もしも、愛娘が転生トリップ主だったら!

ONEPIECE

 生温い液体の中、私は微睡んでいた。しかし、急に訪れる苦しさと息苦しさ、そして、どこか狭い道を無理矢理押し出される感覚にもう止めてくれ、いっそ殺してくれ!と思ったが、急に肺に入ってくる空気と明るさに、泣いた。大きな声で、こんなに大泣きしたのは幼い頃ではないか?と思うくらいに泣くが、周りに人がいたらしく、『お産まれになりました!』『女子おなごでございます!!』『姉君様、頑張りましたな!!』次から次へと飛び出す言葉に、んん?となった。
 ひょい、と抱き上げられ、ぐったりとしながらも綺麗な女の人の胸に抱かれる。

「無事に生まれてくれて、ありがとう」

 強すぎず、だからといって緩くもない抱き方に、あぁ、この人はわたしのお母さんなのだと理解した。
 姉君様、先ずは御乳をあげてくださいと医師なのか看護師なのかは分からないが、母となる女性はなかなかに大きい胸を露わにすると、私の口にそれを含ませた。うまいとかまずいとかは分からないし、上手く吸えないが、うっくうっくとおっぱいを吸う私を幸せそうに見つめてくれて、あぁ、この人は何があっても私を見捨てたりしない人だと分かった。もし、こんなに慈しんでくれる人が後々虐待とかしてきたら、人間なんて信用出来るはずがない。
 おっぱいから離され、付いていたへその緒を切られ(痛くないもんだな)、母を残し、重湯へと連れて行かれる。
 カーゼらしき布を身体に着けられ、熱くも温くもない適温のお湯で身体に付いていた血などが拭われていって、気持ちいい。
 お世話してくれる人々も女の人しかおらず、どこにも男の姿はなかったことに全然気づかなかった。すっきりしたのと疲れからか、年嵩のおばさま方に抱っこされたまま気づけば眠ってしまっていた。

 翌朝、天蓋のある大きなベッドに母と一緒に眠っていた。なんじゃここ?!と思ったのは言うまでもない。天蓋のあるベッドなんて初めてだし、布団もふかふかし過ぎて、掛かってるの?と思うくらい。

「あら、起きたの?」

 ふわりと微笑む母は女神様かなんかじゃないか、と思うくらいに綺麗だった。
 恐る恐るといった感じで私を抱き上げる様はまだ慣れていないのか、こうかしら…なんて抱き方を模索している。ベッドの外から「姉君様、まだ首は据わっておりませんから…」と説明している。

「こう、かな?」

「はい」

「教えて下さって、ありがとうございます」

 どうやらおっぱいの時間らしく、たわわな胸を出して、吸わせてくる。昨日よりは口の中に水分が含まれ、うん、飲めている。ある程度、飲み、口を離せば「もういいの?」と聞かれたがおっぱいを手で押した。

「姉君様、お休みになられますか?」

「大丈夫です、まだこの子を見ていたいので」

「分かりました。後ほど、蛇姫様がお目にかかりたいと申しておりましたが」

「分かりました」

 姉君様と呼ばれる母は何者かと思っていたが、蛇姫様という言葉に「ん?」となる。蛇姫といえば、私の中ではあの『ONE PIECE』に出てくる絶世の美女、海賊女帝、王下七武海紅一点、ボア・ハンコックであるが、まさかね。とそんなことありえない、ありえないと思いながら、母が指を差し出してくるのを反射的にぎゅっと握ると、嬉しそうに微笑む母の可愛らしいことったらない。
 そうこうしていると母がウトウトし始め、わたしも眠くなる。いつの間にか眠ってしまったが、じわりとした湿っけに目が覚めた。

