悪夢の夜
「ん・・・・・ぁ、や・・・」
ある日の邵可邸のこと。
皆が眠り、静まり返った夜中。
静蘭はふと目を覚まし居間に向かおうと、紫炎の室を通り過ぎようとしていた時のことだった。
微かだったが紫炎の部屋から声がしたのを聞き逃さず、静蘭は立ち止まる。
静蘭はなるべく響かないように、戸をノックし、小さく声をかけた。
「紫炎様? どうかなさったのですか?」
静蘭が声をかけても、一向に返事はなく、布団の中をもぞもぞと動いているように感じられた。
静蘭は返事がないのに不審に思い、静かに戸を開けた。
中も真っ暗で目が慣れてきてやっと、紫炎は寝台の上にいることが分かった。
そう言っても静蘭だから目が慣れるまでそんなに掛からなかった。
少しずつ紫炎に近づくと、紫炎は何かにうなされているようだった。
静蘭はそっと寝台に座り、紫炎の前髪を掻き分ける。
「ん・・・?」
自分の額に違和感を感じたからなのか、紫炎はゆっくり目を開けた。
「せ、いら・・・!?」
覗き込む静蘭の姿に驚いて声をあげてしまう瞬間、その手で口を塞がれた。
静蘭は人差し指を口に付け、静かにするよう促すと紫炎の口から手を放した。
「静蘭さん・・・? な、何でここに・・・」
「貴女がうなされていたからです。それと今もですが体、震えています」
「え、あ・・・」
確かに夢を見ていた。
とても最近の出来事なのに、とても遠いような気がしてくる……「彼」との過去。
それと同時に襲ってくる寒さ。
もう夏も終わり、肌寒さが身に凍みてくる最近。
「そんなに声、大きかったですか? えっと・・・・・起こしたならすみません、静蘭さん」
「いいえ」
「・・・え? あ、ええ!? せ、静蘭さん!?」
布団を握り締めていると、いきなり静蘭が寝台に横たわり、布団に入ってきたのだ。
その素早さと行動に紫炎は驚き、つい寝台の奥に移動してしまった。
そのため静蘭は簡単に布団に入ることができた。
(絶対・・・図ってる・・・この人)
ボー然としながら、そんなことを溜息を吐きながら思ってはみる。
だが紫炎には、静蘭のこの行動の意図が全く分からなかった。
「わっ」
溜息を吐いた直後、紫炎は静蘭に抱き寄せられた。
密着状態の状況に、紫炎はパニクっていた。
(え、ええ!? え、あ・・・ちょっ! な、何!?)
考えようとすればするほど、紫炎の思考は停止していく。
(何で静蘭さんに抱きしめ・・・きゃ〜! 何て恥ずかしいことを考えてるの〜〜)となってしまうため、考えるまで至らないのである。
その様子に、静蘭の顔は紫炎の上にあるため見えないが多分、笑った。
それがからかっている笑いだと気付いた紫炎は早急にこの腕から逃れようとするが、逃れられない。
「う〜〜」
必死に静蘭の胸板を押し続ける紫炎に、静蘭は紫炎を抱きしめている背中に回していた手で紫炎の服の紐を解いた。
「え!?」
それにびくっと反応し、紫炎は今度はその手を退けようと奮闘した。
だがその抵抗も無駄に終わり、徐々に静蘭の手が紫炎の背中を這った。
「せ・・・やめっ」
静蘭は先ほど空いた紫炎との距離を埋めると、紫炎の体重が少しかかっていたもう片方の手も背中を撫でるように触れた。
「せ、せいらっ・・・ひゃ!」
抗議の声を遮るように耳を噛み、息を吹きかけた。
「あ・・・静蘭さ・・・ぁ」
ただ触れられているだけなのに、紫炎の口からは甘い声が漏れる。
静蘭は片方の手で紫炎を更に抱き寄せ、もう片方の手で紫炎の頬を撫でた。
そして意地悪に笑って紫炎の目を見て囁いた。
「・・・感度がいいですね」
「なっ・・・!」
その囁きに紫炎は更に顔を真っ赤にさせ、静蘭から目を反らした。
静蘭はくすっと笑うと、紫炎に触れるのを再開した。
「あ・・・やめっ」
静蘭の行動は先ほどよりエスカレートしていく。
背中を撫でる仕草も何だか電気が走るように、甘美になっていく。
ただ触れられているだけなのに、紫炎はぴくっと反応し続けた。
(・・・体が、熱い・・・)
先ほどの寒さなどとっくに無くなっており、紫炎は心臓が脈打つのを感じてた。
その時、静蘭は突如紫炎に触れるのをやめた。
紫炎が顔をあげ、静蘭を見ると静蘭は微笑んでいた。
「・・・寒いですか?」
「え?」
ふいに問われ、紫炎は驚きの目を隠せなかった。
「まだ、寒いですか?」
「え、あ・・・寒くないですけど・・・?」
よく分からずにそう答えると静蘭は微笑み、紫炎の寝台からそっと離れた。
そこではた、と気付く。
(まさか・・・・・寒いのをなくすためにしていたの?)
そんな考えを頭で巡らせ、紫炎は呆れて溜息を吐いた。
そんな紫炎を見ていた静蘭はふっと小さく笑うと紫炎に掛布をそっと掛けてやる。
「紫炎様、またうなされて眠れなかったり寒いのであれば、私に言ってくださればいいんですよ?」
「絶対っ言いません!!」
暗闇でも、耳まで赤い紫炎が分かる。
そのまま紫炎は布団に潜り込み、熱い体も頬も冷ますために手で仰いでいた。
静蘭はそっと室を出て、呟いた。
(彼の夢を見ないようにするのはさすがに難しいですが、これで少しは震えることのない夜になったのなら、それでいい・・・)
静蘭は最後に紫炎の室を振り返り、その場を後にした。
Fin.
後書き
すみませんすみませんすみませんっ!!
思いついたまま書くと、こんなのが出来てしまいました!!
こんなのでよければお持ち帰りください!
森川沙耶様、リクエスト本当にありがとうございます!!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
慈月亜紀
感謝の気持ち
キリ番を踏ませて頂き、連載夢主で書いて頂きましたv
もう読んでみてドキドキさせて頂きました。
もう本当にありがとうございました!
森川沙耶
-9-
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