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「今の場合、一人で放っておかれた華が寂しさのあまりに、放置していた俺たちに怒りを覚えた……という感じの解釈で構わないだろうか」
『そーです!』
『違いますー』
「華。悪いが今は大事なデータを採っているところだから、少し落ち着いてくれ。そして俺は、今は何よりも和実が俺の導き出した結果を否定した理由を聞きたい」
『モ、モゴモゴ!』
「息苦しいかもしれないが、しばしの我慢だ」
『“華<データ”な時の蓮二くんって、妙に活き活きとしていて私は好きだわ』
それから和実は、俺の意向に添って簡潔に説明をしてくれた(華は和実が抑えつけたままだ)。
「華は俺と一緒にいた和実に対して嫉妬し、“ずるい!”と訴えて来たということか。なるほど」
『うんうん、そういうこと。ね、可愛いでしょう?』
『モゴゴ……モゴ……』
「ということはだ、和実。お前が嫉妬した華を可愛らしく思って抱き締めたように、嫉妬の対象となった俺が華を抱き締めても良い権利が発生したというわけか」
『モゴー!モゴー!』
『どうしたらそういう解釈になるのよ!今日はいつになくやりたい放題だな、柳蓮二コノヤロー!』
俺の発言に怒った和実が拳を握ったので、自分の携帯にメモしてあるデータを披露することにした。
「その根拠を立証をしよう。まず[嫉妬 ケース1 幸村精市の場合その10]によると……」
『そのデータの中に弦一郎のがあるのなら、売って欲しいくらい興味があるんですけど』
『(その10って!精市くんのサンプリングだけで、その10って!)』
「これは以前、精市の家に遊びに行った時のことだ。精市の部屋で談笑をしていると、精市の妹がやって来てな」
『ユッキーの妹?』
『精市くんの妹ってだけで、美人になるのが容易に想像できるわ〜』
『ね〜』
「“お友達といつまで遊んでいるの?私もお兄ちゃんと遊びたいのに〜!”と言い出したんだ。まぁ、これも一つの嫉妬だな」
『妹ちゃん、カワユス!!激しくカワユス!』
『妹萌え気質がある精市くんには、たまらないシチュエーションね……』
「妹萌え?」
『はいはい……。そんな言葉に引っかからないで、その先を話してよ』
「ああ。それを聞いた精市が、妹の呼吸が危うい状態になるほど抱き締めてな。俺をすぐさま家から放り出したという事例があったんだ」
『薄々気が付いていたんだけど、ユッキーの愛情ってちょっと歪んでるよね』
『精市くんが、蓮二くんを家から放り出したことが容易に想像できて怖いんですけど』
華と和実は精市の妹について何やら盛り上がっていたが、そこまで説明をし終えた俺は、静かに携帯電話を閉じ、腕を大きく広げる。
『ん?』
『何してんのよ、柳蓮二』
「華に対して、抱き締めても良い権利を行使しようかと思っているんだが」
『キャーっ、破廉恥破廉恥!でもせっかくなので、その胸に飛び込ませて下さい!』
『もう朝ごはんはいいから、とっとと出ていけバカップル!』
「その前に、“妹萌え”というのはどういった意味の言葉なのか説明を求める」
『精市くんに直接聞いて、めちゃくちゃ怒られろ〜〜!!』
調子に乗って和実を怒らせ過ぎた結果、俺たちはすぐに家を追い出された。
“妹萌え”か……気になるな。
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