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ガチャ!
ドアを開けたのは侑士くんだ。華の第一声はどんな感じかしら?とワクワクしながら、侑士くんの後ろからリビングを覗き込もうとした……ら、なぜか侑士くんが部屋のドアを閉めたのだ。
『ちょっと!何で閉めるのよ!』
「いやいやいや……。アカン、あれはアカンやろ」
『どうしたの?まさか、華が裸エプロンで……』
「どうなんやろ……。ある意味、裸エプロンの方がマシかもしれん」
『はぁ?アホなことを言ってないで、入るわよ!』
「あ、和実ちゃん!覚悟して開けぇや!」
ガチャ!
『華、ただい……』
『お帰り〜!意外と遅かったねぇ』
「そのおかげで、できたての夕飯が食べられるというわけだが」
『は!まさか、計算じゃ……』
「ふむ、和実なら考えられるな。ところで華、醤油の分量は?」
『少々です』
「できれば、数値で言って欲しい。数値で言ってくれれば、俺は確実にその量の醤油を入れるぞ」
『料理は勘ですよ〜、蓮二くん』
「勘でやると、貞治の汁のようになりそうではないか?」
『貞治の汁は飲みませんが、蓮二くんの作ったものなら何でも食べます〜』
「俺は華が作ってくれたものなら、何でも好物にしてみせるぞ」
――こんな光景、朝も見た。
朝と違うのは、お揃いのエプロンをした2人が仲良くキッチンに立っていることだ。
『こら〜、柳蓮二!どこまで入り込んでくるつもりだ!』
「どこまでも」
『む、むかつく……。私のエプロンが妙に似合ってて、その異常な可愛さがむかつく!計量スプーンを持っている姿も可愛くてむかつく!』
「怒ってんの、そこなんや……」
『あ!忍足くんだ!今日も破廉恥でこんばんは!』
「忍足……?ほう、男連れで帰宅か?」
『妙な言い方しないで!』
「今朝のお詫びのつもりで、和実のために夕飯を作っているというのに……。酷い話だな、華」
『なのだ』
向かい合った2人は、なぜか“うんうん”と頷きあっている。
『その姿が、新婚さんみたいでむかつくのよ〜〜〜!イチャイチャするな〜〜!華はまだ、誰にも嫁にやらないんだからぁ!』
『な、な、ななな何を言ってんだよ、コノヤロー!』
「ほう、和実。それは嫉妬か?」
『嫉妬よ!嫉妬!』
「ということはだ……。今度は和実を抱きしめても良い権利が発生したということだな」
『うん、抱きしめても良いよ。ほらこい、柳蓮二!』
『ギャ〜〜!何を言ってんですか、蓮二くん!和実も頷くなよ!』
“何て間の悪い時に来てもうたんや……”という忍足くんの呟きがかき消されるほどの大騒ぎはしばらく続き、私と蓮二くんの(無駄に)熱い戦いは終わりが見えなくなって来たのでした。
→あとがき
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