「ふえぇ〜〜ん」

「っ?!」

 隣で眠っていた母が飛び起きると、傍にいたのか「失礼いたします!」とカーテンらしきものが引かれ、女の人たちが現れた。

「あぁ、おしめでございます。姉君様はまだお休みになさってくださいませ」

「で、でも…」

「姉君様、産後の御身体はまだ回復されておりませんので今は御乳の時だけで、後はわたくし共がお嬢様のお世話をいたします」

 医師やお世話係に言われてしまった母は、困ったようにしていたが、確かにまだ調子は良くないようだ。
 前世・・で結婚どころか彼氏さえいたことのない私がお産の大変さや、出産後のケアなど知るのとはないが、出産した友人は産後は地獄だ……とボロボロの姿でいたのを思い出した。母がどのような立場なのかは分からないが、甘えてしまえ、母よ!と思ったのはいうまでもない。
 赤ん坊とはいえ、見ず知らずの人におしめを替えて貰うのは少なからず、貶められている気がしてならない。なぜなら、私は中身はアラサーだからである。
 昨日、生まれたてとはいえ羞恥心はバッチリあるのだ。ところで何故自分は生まれ変わったのだろうか。意味が分からないが、おしめを替えてもらい、おっぱいを飲むとトントンと背中を優しく叩かれ、ウトウトしてくる。赤ちゃんの仕事は寝ること、おっぱいを飲むこと、泣くこととはよく言うが、確かに眠い。思考も放棄するレベルで。くぁ〜と欠伸をすれば、母の横へと連れていかれる。優しくポンポンとリズムよく手を添えられて、母の笑顔を見ながら私はまた眠りへと落ちていった。



「姉様あねさま、今はまだお休みになさってるからまた後にしたらどう?」

「なぜじゃ!わらわがせっかく会いに来たというのに!!」

「ごめんなさいね、ハンコックさん。まだ眠っているようで」

「お、お義姉様……申し訳ないです」

 どこからか会話が聞こえて、薄っすらと目を開けると、母の顔が見える。ふふ、と微笑む母はやはり可愛らしい。

「ハンコックさん、今、目を覚ましたわ」

「ほんとうですか、お義姉様!」

 嬉しそうな声に、そちらを向こうとしたが首が据わっていないのだから出来るはずもない。しかし、母は今、なんと言った??
 母はゆっくりとベッドから足を降ろすと、ほら、とベッドの脇にいた人たちに私を見やすいようにしてくれた。そこで目に入ったのは、あの『ボア・ハンコック』の姿をした美女である。周りにも妹たちがいて「可愛い」「小さい」などと褒めてくれるが、ボア・ハンコックは両手を口元に宛てて「はわわわわ」と奇声をあげている。そんな方でしたっけ?

「こ、これが……ルフィの姪御…ど、どことなくルフィに似ていなくもない!!」

 彼女の台詞にポカンとする。え?ルフィ?ルフィって『ONE PIECE』の主人公で、全世界で有名な『おれは海賊王になる!』の漫画の?!しかし、目の前にはボア・ハンコックの姿をした美女がいて、その体型どうなってるの?という妹たちがいる。そして、私は母をじっと見上げた。

「どうしたの?」

 ふふ、と笑顔を向けてくる人物は知らない、知らないのにどことなくルフィに似ていなくもないし、ハンコックがこんなに母に対して丁寧なのは、彼女がルフィの姉・・・・・・・・だからとなる。
 え?えぇ?!たらり、と背中に汗が流れる。そんな馬鹿な『ONE PIECE』にルフィの兄たち(エースとサボ)はいれど、姉・なんて存在しない・・・・・!!しかし、私がこうして、この世界・・・・に生まれている以上、ここ・・は原作ではなく、所謂パラレルワールド、もしくは二次創作の世界となる。
 なんだって、そんなことに?!と私は思わずギャン泣きをしてしまったのだった。

