Kids☆Panic
ある日の教室。なんら変わらないB組。その風景は、いつもと同じだった。
机の上に色々な実験道具を出し、マッドサイエンティストの野乃子は、怪しげな液体を持ち調合していた。
その後方では、これまたいつものように蜜柑と棗が口論し、なんらかの拍子で蜜柑がつまずき、野乃子にぶつかった。
「キャッ…」
「うぎゃっ?」
「「「「あっ………」」」」
持っていた実験中のビーカーが空を舞い、それはゆっくりと蜜柑の頭に被った。顔にかかった液を蜜柑がペロリと舐めたとき
「あっ…蜜柑ちゃ……」
野乃子が止めるにも間に合わず、ボンッという音とともに蜜柑がいた場所に、ぶかぶかの制服を纏った小さな女の子がいた。
「…ケホッ…ケホッ…ぅう〜ん?…お姉ちゃんたち…だぁれ?」
「「「「「……………………はっ?」」」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「はいはーい、それじゃあ、誰が蜜柑ちゃんを世話するか決めようか?」
コトの成り行きを知り、鳴海がパンパンと手を叩くが、不意に服がひっぱられた。下を見ると、不安なのかちび蜜柑が鳴海のズボンのスソを握り締めていた。
「…う…ウチ…どうなるんですか…?」
眉がハの字になり、瞳を潤ますその姿にさすがの鳴海も胸が高鳴り、ひょいっと抱っこをすると
「じゃ、ボクってコトで…」
しゅたっと手をあげ出て行こうとしたが
「「「…待ちやがれ、変態教師」」」
見事、棗、流架、蛍の声が重なる。
「え〜〜やっぱり、こういう時は大人のボクが「黙れ、変態」」
ちび蜜柑の頬をすりすりしながら言う鳴海に対し、蛍の容赦ない言葉が飛び、棗と流架が一気に鳴海の腕からちび蜜柑をぶん取った。当のちび蜜柑は分からないらしいが、キャッキャッと笑っていた。
「お兄ちゃんたちは誰なん?」
きょとんとしながらも大きな茶金の瞳で見上げるちび蜜柑は、一層可愛く棗ですらやや頬を赤らめた。
「あのおじちゃん、大丈夫なん?」
流架に抱えられたまま、首をかしげ鳴海を指さしたが
「蜜柑ちゃーんιボクはまだお兄さ……ぐはっ!?な、棗くん?」
「うるせぇよ」
とゲシゲシと棗に踏まれた。
やはりここは、親友である蛍に任せるのが一番となり、ちび蜜柑は蛍と一緒に行動していたが、棗が寮の部屋に戻ろうとした時、くいっと制服のスソを掴まれた。
見るとちびになった蜜柑がいて、棗は驚いた。
「……なっ…!?」
「…ぐすっ…お兄ちゃん…」
「水玉…?なんでっ…?」
小さな手で目を擦る蜜柑を見、棗はちび蜜柑を抱っこすると蛍の部屋へと向かった。
(大方、迷子になったか、はぐれたんだろう)
そんなコトを考え『HOTARU IMAI』という部屋をノックすると、機嫌の悪そうな蛍が顔を出した。
「おい…こいつ忘れてってるぜ」
ひょいと蜜柑を掴み、蛍の前に出すが
「………アンタが面倒みてよ。パートナーでしょ」
そこには、怒りと疲れが混じったのか有無を言わさないオーラが漂っていた。
「お、おいっ!?」
「頼んだわよ、棗」
そういうと拒絶するかのように、バタンとドアが閉められた。
抱える蜜柑を見ると、不安そうに見上げてきた。どうするかと思いつつ、とりあえずは部屋に連れ帰った。
「ほあぁぁぁ〜ここがお兄ちゃんのお部屋?」
部屋の広さにびっくりなのか嬉しいのか、ちび蜜柑は部屋を駆けていたが、ぐいっと棗に止められた。
「おい、今井となんかあったのか?」
その言い方が怖いのか、ちび蜜柑はびくりっとした。棗は、これはいつもの水玉じゃないと思い直し、やや柔らかめに聞き直すと、ぽつりぽつり話しはじめた。
「……あんな、お姉ちゃんのお部屋にいったらな…面白いものがい――っぱいあったん!!でな…写真がいっぱいあったんやけど……ジュース零しちゃったんよ…」
