大事な人だから

Present

その夜はたまたま眠れなくて…たまたま夜の散歩をしようと、外へ出た。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


見つかるとまずいと思って、紺色の服を着て北の森へと歩いていった。そうしたら、人が歩いてくるのを感じサッと隠れて見ていたら……


黒猫の仮面をつけた人がいた。


(……棗…?こんな時間にどこへ…)


そんな風に思いながら、ふとした事を思い出した。



こいつは 闇工作員――
裏の仕事を片付ける――
「黒ネコ」と呼ばれる――


誰かがそんな事をいっていた…


(………棗…)


蜜柑はそう思うと、衝動的に棗が歩いていった方へと走りだした。



はぁっ…はぁっ…と息を切らし正門の前まで来ると、出入りしたのだろうか…門がわずかに開いている。すかさず、するりと飛び出した。
なんとなく勘を頼りに走って来たが、公園まで来て蜜柑は困り果てた。


(……あかん…さすがに分からへん…こんなとき、パーマのアリスや蛍の発明とか役に立つんやろな…)


そんな事を思い、草群の中に身を隠していた。


夜も遅く、多少眠くなってしまいうとうとし始めていたが、ぱちぱちと頬を叩きながら睡魔と戦っていた。と、その時…カチャカチャと嫌な金属音が聞こえてきた。
辺りをキョロキョロ見ると、向こうの茂みに黒いスーツを着た大人が2、3人隠れるように潜んでいた。



(――――っ敵…!?)



思うと同時に何かがそう告げる。と共に車の音が聞こえてきた。


(あの…車を狙ってるんやっ!?)


自分一人では、何も出来ずおろおろとしている間に車は近付き、あっという間に男らは車の前に出ていった。


あっ…!?と思った次の瞬間、銃を構えた男たちを紅い炎が襲った。


―――なつめっ!?


姿が見えなくても分かってしまう。いつもそばにいるのだから


棗の放った炎は銃を暴発させ、その間に車は走り去っていく。棗も煙幕を使い、男たちを追い詰めその間に去ろうとした時、棗の頬を何かがかすった。


「……っく…!?」


仮面を落とし、頬からつぅーっと血が流れだした。それは、見えない風の力でカマイタチらしい。さすがの棗も炎で、防御しようとするが


風は火を煽る


自分の炎に追い詰められる棗の姿をみて、蜜柑は夢中で飛び出した。


「なつめっ!!」

「…なっ!?」



走り寄って来る思いがけない人物に棗は、目を丸くするが蜜柑はお構いなしに叫んだ。


「やめろぉぉぉぉ〜!!」


それまでぐるぐると吹いていた火風が急に止まるが、相手は迷わず蜜柑へとカマイタチを放った。
無効化といえど、不安定な蜜柑のアリスは自分を防御出来ずに


―ザシュッ


足を斬られた。


「…っ痛っ…!?」


蜜柑の足から流れる赤い血をみて、棗の瞳はメラメラと燃え上がると相手に向かって火柱を立てた。


「うわぁっ…」

「くそっ!!撤収だっ!!」


相手が驚き、叫んでいる隙に棗は蜜柑をひょいっと抱えると、恐ろしいまでの脚力で学園の敷地の木まで飛んで来た。



あまりの出来事に蜜柑は唖然とし、抱えられるまま棗の腕の中に身を委ねていたが、木の枝へと下ろされると怒りに満ちた瞳が自分を見ていた。


「…てめぇ、なんであそこにいた」

「えっ…と……その…」


貫くような瞳にドキリっとしながらも蜜柑はぽつぽつと話し始めた。

棗が出ていったのを見かけ、心配で追い掛けてしまった事。
見失ってしまい、公園に潜んでいた事。
棗が危なかったのをみて無我夢中で飛び出した事。


そこまで、話している内に斬られたトコから血が流れたのを思い出した。そっと、棗の頬に触れ


「…………大丈夫なん…?」


心配そうに眺めると、頬に触れていた手に棗の手が重なった。


「…あぁ、平気だ。こんな傷…」


真剣な眼差しを受け、なんとなく照れ臭くなり手を離そうとしたが、そのままギュッと握られていた。


「………てめぇこそ…足…」

「えっ?あっ……」


自分の痛みは忘れていたのか、言われて思い出すとズクズクと痛みがあった。


「ウチも平気やっ!!こんなん舐めとけば治るよって………棗?」


そんな風に言うと、棗は蜜柑の足を上げ傷口をぺろっと舐めあげた。


「っな!?ななな…棗っ!?」

「…舐めとけば治るんだろ」


と悪戯っぽく笑い、またぺろっと舐めあげた。


「じ、自分でやるわい!!棗は自分の傷舐めればいいやろっ!!」

「自分の顔舐められる訳ねーだろ、バーカ。てめぇが治せ、水玉」

「な、なんでウチがっ!?」


真っ赤になる蜜柑をみながら飄々と棗は呟く。


「自分では舐めれねぇんだよ」

「うぅっ……こ、今回だけやからなっ!!」


さっき以上に顔を赤くして、ギュッと目を瞑り顔を棗の頬に近付けた。
ぺろっと傷口を舐めると鉄の味がしたが、次の瞬間顎を掴まれ柔らかいモノが口唇に触れた。


びっくりして、瞳を開けると紅玉の瞳と目が合った。


驚きながらも心地よい口唇を重ね合い、ようやく口唇が離れた時


「……目くらい閉じろ、ガキ」

「なっ!?び、びっくりしたんやないかっ!!」


へらず口を叩かれ、真っ赤になって文句を言いつつも怒りなどなく…



ただ…


お互いに無事でよかった…と


確認するかのように


また、甘い口付けを交わした。




END






あとがき

えーっと…えーっと…
すみません、モナカ様!!
リク内容とかーなーりー違ってしまいました(>_<;)
果てしなく違いますね、しかもなんだか、後半がやたらエロちっくになってしまいました!!
こんなのでよろしければ、相互リンク記念&5000hit祝いとして受け取って下さいm(__)m
もちろん、返却可です。
いらなければ、バシーンと投げ付けて構いませんので…。



さて、自分で書いていながらも話にツッコミ入れてました。
だって…舐めないよ、普通…足なんかをさ…気持ち悪いじゃん(オィ)
すいません、ありえないモノ書いてしまいました。


それでは、この作品は冨村モナカ様へ捧げます。



2005/06/27


-12-

Present-alice- / top