それから月日は流れ、私は自分をモンキー・D・ルフィの姪っ子というのを受け入れるしかなかった。
 母の名前はモンキー・D・マリィ。れっきとしたルフィの姉であるという。そして、私の父はと言うと、母が手配書を持ち『パパですよ〜』と見せてくれたのはポートガス・D・エースだった。
 ウソでしょ?
 誰かウソだと言って欲しい。
 だって、ここが女ヶ島でルフィに関して国中がルフィ様と呼び、ハンコックがメロメロになっているということは、時系列で言えば頂上戦争は終わってて、エースは死んでいるということじゃないか!
 父親が既に死んでいるという悲劇にも関わらず、母は手配書を見せては『パパですよ〜』と明るく教えてくれる始末。もし、もしも、エースが生きている世界だったらと仮定してみる。そもそもルフィの姉がいるという時点で原作とは違うのだから!しかし、何故か顔を出さないエースにどういうことだ?!となる。
 母は苦しい思いをして私を産んでくれたのに、なぜそこにいないんだ、ポートガス・D・エース!!やはりそこは原作と変わりなく頂上戦争で亡くなってしまったのだろうかと、私は手配書を見る度に「あ〜う〜」としか返事が出来なかった。


 赤子の成長とは早いもので、寝返りをうてば、お付きの方々が褒めてくれ、お座りが出来ると母が喜び、はいはいではなく、何故かバックするずり這いをすれば、もう少しです!と褒めてしかくれない。
 もうおっぱいだけではなく、離乳食もくれるし、女ヶ島では客人扱いらしく上げ膳据え膳で、母は戸惑っていたが、ハンコックが「お義姉様や姪御殿が過ごしやすいように取計らうのじゃ!」「ルフィが知ったらきっとそんなわらわの優しさに……きゃ!」となっていた。うん、まぁ、人それぞれだよね。とハンコックをお座りしながら眺めていたら、恐る恐ると抱き上げられた。
 ふぁ!!間近で見ると本当に美女!美女でしかない!!それになんて良い香りがするの?!これに靡かないルフィって何者なの?!と思ってしまう。

「わ、わらわもいつかルフィとの子を成せるかのう」

 ボソリと呟かれるそれに、それは乳幼児に言う事じゃない……としか言えずにいた。
 つかまり立ちをした日には、お祝いをした。女ヶ島の皆さん、優しすぎません?いくらルフィの姪っ子だとしても、そんな緩々でいいの??と思いながら、肝心のルフィはレイリーと無人島で修行中である。
 頂上戦争からどれくらいが経っているのかは全然分からない。そもそも喋れないし、新聞も凪の帯カームベルトには運んで来ないと原作にあったから知るすべもない。とりあえず分かったのは私が生まれてから、一年になったという。
 一歳になると伝い歩きはもちろん、一人で立っちも出来るし、なんなら少しだけなら歩くことも出来る。意思表示も出来るようになった。たま〜に癇癪を起こしてしまうのは身体に引っ張られてるからだと思いたい。母は少々お転婆である私に大して、ダメなことはきちんと叱りつけるがおおらかな人なのか「ルフィよりはマシ」と言ってたりする。どんだけ、ルフィは母に面倒をかけていたのか知りたくなった。
 いつものようにハンコックの御前で母と、妹たち、ニョン婆とお付きの人に囲まれて遊んでいた時だった。取り次ぎの方が慌てたように「蛇姫様、レイリー様がお越しです」と伝えてきた。
 男子禁制の女ヶ島であるが、ルフィは特別であり、レイリーもまたゴルゴン三姉妹の恩人であるから、入国が認められている。

「レイリーが?通せ」

「蛇姫!」

 ニョン婆は諌めるも「うるさい、わらわが皇帝ぞ」と凛としたハンコックはやはり綺麗である。
 一歳になってから自分で身体を動かせるのと、歩いていけるというのは楽しくて仕方ない。よたよたと廊下を歩いていると「おや?」と男性・・の声がしたから見上げるとそこには、冥王 シルバーズ・レイリーが立っていた。何やら思案しているようだが、なんだ?どうした?と思っていると、母の声が聞こえた。

「エマ〜?」

「う?」

 レイリーは声の方を見つめていると、現れたのは母だった。レイリーは母と私を見比べると「ははは!」と声を高らかにあげた。

「…レイリーさん!!」

「やぁ、マリィ!無事でなによりだ!」

 レイリーに抱きつく母に驚きながらも、どうやら母はシャボンディ諸島でシャッキーとレイリーと一緒に暮らしていたらしい。ルフィと再会した母は運悪く一味が飛ばされたように、バーソロミュー・くまに同じように飛ばされていたという。まさか、女ヶ島にいた事すらレイリーは知らず、ルフィも知らないという。

