16.5

ONEPIECE

【革命軍襲撃前のほのぼの?】

 マリィがガープと再会を果たし、同じ頃、ルフィとサボがドレスローザにて再会を果たした。コロシアムの景品になっていたメラメラの実は『火拳のエース』の兄弟である革命軍No.2の参謀総長 サボがその実を食べた。兄から兄への能力の継承、ルフィも安心したものだった。
 姉の事には触れられなかったが、長話をしている余裕がなく、なんとなくサボは分かっているような気がしていたルフィは姉のビブルカードの事を忘れていた。
 そんなことは知らないサボは、ドフラミンゴを倒したルフィに会いに来たものの疲れで眠る彼を起こす気にはならず、ルフィの仲間と会話をした後、その場を離れたのだった。ゾロが起きていた仲間に「そういや、ルフィには姉もいるらしいぜ」と話した時に、ロビンはゾロに知っているのかと聞いたのだった。しかし、いるという事しか知らないというゾロに、ルフィの父、ドラゴンとサボが探していたというのを話したのだった。
 一方、ドラゴンの元には父ガープから連絡が入った。

『マリィちゃんに会えたわい』

「……………あ?」

『あ?とはなんじゃ、せっかくマリィちゃんが生きていたことを教えてやっとるのに!』

「マ、マリィは無事だったのか?!」

『あぁ!可愛い女の子を抱いておったぞ!』

「…………………………おんな、のこ……?」

『わしのこと、じいちゃと呼んでくれてのぅ……』

 ドラゴンは電伝虫の向こう、ガープが何を言っているのかが分からなかった。いや、分かりたくはなかった。ウキウキと浮かれたように話す父を殴りたくなる。

「……………それは、マリィが子供を産んでいたということか?」

 マリィがポートガス・D・エースと共にゴア王国を出奔し、海賊になったと聞いた時も呆然としたが、その後、ポートガス・D・エースが白ひげ海賊団に加入したのは知っていたが、マリィには懸賞金はかけられておらず消息不明であった。ガープからの連絡はないので死んではいないと思っていたが、まさかの子供がいたという情報に頭がクラクラしそうになる。
 相手は、やはり火拳のエースなんだろうか……。ぐしゃりと報告書を握り潰してしまった。

『そうなんじゃ……まぁとても可愛くてな、わしの膝に乗って足をパタパタするんじゃが、それがまた可愛くて………天使としか思えんかったわい!!』

「……………そうか」

『なんじゃ、その気のない返事は。あー、そうじゃ、マリィちゃんにおぬしの連絡先を教えといたから、連絡きたらちゃんと返事くらいしてやるんじゃぞ!』

「……………は?」

 聞き返すも通話はいつの間にか切れてしまっていた。
 ドラゴンは冷静になろうと腕を組み、目を瞑る。
 マリィは無事だった。それは良い。
 マリィは子供を生んでいた。何故だ。
 生まれた子は女の子。可愛いだろう。
 天使だという。当たり前に決まってる。
 連絡先を教えた。連絡が来るかもしれない。
 暫くの間、ドラゴンがそわそわしていたのは言うまでもなく、尚且つドレスローザから戻ったサボから腹いっぱいになるまでルフィの話をされた。相槌を始めはしていたが、だんだん口が挟めなくなってしまった。どんだけ好きなのか、と思ってしまった。
 他の幹部たちを労い、コアラには軍隊長たちを呼ぶように頼んだ。サボはメラメラの実の能力を使えるようにと外で鍛錬している。元気でなりよりだ。どうやら眠れるようにもなったと報告もあがっていて、少し安堵した。
 不意にプルプルプルプルと電伝虫が鳴る。誰からだろうと普通に出てしまった。

「私だ」

『……………あ、の…私、マリィです』

「?!マ、マリィなのか……」

『は、はい……あの、おと、ドラゴンさん、ですか?』

 自信が無さそうに訊ねてくる娘に、ドラゴンは咳をひとつした。

「あぁ」

『おじいちゃんから聞いて…その、いきなりすみませんでした』

「……………いや、構わない。その元気でいるのか?」

『は、い。元気です……あの、それで聞きたいことがあって…────』

「────あぁ、そうだ。サボからも聞かされたのだが、ルフィとポートガス・D・エースとは義兄弟だと教えられた」

 彼女が知りたかったのは、参謀総長のサボはルフィとエースの義兄弟なのか、というらしい。ドラゴン自身もまさか十二年前に助けた子が、自分の息子の義兄弟だとは思わなかったから驚いたものだった。

『……良かった、サボ、くん、生きてたんですね』

 電伝虫がぐすっと涙を零れそうになっているのをみて、サボを呼ぼうか?と訊ねれば、大丈夫だと答えられた。

『いえ、お忙しいでしょうから……すみませんでした。あの、サボ、くんに「生きててくれて良かった」と伝えてください。お、お父さんもお身体に気をつけてくださいね』

「あ、あぁ……」

『じゃあ、お時間ありがとうございました』

 ガチャと切れた電伝虫はもう目を閉じている。生まれて始めてこんなに話したのではないか、と死んでいる表情筋がヒクリ、と動いた気がした。
 サボに伝言をと、思ったが、子供のことやどこに暮らしているのかを訊くのを忘れてしまい、無表情に戻り、 机に両肘を立て手を口元にやりながら色々考えていた。
 その様子に戸惑った革命軍幹部はサボを呼び、どうしたのか聞いて欲しいと願った。結果、サボはなんで呼んでくれなかったんだぁぁぁぁ!と騒いでいたという。
 その様子に、ドラゴンはマリィが子供を産んだことを何故か口にしてはいけない気がしてしまった。
 黒ひげが襲撃してきたせいもあり、サボはめちゃめちゃ、メラメラの実の力を我が物に出来たようだった。


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