貴女のその名前は
この感覚を、何処かで知っているような気がする。
ううん、気がするんじゃなくて、体験したことがある。
ずっと、抱いていた嫌な気持ち。
拭いたくて、拭いたくて。
だけど拭えなくて。
拭えば拭うほど、落ちていくような気がする。
何に抱いているというの?
あれほど、駄目だと思ったのに。
あれほど、蓋をしようとしたのに。
分かっていたじゃない・・・
私は、いつも、馬鹿な想いを抱いてる。
一体、何がしたいの?
私は―――――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「大丈夫だと思ったのに、な・・・」
ここに来れば、すっと、晴れると思ったんだけど。
静蘭に明かした山を「明かし山」と呼んで、紫炎は佇んだ。
あの日から、自分は帰るから、と彼らとの間を一線引こうと思っていた。
けれど、彼らは簡単に、その一線を越えてくる。
「彼」・・・
ずっと思い出したくもなかった思いに、唇を噛み締めた。
じわりと血が滲む。
「何がですか?」
「!!」
振り向こうとすれば、声はかなり近いところにあることを理解する。
静蘭が、隣で表情を伺っていた。
紫炎は2、3歩後退る。
いつの間に・・・・・
「何故、泣いているのです?」
「・・・・・泣いてません・・・・・」
「泣いてますよ」
ぐっと、静蘭を睨みつけた。
静蘭は何も言わずに紫炎を見据えていた。
「それを、何と言うか知っていますか?」
「え?」
それ?
「・・・貴女が自分で自覚するまで、言わないことにします。それにも、色々なものがありますからね」
「何を・・・・・?」
「深く考えて、出るものではありませんよ。貴女が認めないなら、意味がないですから」
「静蘭さん?」
そこまで言って、静蘭は微笑む。
紫炎は首を傾げ、静蘭を見上げた。
数時間前、秀麗に見せていたあの笑顔。
自分には、意地悪な表情しか見せないくせに、彼女には優しい笑顔を見せていた。
仕草も、表情も、配慮までもが紳士的で、まるで愛しいものを見る目。
紫炎にとって、その瞳が何よりも胸が痛い原因だった。
人の愛情を苦手とする紫炎にとって、様々な愛情の形を知らない。
その愛情がどのような愛情かも、見極めることができない。
静蘭が自分にする意地悪も、愛情の一種であることを知らない。
だから、余計に腹立たしい・・・というより、胸に突き刺さる思いだった。
「これだけは言っておきましょう」
「?」
「私は、貴女を嫌いではありません。だからといって、味方でもありません」
「・・・・・」
旦那様とお嬢様が、大切な方です、と言おうとしてやめた。
これ以上、悩みの種を増やすことも無いだろう。
「・・・ありがとうございます・・・っ」
傷つけるような言葉をあえて使ったのに、彼女は傷つくどころか感謝した。
静蘭は少なからず驚いた。
今までのことを考えても、紫炎は怒るか悲しむかだった。
だからその泣きながらの笑顔は、衝撃だった。
だが紫炎にとっても、衝撃な言葉だったことには変わりない。
それは良い意味で。
嫌われたかも、という気持ちから意地悪が次第に怖くなった。
嫌われたくない一心で生きてきた紫炎は、その言葉だけで、救われたような気がする。
味方でなくてもいい。
その抱いている感情を認めれば、貴女は優しい、素敵な女性になるでしょう。
そう言おうと口を開いたが、やめた。
逆に紫炎はそんな女性になると、嫌だと思った。
いつか帰るのだ。
なら、そのままでいいと。
それからというもの、静蘭は、全てを壊さないように、慎重になった。
大切な人たちがいる、穏やかな幸せ。
このバランスが、崩れてしまわないように―――
Fin.
後書き
森川沙耶様!!
申し訳ありません!!!
遅くなった上、こんなものになってしまいまして!!
意味不明ですよね!!?
しかも、かなり短いですし・・・
リクエストに9割ぐらい応えてませんし・・・
え〜っと・・・・・6000番リクエスト、本当にありがとうございました!!!!!
もしよければ、またどうぞ!
もう嫌ですよね・・・・・スミマセン
遅くなり、本当にすみませんでした!!
批評は森川様のみ、受け付けます!!
こんなのでよければお持ち帰りくださいませ。
お読みいただきありがとうございましたw
それでは失礼します。
慈月亜紀
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