もしも、愛娘が転生トリップ主だったら!4
※今回は短い話です。
ポートガス・D・エマ、三歳。もうすぐおねーちゃんになるようです。
こんにちは、エマです。いちいち前置きが長くなるけど、三歳になりました!中身はアラサー女子です。何がどうしてこうなったのか、前世で大人気の某少年マンガの世界にトリップというか、転生してから三年経ちました。
あの時は驚いた。だって『ONE PIECE』世界に生まれ変わるだなんて誰が思う?ましてや『ONE PIECE』といえど、知ってる『ONE PIECE』ではなかった。
エースが、白ひげが生存する世界だし、なんと原作にはいないキャラがいるのです。それは母、モンキー・D・マリィ。主人公、モンキー・D・ルフィの姉──義理とかではなく実姉であり、エースの奥さんである。
うん、何いってんだ?って思うよね、私も思う。これ、二次創作の世界じゃね?と……。まぁ、自分がトリップ転生しているので『ONE PIECE』の原作通りにはいかないのよね!
さて、三歳になり、母に言われた事に驚いたのは冒頭の通りである。
わたし、おねーちゃんになるんだって!
母のマリィが微笑み、父のエースはなんとも照れくさそうにしている。
まぁね、エースは私が母の胎にいたことも知らなかったし、互いに会うまで存在すら知らなかったのだから、今回、改めて母のお胎に赤ちゃんがいると聞かされ、緊張しているようだ。
「おねーちゃん…?」
「そう、来年あたりかな?」
「あたし、おねーちゃんになるの?」
「えぇ」
ふふ、と笑う母に驚きと共にうわぁぁぁ!となった。なんというか、感動だ。本来ならば途絶えるはずの血筋が遺るという、自分もそうなんだけど、上手くいえないけど、エースの存在がちゃんと在るということに口が喜びで歪んでいく。
「おとうと?いもうと?」
「生まれるまでのお楽しみよ」
「えー!はやく知りたいっ!!」
「落ち着け、エマ」
じたばたし始めた私にマリィ母もエース父も笑っている。早く知りたいと言わんばかりについつい両手を上げたりしてしまった。中身がアラサーなのに身体の反応は別になってしまう、き、きっと身体につられているんだ、よね?
「じっじにいってくる!!」
「お、おいっ!エマっ!!」
はっ!とした私はこの喜びを喜んでくれそうな、じっじこと白ひげの元へと走ったのだった。母とエースが呆気に取られ、顔を見合わせて笑っているとは知らずに。
「……ったく、なんであんな落ち着きねぇんだ?」
「ルフィに似てるわね」
「……おれも思った」
「あら、エースだってわぁわぁ言ってたじゃない。似たようなものよ」
「…………おれはあそこまでじゃねぇよ」
ふふ、と笑うマリィにエースは優しげな顔をして、抱き寄せると唇を重ねていたのはエマは見ることはなかった。
近くにあるじっじ──白ひげの家にエマが駆け込むと、見聞色で分かっていたのかマルコが出迎えてくれた。
「どうしたんだよぃ、エマ」
「おはよう、マルコっ!じっじは?!」
「オヤジなら部屋にいるよぃ」
「わかった!じっじぃぃぃ〜っ!!」
飛び込んできた可愛い幼子にマルコはやれやれといった感じで、後を追いかけた。幼子はバンっ!とオヤジの部屋のドアを開けるとオヤジへと飛び込んでいく。
「どうした、エマ」
「じっじ!あのね、あのね!!」
目をキラキラさせながら、興奮する孫娘を受け止めた白ひげは、可愛い頭を撫でてやる。
「あたし、おねーちゃんになるんだって!!」
「!!」
「そりゃあ、本当か?」
「うんっ!さっき、ママたちが言ってた!!」
「マルコ」
「なんだよぃ、オヤジ」
ふんすふんすと興奮しているエマを膝に乗せた白ひげは、入ってきたマルコへと目をやる。
「今すぐにマリィの手伝いを増やしてやれ、あとホワイティベイを呼べ」
「ベイちゃんがくるの?!」
「あぁ」
「わぁ!!」
「後は宴会の準備をしろ!」
「えんかい?うたげをするの?」
「あぁ、美味いもんたくさん食え!」
やったぁ!と喜ぶ孫娘を抱っこした白ひげは、この数年病に侵されていた。しかしどうだろう、孫娘が出来、可愛い孫の成長を見ずに死ねるか!と言わんばかりに病は良い傾向に向かっている。
エマが「じっじ、長生きしてくれなきゃヤ!」なんて言った時には「おれが死ぬわけねぇだろ!」と言ったくらいである。おかげで薬を飲み、酒を控えることに成功した。エマのおかげである。
「じっじ、お外にいこう!」
くいくいと引っ張るエマに「グララララ」と笑いながら、孫娘を抱っこした白ひげは一日一度の日光浴へと外に出たのであった。
庭で「おとうとかな、いもうとかな」と今から待ち切れないとばかりにはしゃぐエマに白ひげは「無事に生まれればいいだろう」と言う。
それはそうだが、自分に弟妹が出来るのだ。楽しみになるのは当然である。
(前世でも兄弟なんていなかったし!)
