君に贈る想いを託す花
…可愛い。
目の前にはゼラニウムをあしらった髪飾り。
が、今の私に似合わないことはわかっている。
だって、髪がないから。
いや、ハゲてるんじゃなくて、長さがないっていう意味だけど。
だから、今の私が買っても全くの無意味。
埃を被るだけ。
でも、可愛い…
もう一つの物語
君に贈る想いを託す花
結城が彩雲国に来てから五日。
俺たちは二人で、結城の日用品を揃えに来ていた。
決して忘れていたわけじゃない。
ただ、休みが取れなかっただけで。
何度悠舜に休みをくれと言ったことか。
それでもくれなかったのに、結城が話した瞬間「明日は来なくて結構です」と言われた。
一体どんな技を使ったのか教えてほし…いや、何でもない。
まぁ、俺的に結城と二人で街を歩けるってんでかなり楽しみにしていた。
俺が一歩先を歩いて、しっかりしてるとこ見せて、好感度を上げようと思っていたのに…
一歩先どころか、二歩三歩先を歩いている。
俺じゃなくて、結城が。
俺が金を払っている間に次の店を見ている。
人が多い時間帯でなくてよかった。
そうでなければ、とっくの昔に見失っていたに違いない。
現に今だって三軒先の小間物屋を覗いている。
「コラ。先行くなっつったろ」
「何? ちゃんと見える範囲にいるでしょ?」
コイツ何言ってんだ?という目で見られる。
…アレ?
俺の扱い酷くね?
俺、間違ったことは言ってねぇよな。
「ダーメ。俺の手の届く範囲にいること。それが嫌なら、その災難吸引体質を改善するんだな」
結城ときたら、ちょっと目を離した隙にあらゆる災難を呼び寄せる素晴らしい体質の持ち主だった。
一緒に登城すれば、州軍の練習の流れ矢に当たりそうになった。
そして昨日も州府の階段から落ちた。
たまたま下にいた茗才が下敷きになってくれたおかげで大事にはならなかったけど。
とにかく、結城の場合は目が届く範囲じゃだめだ。
手の届く範囲でないと、何かあった時に対応できない。
本当は、何もないのが一番だけど。
「で、ここでも何か買うのか? そういえば、鏡とか何とか言ってたよな」
「んー、今はいいや。まずは生活必需品を買わなきゃいけないし」
そういう結城の目線を追えば、葵の花をあしらった髪飾り。
細かに装飾されていて、普通のものよりやや高い程度か。
でも、装飾の細かさに比べれば割とお手頃価格だ。
「別に少しくらいなら平気だぜ。こう見えても俺、高収入だし。州府の奴らも『結城のために』って金くれたし」
結城のためだけに使うように、と強く釘を刺されたけど。
「いいの。次行こう。」
そう言ってまた一人で歩き出した。
最後まで髪飾りを見てたくせに。
「本当、素直じゃねーよな。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ちょっと、燕青! これ、どういうこと!?」
「おやすみ」と言って別れてからそう経っていない。
バタバタと慌しい足音を立てて結城が戻ってきた。
予想通りの反応。
「どーした?」
「だから、コレ!!」
結城の手にあるのは昼間の髪飾り。
「あれ、違った?」
「いや、合ってる…じゃなくて! 何でここにこの髪飾りがあるの!?」
結城が夕飯の片付けをしている間に、結城の部屋の机の上に置いた葵の髪飾り。
ずっと欲しそうな顔をしていた。
そんな結城に、少年の格好をしていても女の子なんだなぁ…とか改めて実感したり。
や、結城が女だって忘れてたわけじゃねぇぞ。
あまりにも男装が似合ってただけで。
「だって、欲しかったんだろ?」
「ほ、欲しかったけど…でも、私には似合わない。あっても邪魔なだけだよ。」
「んなことねぇって。髪が短すぎるだけで、伸ばしたら絶対似合うと思うぜ。伸ばすんだろ、髪」
はっきり言って、今の結城は彩雲国の女性として異常だ。
それ程に髪が短い。
男の俺よりも短いのだから。
結城は彩雲国で生きていくと決めた。
結城のいた世界ではなく。
だったら、髪を伸ばすはずだ。
この国で生きるために。
この国で認められるために。
「そしたら、つけてくれればいいさ」
俺の隣で。
そして、俺に微笑みかけてくれたらいいと思う。
「…明日、何食べたい?」
素直じゃない君の、精一杯の感謝の気持ち。
「最近冷えてきたしなぁ…温かいのが食いたい。できれば肉」
後ろを向いて耳を赤くしている結城をそっと抱きしめる。
いつもならここで張り手の一つや二つがとんでくるところだが、今日は大人しく俺に抱き締められてくれるらしい。
「じゃぁ、明日はしゃぶしゃぶね」
果たしてしゃぶしゃぶとは一体何なのか。
どんな物か想像がつかない。
結城の国の料理を食べるのが密かな楽しみになりつつある。
「おう。楽しみにしてる」
なぁ、気付いてる?
髪飾りに込めた俺の気持ち。
葵の花言葉は、「君ありて幸福」
だから、ずっと一緒に―――
<完>
一言
駄作です。
リクエストが「もう一つ」のヒロインでお買い物ネタ、だったんですけど…
…お買い物?
買い物してないじゃないですか!?
しかも「もう一つ」のヒロインということでその設定を活用しまくりです。
こんなリクエストに沿えているかどうかもわからないような小説ですが、貰ってやって頂ければ幸いです。
森川様、本当にありがとうございました。
snow*flake
感謝の気持ち
ありがとうございました!河西様!
駄文だなんてそんなことありません!素敵です。
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