08
『見つけたぞ、手塚国光!柳蓮二副総監、被疑者を確保しました!』
「何をしに来た、華……。警察ごっこは外でやれ。しかも声が大きい。そして人に向かって指を差すなと何度も言っているだろう」
『んも〜〜!警察で教官をしているお祖父ちゃまの孫のクセに、ノリが悪い!』
「休日の図書館に、お前が出現するなんて気持ちが悪いと思って逃げたんだ。そんな俺の気持ちを察しろ。それが友情だ」
『山登りの最中にクマと遭遇したと思って、全力でぶつかって来い。それが友情だ』
「今さら、何でお前とぶつかり合って友情を高める必要があるんだ……」
思わぬ所で国光を見つけてテンションが上がる一方の私とは反比例するように、分厚い本を閉じ、静かに棚へと戻した国光は、いつものように落ち着き払った声で言葉を続けた。
「柳と仲が良いことをわざわざアピールしに来たのか?それとも、俺の教科書にパラパラ漫画を書いた弁明を柳にさせるつもりか?」
『まだそのことを怒ってんのかよ〜、器の小さい男だな。しかも、何で蓮二くんを絡めるんですか!蓮二くんは関係ないでしょ!』
「それなら、関係のない人間を無理矢理に引っ張ってくるな」
『せっかく一緒にいるんだから、一緒に楽しみたいじゃないか!国光のバカバ〜カ!』
「ああ言えば、こう言うで……」
『キャ〜!クニたん、殴らないでぇ!』
「クニたんと呼ぶなと……ハ、ハックション!」
『ギャ〜〜!ツバ、飛んだ!』
グーで殴りますよ!と言わんばかりに拳を握って近付いて来た国光から逃げるために、頭を隠しながら後退しよう……として、蓮二くんの手を(ガッチリと)握っていたことを今更ながらに思い出す私。
急に恥ずかしくなって、恐る恐る蓮二くんの顔を見上げると、図書館の窓から射し込む光が今日一番のお美しい笑顔を浮かび上がらせていた。
『蓮二くん?どうしちゃったんですか、その悩殺スマイルは。写メって良いですか?』
「非常に貴重な瞬間に立ち会ったような気がしてな。なるほどなるほど……」
『その笑顔の裏側で、恋人つなぎをしていたことを怒っていらっしゃるとか?そういえば、いつのまに手を繋いだんだろ、私……。蓮二くんと手を繋げて、結果オーライ的な感じは否めないけれど』
「手塚を追いかけ出した直後から繋いでいたぞ。ついでに言うと、俺は今日一日このままでも構わないと思っている」
『な、何を言ってるんですか、蓮二くん!ウヘヘヘヘ……』
「気持ちの悪い笑い方……ハ……ハッ、ハックション!」
『こら国光!今のタイミングでくしゃみはないでしょー。だから空気が読めないって言われるんだよ!』
「お前が図書館に入って来てから、くしゃみが止まら……クシュンッ!……止まらないんだ」
『今度は花粉扱いですか』
「図書館から出て行け、アレルゲン」
『む〜〜か〜〜つ〜〜く〜〜!蓮二くん〜!今日の眼鏡、マキシマムむかつきます!』
「だから放っておけと言ったんだ。俺が手塚を邪魔だと思った真意は別のところにあるので、お前から手塚に向かって“むかつく”という言葉を引き出せただけでも結果オーライと言ったところだがな」
「(柳に、さりげなく且つ思い切り“邪魔”だと言われたような気がするな……)」
『というか、蓮二くん。そのメモはどこから取り出したんですか?』
「シャツの衿の内側だ」
メモに何やらスラスラと書き出した蓮二くんの手元を覗くと、[嫉妬 ケース31 手塚国光の場合]と書き記していた。
――国光から、そんなデータは引き出せないと思うけど……。
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