きゃっきゃとはしゃぐ孫娘に白ひげは目を細める。あの戦争から四年近く経ち、白ひげ海賊団は解散したものの、船員息子たちは自分を慕ってくれるものが多い。白ひげの人望ではあるが、こんなにも幸福で良いのかと思う時がある。
昔から欲しかったモノがあった──家族が欲しかった。それは数多の息子たちを得て叶ったが、こんなに愛らしい孫まで出来てしまうとこの幸福に慄いてしまう。
出会った頃のまだ幼いエマを思い出す。二歳にもならない幼子を見て、触れたら壊れてしまうのではないのではないか、と不安になった。
何十年も前に船に一家を乗せていたこともあるが、年を取るとこんなにも幼子が小さいのかと驚いた。息子エースの嫁はそれに気づいたのか、いつも白ひげが触れやすいようにエマを抱き上げては『撫でてください』と笑っていた。
エースが傘下の海賊船に出向いてる時も毎日エマを傍に連れて来ては『エマが遊びたがっています』『エマを見ててくれませんか』と何かと慣らそうとしていた。
普通ならば、海賊なんぞに幼子を近づかせないだろうが、そこはエースの嫁だからだろうか。
『エースが慕うオヤジ様です、それにエマの家族おじい様ですもの』
仲良くしてくれたらと思います。と言ってのける彼女は随分と強かだと思い、笑ってしまった。
祖父は海軍、父は革命家、弟は海賊。だが本人はけろっと『私はなんの取り柄もないただの小娘です』と言ってたがそんな訳があるか!
エースの大事な女であり、可愛い孫娘の母である以上、白ひげにとってもマリィは大事な家族の一人である。
孫娘一人でもこんなに可愛いのだ、次に産まれてくるであろう孫も可愛いに決まっている。
白ひげは訪れる未来をまた待ち望むことになる。
(まだまだ死ぬのは惜しい…)
今夜の祝い酒は飲むが明日からは多少の我慢をしてやるか。
じぃぃぃっと見つめてくる孫娘と目が合うと、にぱっ!と可愛らしく笑うものだから白ひげはまた目を細めてから笑ったのだった。
優しく笑う白ひげに、エマは(こんな風に笑うんだ)と思いながら、自分も笑い返した。
これが幸せなんだと思う。何気ないありふれた毎日だが、笑い合える日は楽しいのだから。
「エマー!オヤジー!!」
どうやらエースが来たようだ。
「とうちゃん!」
「エマ、お前なぁ」
勝手に行くな、と優しく小突いてくる。すると白ひげは「エマを小突くな」と注意してくる。
「オヤジはエマに甘すぎる」
「可愛い孫娘だ、当たり前だろうが」
「ったく!」
そんなやり取りが家族っぽいと思いながら、エースがエマの脇に手を入れて抱っこをする。そんな自然な動きにエマはエースも父親なんだな、と思ってしまう。
「聞いたのか?」
「あぁ、エマに弟か妹が出来ると聞いた」
「はぁぁぁ、俺が伝えようと思ってたのに」
「グララララっ!別にいいじゃねぇか」
「いや……その、オヤジにはエマの面倒見てもらっていたから…」
片手でエマを抱っこしたまま、エースは頰をかいた。エマはおや?と思った。てっきり母ばかり気づいていたと思っていたのだが、エースもエマが自主的に「じっじと寝るの!」と言ってたのは自分たちのイチャラブタイムの時だと分かっていたらしい。
娘に気を遣わせ、妻に恥をかかせていたと思いきやそんな事はなかったようだ。多分、まぁいっか!的な感じかもしれないけど。
白ひげはエースの様子にまた笑った。
「グララララ!オメェにもそんな感情あったのか!」
どうやら白ひげじっじも同じことを思っていたようだ。まぁ、お泊りした次の日、母がベッドから出れない事もあったし、分かりやすいのである。
エースは照れているのか、なんとも言えない顔をしている。
宴だって?と誤魔化すように聞くエースに白ひげが頷いた。エースは笑いながら、まぁ、今日ならいいかもなと言っていたのは後々母が悪阻により食えない日々が来てから判明したのだった。
どちらかといえば男が多い島であるから、妊婦を気遣える女性はあまり多くない。ホワイティベイが来てくれなかったら、大変だったと思う。村の女性たちでは元海賊たちにそこまで強く出れないからだ。
母曰く、エマわたしの時は悪阻もそこまで酷くはなかったし、妊娠後期は女ヶ島にいたから至れり尽くせりだったという。確かに産まれて間もないエマの面倒は年嵩のおばさまたちが代わる代わる世話をし、母はおっぱいの時と寝る時一緒に寝そべっていたものだ。
ルフィの姉という立場だからこそ、ハンコックの客人として上げ膳据え膳だった。まぁ母はそこまでしてくれなくともと遠慮していたものだったなぁとエマは赤子の頃を思い出したのだった。
さて、いよいよ臨月。いつ産まれてもおかしくないお腹に耳を当てていると蹴りとか凄まじいんだよ?
もうこれ、男の子でしょ?という位に母の腹を蹴る赤ちゃんに私は驚くしかない。
(お腹蹴り破ってこないよね…)
「腹蹴り破んねぇよな……」
父エースと同じ事を思ったのは言うまでもなかった。