「マ〜!」

 話がわからなすぎて、母に抱っこをせがむと抱きかかえられる。するとレイリーの眸が和らぐ。「う?」と首を傾げて見つめると、また笑顔を向けてきた。

「ははは、なんて愛らしい子だ」

「抱っこしますか?」

「小さな子なんて何十年ぶりかな…」

 何十年かぶりに赤子を抱き上げるというレイリーだったが、まずまずだった。なんだか知らんが目頭を押さえていて、私が泣かせてしまったのか?と焦ってしまった。
 「あーう!」とぺちぺちと頬を叩いてみると「良い女になるんだぞ!」と掲げられれば驚くしかなかった。
 母は海賊ではないにしろ今は危険な状況らしい。革命家ドラゴンの娘であるという事実が知られたのはファミリーネームを名乗っていたせいでもある。尚且つ、ここが一番重要!海賊王の血筋を宿していたからでもある。つまり、私は海賊王の血と革命家の血を引く、とんでもない、政府と海軍に知られたら見逃してはくれない人物であるという。もう女ヶ島ここでしか生きていけないのではないか、と思う。
 なんたって、父親であるポートガス・D・エースは死亡し、祖父の革命家ドラゴンはコンタクトすらない。ルフィは…ルフィは修行中の身だ。ガープ?ガープは海軍である以上期待は出来ない。嫌いじゃないのよ、ガープじいちゃん。
 そんな思いに駆られていたせいか、よたよたと動き回っていたせいで疲れていた私はレイリーが言った重要な事を聞き逃していた。

「ルフィたち・・・・・の修行も後は自分たちで十分だろう」

「そうなんですね。レイリーさん、ルフィに色々と教えて下さってありがとうございます」

「いやいや、私もこの一年半楽しんだもんだ」

 きちんと礼を言える母は本当にあのルフィとガープの家族なのだろうか?と子供心に思ってしまう。うとうととしていると、レイリーが近づいてきた。とっさに母の背に隠れるが、イケオジのスマイルに負けてしまう。

「ロジャーの孫になるのか……アイツに似なくて良かった…」

「う!」

 抱き上げられてそんな事を言われてしまう。うん、お母さんに似てて良かったと思ってる。鏡で初めて見た時は、癖っ毛は父親エースに似たのか…と思ってしまった。サラサラの母の髪みたいなら良かったのに、と思うが、母が「パパに似たのね」と嬉しげに言うから、むぅ〜と口を尖らせるしか出来なかった。

「マリィはこれからどうするつもりだね」

「………いつまでもここにお世話になる訳にはいけませんので、レイリーさん、シャボンディ諸島へご一緒してもよろしいですか?」

「お義姉様!?こ、ここを出てゆかれるのか?!」

 そんな…とショックを受けるハンコックに母は彼女の手を握る。

「ハンコックさんには大変良くしていただいて、感謝しております」

「お義姉様……」

「だけど、いつまでも甘える訳にはいけません」

 至れり尽くせりだった女ヶ島であったが、きっぱりという母にハンコックが「お義姉様、ずっとここにおってもよいのじゃぞ」と言うが、そういう訳にもいかないのだろう。後々、ルフィとて仲間たちと合流する為にシャボンディ諸島に戻るのだから。