身体を使い、表現していたちび蜜柑だったが、最後は悲しそうにしょんぼりしていた。たぶん、それだけではないのだろう。と棗は思った。
この部屋に入った時の蜜柑の様子を見れば、たぶん今井の部屋でも暴れまわり、しまいには追い出された、というコトだ。
はぁ…とため息を吐くもこのちび蜜柑は可愛らしく、さすがの棗は追い出せないと思った。まして、流架に相談してしまうのもなんだかもったいなく、一人で世話しようと思った。
『お兄ちゃん…』
その単語が、自分を優しくさせているような気がしながら…。
あの妹を思い出しつついた。
キャッキャッと笑い、走り回り、遊ぶちび蜜柑の相手をしていると楽しくて、気付けば9時を回っていた。
バスタブにお湯を張り、ちび蜜柑は嬉しそうにお風呂へと走っていく。
「一人で入れるだろ?」
タオルを置きながらちび蜜柑に聞くが
「えーー、お兄ちゃんも一緒に入ろうや!!」
「お、おいっ!!何言って……」
とぐいぐい服をひっぱられ、ついに折れてしまった棗だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ちゃぷん――
大きいバスタブに棗はちび蜜柑と向かい合い入っていた。タオルでぶくっと泡を作り遊ぶ姿に、棗は苦笑していた。
時折、指でお湯を弾くとぶーーっと頬を膨らませていながも楽しく入っていたが、やはり
(……早く…元の水玉に戻らねぇのかな…)
そんなコトを考えていた。クラスメートの女子は、慌てて、すぐに解毒剤を作ると言っていた。早くても明日以降だろう…
それまで、あの喧しく、おせっかいな姿や声が聞けないと思うと淋しく感じてしまう。
目の前で遊ぶ蜜柑がいても、同じ人だとしても棗にとってはそれは別人だった。
ぴしゃんっとまた顔にお湯をかけると
「何するんやっ!!ひどいぃぃ〜」
と可愛い声を出していた。
「………早く戻れよ…じゃないと…調子狂う…」
そう呟き、ちび蜜柑を抱きしめた。抱きしめられたのが嬉しいのか、また腕の中でジタバタしていた。
が次の瞬間、だんだんと蜜柑が大きくなり、振り向いた顔はさっきまで見ていた幼子の顔ではなく、よく見知った顔だった。
「………………」
「……な、なっ…棗っ!?」
元の姿に戻った蜜柑だったが、驚きのあまり立ち上がり、そして
「…………あっ…」
「…へっ……〜〜〜〜〜ひぎゃ――――っっ!!!?!?」
一瞬の出来事にワケが分からず、耳を突き抜けるような悲鳴とともにバシャバシャと蜜柑がお風呂場から出ていき、バタバタバターンっ!!っと走る足音とドアの閉まる音がした。
当の棗は…ぶくぶくと顔を湯に沈め真っ赤になっていた。
(……不意打ちだ…バカやろう…)
バスタブから出るに出られなくなった棗でした。
(※深読みして下さい)
END
あとがき
なんだ?この終わり方は…
ってか、なにこの話?
はい、無駄に長い話になってしまいました。
なんでしょうか?
棗蜜柑なんですが…最初は総受けでしたねι
総受けだったら、んもぅ小さい蜜柑を奪い合いなんだろうなぁ〜!!
うわっ☆なんか楽しいかも!!
しかし、なんだか話的に強引でつまらなかったかも…
ごめんなさい。
あ、蜜柑は小さくなってる間は記憶ありませんので…4〜5歳がイメージです。
だから、一緒にお風呂なんです。
最後の棗が何故バスタブから出れなくなったのか…お分りですよね?
不意打ちに蜜柑の裸を見たのですから…
では、読んで下さってありがとうございましたm(__)m
この話はミミさんに捧げます。
返却可ですよ〜リク通りじゃなくてごめんなさーい!!
2005/01/10
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