李絳攸の新たな日々と悩み
恋情〜if〜絳攸&恋情ヒロイン
「お帰りなさいませ、お兄…、いえ、絳攸さま」
己が出迎えに出た暁緋の顔を見て、絳攸の頬が自然と緩んだ。
「今戻った」
絳攸の出迎えに出てきたのは、婚約者の紅暁緋――かつての名を、『李』暁緋。絳攸の義妹として長年共に暮らしてきた娘である。
「先にお食事にしますか?それとも湯浴みをされますか?」
「…暁緋は食事は済ませたのか?」
「いいえ、まだです。絳攸様がお戻りになってからご一緒しようと思いまして」
「そうか。では先に食事をするとしよう。それと…湯浴みを終えたら、その…、暁緋の部屋に行ってもいいだろうか?」
「…はい、お待ちしています」
******
食事と湯浴みを終えると、絳攸はすぐさま暁緋の室に向かった。
自身の邸を持たない絳攸は、暁緋とともに未だ紅邸で黎深たちとともに暮らしている。ので、絳攸は暁緋と同じ屋根の下で暮らしていながらも、離れ離れという色々と辛い状況下での生活を余儀なくされていた。
絳攸が暁緋の室を訪れると、家人の姿は誰一人なく、暁緋一人だった。
「今日も一日お疲れ様でした」
楚々とした笑みを浮かべる暁緋に勧められるまま、絳攸は椅子に座り差し出された冷酒を口にした。湯浴みの後の火照った体に、キンと冷えた酒が心地よく染み渡る。
「暁緋も飲んでみるか?」
絳攸は手にしていた銚子を暁緋に差し出す。差し出された銚子を受け取った暁緋は、銚子に口をつけようとし――動きを止めた。暁緋の顔が、ほんのりと紅く染まり――絳攸は首を傾げる。
「どうした。具合でも悪いのか」
「あ…いえ…、その…この器、絳攸さまが口をおつけになったものだと思いましたら、その…」
――つまりは、間接的な口づけ。
暁緋の言わんとしたことを理解してしまった絳攸の頬も瞬時に赤く染まる。
「…なっ!そそそ、そんなことは何度か、してるだろう!!」
但し、養父黎深の目の届かない場所限定で。
「そ、そうですよね!すみません…変なことを言ってしまって…」
頬を染めたまま、困ったように笑う暁緋のその仕草の愛らしさに、絳攸の理性が崩れた。養父の目の届く場所で暁緋に手を出せばどうなるかは分かりきっているんのだけれども。
「――暁緋」
名を呼ばれると同時に、肩に手を置かれる。真正面には夫となる男(ひと)の顔があって。
暁緋は手にしていた銚子を置くと、そっと――瞼を閉じた。
<終>
暁緋の室を出た後、絳攸はデバガメしていた黎深様からいやがらせを受けることまちがいなしだと思います(酷)
2007/10/12
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