁ〜


2006/9/10


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