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SIDE:乾
ピンポーン
何度となく聞いたことのある音が、我が家に響き渡る。
母親がそれに応え、玄関へバタバタと走って来る確率は97%だ。……そんなことを考えながら、机に向かっていた日曜日の午後。
「何か甘い物でも食べたいな」
そう思ったのは、ずっと頭を使っていたからだろう。
「貞くーん!貞くんにお客様よ」
ドア越しに俺を呼ぶ母親の声。俺を誰かが訪ねてくる予定もなければ連絡もなかったはずだがと、静かに席を立ち、部屋のドアへと近づくと、部屋の外から母親がドアを先に開けた。
「随分と格好良くなっちゃって、月日が経つのは早いのね。お母さんビックリだわ。しかも、可愛い彼女まで一緒で!幼なじみとして、貞くんも身長ばっかり伸ばしている場合じゃないわよ」
「はぁ?」
「お茶でも用意するわね」
ドアを開けたと同時にそう捲し立てた母親は、俺の肩をポンポンっと叩いてからリビングへと消えた。
その母親の言葉の意図していることが分からずに、母親の後ろ姿をぼんやりと見ていた時だ。全ての謎が解けたのは。
「お邪魔するぞ、貞くん」
『蓮二くんの可愛い彼女って言われちゃったぜ、貞くん!ウヘヘヘへ……』
「な、何しに来たんだ、お前ら!」
左手にはケーキの箱を持ち、右手で華の頭を撫でている蓮二。
そして、頬をピンク色にして、デレデレしながら俺を激しく叩いている華。
「近くを通ったので、ついでにな」
『ついでにケーキを買って来たから食べようよ〜、貞くん!』
「“ついで”のわりには、用意周到じゃないか。ていうか、貞くんって言うな!」
『え〜……』
「しかし、相変わらず散らかった部屋だな。貞くん」
『貞くん、汚いよ』
「こら!勝手に部屋に入るなよ!」
そんな俺の叫びなど聞くはずもない華と、華の話以外は聞くつもりがない蓮二は、ベッドの縁に腰を下ろした。
『足の踏み場がないのだ。早急に座る場所を確保してくれ、貞くん』
「ケーキを食べるテーブルも用意してくれ、貞くん」
「あ〜〜〜、ムカつく!1+1が10くらいになってやがる!」
それから2人は、さらにマイペースに自分たちの話を始めた。和実から聞いてはいたが、調子に乗ると心底迷惑な組み合わせだな……。
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