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いきなり訪問して来た2人は、俺が座る場所を確保すると、絵本を広げ、部屋の主である俺を無視し続けながら会話をしていた。
はっきりとしたことは分からないけれど、きっと絵本の内容について、蓮二が華の意見を聞きたかったんだろう。……そのわりには、妙にイチャイチャしていたけどね。
「ところで、蓮二」
「何だ」
「どこかで手塚に会ったのか?」
2人の会話の中で一番気になったのは、「手塚のくしゃみ」以上に邪魔だと俺が言われたことだ。それは蓮二たちが、どこかで手塚に会った証拠だろう。
俺は華の感想よりも、そっちで何か面白いことがあったのではないかと気になっている。
「ああ、図書館でバッタリな」
「華と喧嘩にならなかったかい?」
「出会い頭に小言とくしゃみの連続だったな、華」
『うむ』
「まったく……。顔を合わせるとすぐに喧嘩するのは止めろよな」
『私とクニたんなりのコミュニケーションさ。ぶつかり合って、友情を高めるのさ』
コミュニケーションだと言ったわりには、もの凄く不機嫌な表情を浮かべ、フォークで俺を指しながらそう言った華。
きっと、相当に迷惑なケンカをしたに違いない。
「貞治。俺もお前に質問がある」
「本当はその質問をするために家に来たんじゃないのか?」
「いや、半分半分と言ったところか」
「残りの半分は何だよ」
「ただの行き当たりばったりだ。今日のコンセプトは“ちい散歩”だからな」
「“ちい散歩”の途中で、幼なじみの家には寄らないだろう……」
「とりあえず、お前に質問している間、華にアルバムでも見せてやってくれないだろうか」
「……了解した」
「フッ……。察しが良くて助かるぞ、博士」
蓮二が俺のことを“博士”と呼ぶと、離れていた距離や歳月が一気に縮まるような感覚に陥る。友達とはそういうものなんだろう……などと思っていると、俺の脇腹を突っつく気配あり。
『貞く〜〜ん、貞く〜〜ん』
「ちょっと言われ慣れてきたぞ、その呼び方。どうしたんだ、華?」
『データマンが2人で抽象的な会話を続けていたら、一般人はつまらんのだ』
蓮二が華にアルバムを見せてやってくれと言ったのは、俺と話したい内容が華にあまり聞かれたくないからだろう。察しが良いと褒められた後だ、これは話を逸らさねば。
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