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「では、そろそろお暇するとしよう」
そう言って、蓮二が腰をあげたのは1時間ほど経ってからのことだった。
調べ物をしている時にはちょいど良い休憩時間だったと思えるのは、蓮二なりに気を遣ってのことだろう。
『じゃ〜ね、乾!貞くんママによろしく言っておいてね!』
「はいはい」
「俺は近いうちに、改めてお邪魔させてもらうかもしれない」
「そうだな、色々と積もる話もあるし……」
『え〜〜!それってば、今日の私が邪魔者だったみたいじゃん!』
「そんなこと、言ってないだろー」
『ぶ〜ぶ〜』
もちろん邪魔ではないけれど、結局、蓮二が本当に質問をしたかったことが聞けなかったから、俺としてはそれが気になるだけ。
「良かったなぁ、蓮二。また嫉妬のデータが採れて」
『な、何が嫉妬じゃ!このエロ縁眼鏡が!』
「今の会話のどのあたりに、エロ的な要素があったんだよ」
「ふむ……」
「蓮二?」
『蓮二くん?』
俺と華のやり取りを微笑んで見ていた蓮二だったが、急に何かを思い出したように言葉を発した。俺たちはその言葉のした方へと顔を向けたが、蓮二の名の後に疑問符を付け足したのは、ちょっとおかしな光景を目にしたからだ。
「何をしているんだい、蓮二?」
『蓮二くん……ま、まさか!』
そう言った華が一歩、また一歩と後退を始め、蓮二が(妖しげな)笑顔で一歩、また一歩と華との距離を詰め始めた。
――なぜか両手を広げて。
「嫉妬された場合、嫉妬した相手を抱き締めても良い権利が発動するんだ。貞治、これはメモしておくように」
『しないっ、しないってば!つーか、嫉妬してません!』
「どこで定めた権利だよ、それは一体」
「強いて言えば、立海だな」
「そういうバカップルな行動は、乾家(ウチ)の前でやらないでくれ……」
上を見上げれば、部屋の窓から俺たちを見下ろしていた母親と目が合った。
これからしばらくは、彼女を作れだとか彼女を連れて来いだとかしつこく言われるんだろうなぁ。……迷惑な置き土産をしていきやがって。
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