しあわせは、ここに
恋情if〜楸瑛&恋情ヒロイン
「私…、怖いです」
己の腕の中、暁緋が小さく呟いた言葉に、楸瑛は暁緋を抱く腕にほんの少し力を込め耳元にそっと囁きかける。
「なにが、怖いんだい?」
「……幸せで、幸せすぎて怖いんです。あまりにも幸せで――これは泡沫の夢ではないかと思うと、怖くて」
暁緋は楸瑛の体に己が体を寄せる。愛され、求められることがこんなにも幸福なことだとは――知らなかった。義兄を想い、楸瑛の想いを拒み続けていたあの頃には知る由もなかった。
楸瑛は暁緋の言葉に小さく笑みを零した。縋るように体を寄せてくる暁緋はとても愛らしい。
「私もね、今があまりにも幸せで――夢をみてるのかと思ったけど」
暁緋の艶やかな黒髪を一房掬い、口づけた。髪を掬い取られたことで顕になった暁緋費の白い首筋には、楸瑛が先刻散らした紅い華の痕がいくつもある。
「夢じゃないんだね、暁緋はここに、――私の腕の中にいる」
「…楸瑛様…」
暁緋が顔を上げると、窓の隙間から差し込む月明かりの下、楸瑛が微笑んでいた。艶麗な笑みに、暁緋の胸が甘く疼く。
「――私を、ずっとお側においてくださいますか?」
暁緋は楸瑛に問いかける。
愛されることの喜びを知った。同時に、得がたいばかりの倖せも。知ってしまった今は、それらを失うことが何より、怖ろしい。
「離すことなどないと誓うよ、何があっても――決して」
不安げな表情を浮かべる暁緋の額に触れるだけの口づけを落として。
「愛してる、暁緋――」
楸瑛は囁き、華散る胸元へと顔を埋めた。
<終>
いつも不憫な楸瑛への救いの手で頑張って甘くしてみたんですが…どうなんでしょう。甘いですか?そしてこの話、『しっとり、艶っぽく』を目指して書いたんですが、微妙に消化不良気味かも。
2007/10/12
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