「………では、私と一緒に戻るとしよう。シャッキーも心配しているだろう」

「な、ならば一日待たれよ!お義姉様たちの送別会をしなければならぬ!」

 思いの外、ハンコックには気に入れられたのだと知り嬉しくなったのだった。
 急ぎという訳ではないが、沢山の料理は食べ切れない。まぁ、大体はルフィの元へと運ばれたらしく、レイリーはやれやれといった感じだった。
 九蛇の海賊船を用意してもらい、私は初めて海に出た。母が抱っこしつつ、大海原をみせてくれて、これが『ONE PIECE』の世界なんだと思った。九蛇の海賊船を引く海王類の大きさにポカンとしてしまい、あまりの怖さに一番安全であろうレイリーに引っ付いていた。
 遠くに見えるイルカがいたが、遠近法がおかしいのか、巨大すぎるのか分からなすぎる。うん、やはり自分が知る海ではない!という事を知った。
 レイリーは怖がる私を優しく撫でてくれる。心の中で失礼な事を言われてそうだけど!と独りごちた。
 一週間ほどでシャボンディ諸島につくと、地面からシャボンが出てくると奇っ怪な光景に唖然とする。この世界のことは漫画やアニメで知ったつもりでいても、想像と実像は違うものだ。前世の常識は通用しないということが分かった。
 九蛇の海賊団に別れを告げ、やってきたのはシャッキーの『ぼったくりバー』である。レイリーは慣れているのか「帰ったぞ」の一言で店に入ると、「早く入って顔を見せなさい」と母へ告げる。母は私を抱き上げたままお店に入ると、シャッキーがタバコを灰皿に押し付ける。そして母を抱きしめた。

「マリィちゃん!無事で良かったわ……心配したのよ……」

「シャッキーさん……ただいまです」

「おかえりなさい……初めまして、小さなお姫さま」

 シャッキーもシャッキーで何才かは不明だが、綺麗な女人だった。母を促し、店内へと入れるとこの一年半のことをみんなで話したのだった。
 そして、シャッキーからは世界情勢を色々と聞かされた。一年前、白ひげ海賊団と黒ひげとの衝突の記事があげられていたが、結果的には黒ひげが撤退したとのことだ。黒ひげ海賊団が解散した訳ではないようだった。
 まだまだ分からない世界情勢に、人々が不安になるのは当たり前である。海軍本部があったマリンフォードは新世界側へと場所を移動したという。ガープとセンゴクの名前は残っているらしいが、事実上職務は離れたらしいと聞かされた。

「……そう、だったんですね…」

 母の言葉に、はて、そんな話だっただろうか?と首を傾げるはここ・・はパラレルワールドだ!
 ガープについても職は離れたが、軍に名前は残っているというし、一応海兵のままらしい。母は心配していたが、思考を読み取ったのか、レイリーは「ははは!」と笑った。

「ガープが破天荒なのは昔からだ。それでも処罰されないのは、アイツが“海軍の英雄”と呼ばれていることと、アイツを慕う海兵が山程いるからだ……なんだかんだと憎まれないヤツだよ」

「……はぁ…」

 曾祖父ガープが敵対していた海賊王のクルーが言うことは違うなぁ、と思いながら、わたしはシャッキーから出されたジュースを飲んでいた。レイリーが「だがなぁ〜」と言葉を続けた。

「ロジャー同様規格外だらけだったよ……当時の海賊たちからは“悪魔”と称されていたしな!ロジャー、ロックス、チンジャオ、シキ、白ひげ……数え切れない海賊と拳ひとつで渡り合うものだからな」

