03
「……というわけで、今に至る」
『完璧な経過説明並びに心理状況の分析までを、愛をあちこちに散りばめてながらありがとうございます、参謀。だけど、解せないことが一つあります』
まさに招かざる客である俺を、すんなりと部屋へ招き入れた和実。
彼女の部屋に置かれている小さなテーブルに向かい合うようにして、俺は腰を降ろした。
「言ってみなさい」
『態度でかっ!』
いつも穏やかな和実をわざと怒らせるのは、貴重な表情を拝めるからだ。それはもちろん、その表情が魅力的だということを含んでいる。
『私、30分ほど前に蓮二くんにメールしたでしょ?』
「ああ。それについては、きちんと返信をしたはずだが」
『うん、ちゃんと返信はあった。でもそれって、隣の部屋からしれっとメールを返信したってこと?』
「しれっとというよりも、何食わぬ顔で意気揚々と返信をした」
『……』
和実がガッカリしたように肩を落としたその隙に、俺はざっと部屋を見回す。
小物の一つ一つが和実らしい物だなと思い、何かの香水のような甘い香りがするなと思い、そういえば女子の部屋に入ったのは初めてかもしれないなどと、一瞬にして様々なことに思いを巡らせた俺。
『こらこらこら〜!キョロキョロしないの!』
「女子の部屋に入ったのが初めてなのでな、何となく落ち着かないんだ。断っておくが、姉や親戚は除くぞ」
『ふ〜ん。ごめんね、こんな部屋がお初で』
「和実の部屋がいわゆる“女子の部屋”の基準になるわけだから、謝る必要があるとするなら、俺が今後訪れる可能性のある部屋の主に謝るべきだな」
『……どういうこと?』
「きちんと整理されたこの部屋を基準にすると、ハードルが高くならないだろうか」
『散らかっているわけじゃないけど、そんなに綺麗でもないわよ』
「ほう。それは一度、とことん片付けした後の部屋を見てみたいものだ」
『ふふ。妙なことに興味を持つのね、蓮二くん』
「それが俺の性分だからな。お返しに、今度我が家に招待しようか?」
そう言ったのは、もちろん社交辞令ではない。
『え、本当に?』
「ああ。ちなみに、俺の部屋に女子を入れるのは初めてだぞ。あまり面白い部屋ではないだろうが」
『キャ〜〜、それは嬉しいかも!』
「俺の部屋にあるのは本ぐらいだが、読みたい本があれば持って帰っても良い。だが、アルバムなら和実も少しは楽しめるかもしれないな」
『見たい見たい!正真正銘のオカッパ蓮二くんから、最近の麗しいお姿まで舐め回すように見たい!精市くんとかも写っているんでしょ?』
返事の変わりに俺は二度、首を縦に振った。
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