ずっと側に…

Treasure

秀麗達が茶州に着任し、だいぶ落ち着いてきたころ。
次の日優麗は休みだった。
夜、机案を前に椅子に座り薬調合をしていた時だった。
室の戸が叩かれる。


「‥どなたですか?」

「私ですお嬢様」


聞き慣れた声に慌てて器具を置き、手袋を脱ぐ。
立ち上がり、扉を開けようと戸に近付いた時、床に積まれていた本や書翰に袖を引っ掛けてしまい雪崩がおきた。
直ぐに片付けたかったが待たせるのも悪く思い、先に戸を開けた。


「‥どうなされたのですか?」

「こんな時刻にすみません。明日お嬢様はお休みと訊きましたので…。よろしければ出掛けませんか?」


突然の誘いに戸惑う。そもそも誰から自分が休みだと訊いたのか。
明日は色々とやることがあったのだが人からの誘いを無下にすることも出来ず、こくりと頷いた。


「ありがとうございます。では明日一日、お嬢様の時間はいただきます。…あ、書翰の山を崩されたようですね。片付け手伝いましょうか?」

「あの…お願いします…すみません」


優麗は静蘭を室に招き入れた。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



朝、また室の戸が叩かれる。戸を開けると笑顔の静蘭。


「おはようございますお嬢様。今日一日よろしくお願いしますね」

「あの……はい。よろしくお願いします」


優麗は首を少し傾げ微笑んだ。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


大通りを並んで歩く。一体どこに行くのか。優麗は知らされていなかったのだが、黙って静蘭の隣りを歩いていた。


「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん。その人はあんたのいい人かい?」


店の店主が手招きしながら優麗に話しかけた。
優麗は首を傾げ静蘭を見る。
そして笑みを浮かべ。


「静蘭殿は…良い人ですが?」


静蘭は内心溜息をついた。――きっとお嬢様のイイ人は意味が違う。と。





静蘭の心情を知らない優麗は店主に鈴を渡されていた。


「いいねぇ。可愛いお嬢ちゃんに綺麗な彼。絵になるねぇ。これはおじさんからのお祝いだよ」

「…お祝い?…………あの‥ありがとうございます」


優麗は気前のいい店主に頭を下げた。
静蘭が歩き出したのを見て優麗もついていく。
歩くのが遅い優麗に合せてゆっくり歩くことを忘れない気遣いはやはり静蘭らしい。


「静蘭殿……あの、先程の方に鈴を二つ頂いたのでよろしければお一つ如何ですか?」


優麗の手に乗っている鈴は、一つは金色の物。紐は朱と黄色の濃淡でもう一つは銀色で紐は青と紫の濃淡のものだ。
静蘭は金色の鈴を手にとった。


「私はこれをいただけますか?」

「はい、どうぞ……。これは‥どこに着けましょうか…」


人通りの多い道なのだが歩きながら悩み始めた優麗は誰かにぶつかりそうである。
静蘭は優麗の鈴の持っていない手をとる。
ハッとした優麗は静蘭を見上げた。



「せ、静蘭殿?」

「お嬢様はすぐ人とぶつかるでしょう?ですから手を繋がせてください」

「あの‥はい……。あ…」


何か思いついたのか、静蘭の手を放した。静蘭は離された手を見つめた。心残りがあったものの優麗が何かし始めたため視線を移しそれを見守る。
優麗は髪紐を解き、袖の中から簪や髪留めを出しそれらを使い器用に髪を結った。
最後に鈴を着ける。
趣味はいいのだが某孔雀若君を思い出す。


「変…でしょうか?」

「お似合いです」


首を傾げ訊かれた静蘭は世辞抜きに答えた。
それを訊いた優麗は微笑み静蘭の手を掴んだ。
静蘭は驚き目を開く。優麗は恥ずかしいのか俯いているが耳が少し色づいている。


「あ、ありがとうございます……その‥行きましょう」

「はい」


静蘭は優麗の手を握り返し歩き出した。



「お嬢様」

「は、い?」


静蘭の力が増したように感じた。
一歩前を歩いている静蘭の表情が見えないからかそれが怒りからか判らず不安になる。


「この鈴は私とお嬢様だと思いませんか?」

「……はい?」


突然言われ、聞き返してしまった。そんな優麗の反応に視線を向けた静蘭は笑みを浮かべ話を続けた。


「私の鈴はお嬢様。お嬢様の頭に着いている鈴は私。…ずっと互いが側にいる気持ちになりませんか?……でも、私は鈴ではなくずっとお嬢様の側にいたいと‥お嬢様にも側にいてほしいと思っているんですよ」

「え‥あ、あの……」


告白紛いの台詞に俯く。
耳を見ると紅い。そんな反応をされると余計に困らせたくなる。
足を止め、優麗の耳もとに顔を近付けた。


「お嬢様、ずっと私の側にいてくださいね。嫌とは言わせません。逃げても掴まえますから。どこまで行っても…必ずさらいに行きますから」


真っ赤な顔を上げパクパクと口を開閉する優麗を見て静蘭はクスクスと笑った。





後書き

なんだか強制終了させてしまってすみません。
静蘭さん臭いです。と言うか臭い台詞言わせてみたかったんです…(-.-;)
グダグダと長くなってしまいましたね(苦笑)
苦情、批判は森川様のみ受付けます。遅くなってすみません(汗)
ここまで読んで下さり感謝します。


2007.04.07



感謝の気持ち

まずは李蓮様相互小説ありがとうございました!
はあ〜優麗ちゃん可愛いですね〜。
「いい人」…二人の見解の差に思わず、静蘭ファイト!と思ったり。鈴を渡したりするのも素敵でした!
静蘭には是非とも頑張ってもらいたいですね!


頂いた日(サイトup):2007/04/11


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