「ふふっ…」

「……うん、やはり君は笑っているのが綺麗だな」

「……はぇ?」

「ははは!とてもあのガープの孫とは思えない可愛らしさだ!」

 揶揄うレイリーに母は頬を少しだけ膨らませた。うん、わたしの母はやはり可愛らしい。
 ルフィが来るまでの半年間、レイリーはここぞとばかりに私を独り占めしていた。

「わたしのことは、レイじぃと呼んでくれ」

 ニッコニコで言われてしまい、この世界で祖父ドラゴンに会う事があるかは分からないが、レイリーを祖父扱いしてもいいだろう。少しばかり打算的になりながらも、彼を『レイじぃ』と呼ぶことにしたのだった。
 やがて、半年経つ頃には続々と麦わらの一味が集まりだした。最初に来たのはやはりゾロで、ファンタジスタな彼がどうしたら一番早く来れたのか気になった。
 麦わらの一味は私を見る度に驚いていた。んナミすゎんはもう、本当にナイスバディ過ぎて、何がどうしたらそうなるのかが不明である。もちろん、母もわたしを産んだにしてはスタイルが良いので、もうこれがデフォなんだと思っている。
 やがてロビンまで現れると、残りはルフィだけである。拙いけど喋れるようになった私はワクワクしている。だって『ONE PIECE』の主人公に会えるんだよ?!しかも、私はルフィの姪っ子という、それなりに特別になる存在だ!なんたってエースの遺児ぞ!
 レイじぃがルフィたちはもう島に来ているという宣言に、シャッキーさんから荷物を渡される。え?私たちも乗るの?と疑問を抱くも、サニー号へと連れて行かれる。
 ナミやロビンが可愛いわね〜と構ってくれて嬉しいけど、え?見送りじゃなくて、一緒に出航??といよいよサニー号の出航準備は万端になる。チョッパーがルフィ、ゾロ、サンジたちを迎えに行っていると聞きながら、ブルックが母にまで『パンツ見せて』と言ってナミさんに制裁されていた。

『おーーい!!』

 その掛け声と共に、抱き上げられていた私も頭上を見上げる。そこにはトビウオライダーズに乗ったチョッパー、ゾロ、サンジ、ルフィ、そしてエースの姿・・・・・があった。

「マンマ?!!」

 意味が分からなくて指を差せば「パパよ」とにっこり微笑まれた。
 え?え?えええええぇぇぇぇ?!
 なんで、なんで?エースは頂上戦争で死んだんじゃなかったの?!
 呆然とするが、それはあちらも同じようで、母の姿を認めると、熱烈なラブシーンを見せつけられた。
 麦わらの一味は生温かい目で見ているが、エースもルフィも私・の存在に気づくと大変驚いていた。そりゃ、女ヶ島にいたにも関わらず秘密にされていたのだから、仕方ない。まぁ、私も父親エースが生きている・・・・・・なんて知らなかったのだ。
 これからどうなるかは分からないが、話をきいていくと、なんと白ひげのオヤジも生存しているとか……ええぇぇぇ?!
 このまま魚人島へ向かうという。エースは白ひげ海賊団へ連絡をしたら、魚人島で合流だという話になった。

 エースは私を前にして、緊張した面持ちをしていた。 母に「愛してる!」と熱烈な告白をしていたのに、私・に対してはどうしたらいいのか、という態度だ。

「……と、とーちゃん、だぞ…」

 散々、母から『パパだよ〜』と手配書で見せられていたが、いざ、エースを前にすると確かに『パパ』という呼び方は違うと思える。でも母は『ママ』である。
 ルフィをはじめ、麦わらの一味がエースの発言に笑っているし、なんなら母も笑っている。一番笑っているのはルフィで、覇気を纏った拳骨を食らわされていた。バイオレンスすぎない??

「……とぅちゃ?」

「あぁ、父ちゃんだ!」

「マんマ!とぅちゃ!」

「……そうね、パパって感じじゃないものね」

「おれがパパなんて柄じゃねぇだろ…」

 その呟きに母はあっけらかんと「そうね」と同意していた。本当にエースは『パパ』という感じじゃなかった。
 ルフィが「おれも抱っこしたい!!」と言うものの、なんだか迫ってくる海賊船があり、一人乗り込んで来たヤツがいたが、ルフィたちがなんとかしていた。
 この後、魚人島へ行き、原作と同じように魚人島で一悶着があったものの、無事になんとかなったし、しまいには白ひげ海賊団が現れてしまい、父親エースにより、あの巨体に挨拶するもあまりのデカさにギャン泣きしたのは仕方ないと思う。
 これから、どうなるのか分からないが皆さん、この幼気いたいけな私を是非とも護ってください!と願いのだった。

 後々、祖父であるドラゴンに会うし、エースとサボは再会出来るし、で、本当にここはパラレルワールドなんだと思いました。(作文風)


 ところで、前世の私ってどうなってるの?



END


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