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「別に面白い話でもないよ。ほらほら、アルバムを見せてやろう。蓮二が写っている頃が良いか?それとも、海堂や桃が1年生の時のが良いか?お前がすっごく気になっている、サングラスの元部長の写真もあるぞ」
『え〜〜!話を逸らされたみたいで、余計に気になるじゃ〜ん!ずる〜い、ずる〜い!』
こういう時に限って妙に勘が働く(野生の勘か、女の勘なのか)華は、口を尖らせて“ずる〜い”を連呼しているのだが、蓮二はそれを見て微笑んでいるだけで、宥めようとはしない。
「俺に嫉妬するくらいなら、家に遊びに来ないで2人でデートをしていれば良かっただろうに」
『し、嫉妬じゃないわ、ボケッ!』
「ほう、嫉妬……」
『ギャ〜〜!蓮二くんが、またメモを取り出した!今はどこから?今はどこから紙を取り出したんですか?』
「貞治の部屋の壁に貼ってあったメモを拝借した」
「同じ人種として気持ちは分からないでもないけど、俺のメモの上に上書きは止めてくれ」
上書きされてしまったその紙を覗き込むと、蓮二の綺麗な文字で[嫉妬 ケース30 華の場合その2]と書かれていた。
「何を調べているんだい、蓮二」
「嫉妬についての事例を集めているところだ」
「へぇ……」
「どうだ、興味があるだろう貞治」
「うんうん、俺も調べてみようかなぁ。幸いにも、周りに面白すぎる研究材料が揃っているからな」
『乾のストーカー魂に火が付いた!』
上手く話を逸らせたところで、すかさずアルバムを華の前に出す。華はそれを手に取ると俺のベッドの上に移動し、今度は“可愛い!”を連呼しながらページを捲り始めた。
単純というか、素直というか……。
「それで、蓮二。質問って?」
「朝、和実から聞き出せなかったのだが……」
「和実にも会ったのか?」
「ああ。待ち合わせ時間に激しくフライングしたおかげで、華の準備が終わるまで、2人のマンションで待機していたんだ」
「なるほど」
『蓮二くんってば、待ち合わせ時間の1時間以上前に来たんだよ!』
「下心を顔に貼り付けている勢いのフライングだなぁ」
「いや。下心を持ち合わせていなかったおかげで、良い結果が導き出せたという」
部屋の中央で正座していた蓮二が、母親が出してくれたお茶を手にしたまま、何かを思い出すように二度ほど頷いてそう答えた。
「良い結果というのが気になるけど……。それで質問は?」
「“妹萌え”とはどういう類の言葉だ?」
「……それは、和実に聞いてくれ」
「和実には、精市に聞いてめちゃくちゃ怒られろと言われたんだ」
「和実の言うとおりだよ。というか、朝っぱらから何の話をしていたんだ」
「ふむ……。博士が教えてくれないとなると、柳生あたりを経由して精市に尋ねるしかないな」
『れ、蓮二くん!それは比呂士さんじゃなくて、弦一郎あたりでお願いします!』
「ああ、何となく了解した。何となくな」
『良かった〜〜。比呂士さんの命をギリギリのところで救った気分なのだ!』
「(騙されるな、華!確実に了解していない口振りだぞ!)」
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