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♪♬♪

[〜K side〜]



「あれ〜? 天羽ちゃん、まだ来てないのかな〜?」

カラン、と喫茶店の扉を開け、店内を見渡す。
いつもなら先に来ている筈の親友、天羽菜美がいないのに香穂子は小首を傾げた。
珍しい、と思いながら店員に案内され窓際の席へと着いた。
アイスティーを注文し、フンフンと道行く人々を見た。カップル、親子、友達同士の行き交う人々を見ていると、本屋の前に年の頃が同じ、または中学生くらいかもしれない。

「あの子も待ち合わせなのかな」

そんな事を思い、天羽ちゃん、まだかな〜。などと思っているとアイスティーが運ばれてきて、口をつける。
またさっきの女の子に目を向けると、待たされているのか、でもそわそわと辺りを見渡したり、かと思えば胸に手を当てて深呼吸している。

「……もしかして、デート…?」

うわぁ、と思わず口元に手を当ててまじまじと見てしまった。悪いな、と思いながらも気になってしまう。
単純に、いいな、羨ましい。自分も誰かとデートしてみたい……。と思ったところで、頭の中に浮かんだのは同じ普通科で、春に一緒にコンクールで競った面倒見のいい同級生。
途端、香穂子は頬を赤らめ、ぱっぱっとそれを掻き消すように手を振った。

(……なっ、なななんで土浦くんがっ……)

だけど、やはり浮かぶのは彼で……あの校内コンクールの時はかなり世話になった。
コンクールに巻き込んだのにも関わらず、「気にするな」と言われたり、何度も助けてもらった。
──とくん、と胸が鳴る。
それがなんなのか分かるような気がするけれど、それを自覚してしまったら、なんだか今までのような気安い同級生には戻れないような気がしてならない。
──認めるのが、怖い。というのだろうか。
ううっ、と眉を八の字にしていると、コツンと頭に何かが触れた。

「日野、」

それと同時にかかる声にドキッとしてしまい、思わず振り返るとジャージ姿の土浦の姿に香穂子は声を上げた。

「つ、つつつ土浦っくん!?」

「……お前、どんだけ吃ってんだよ」

にっといつもの様に笑うと、当たり前かのように向かいの席に腰を下ろした。

「えっ、えっ? どどうしたの?」

見ればサッカー部のジャージ姿で、スポーツバックを持って……部活の帰りかなんかだと思う。が、何故ここに?
店員に「アイスコーヒー」と注文し、こちらを向いたのにドキッとする。

「学校でさ、天羽に会ったんだよ」

「えっ? 天羽ちゃん、学校にいるの!? なんで!?」

私との約束は?と疑問に思っていると

「なんでもずっと断れてた取材が今日ならいい、とかいうことになったらしくてな。それでお前に連絡しても繋がらない。家に電話をすればもう出掛けた、と言われたらしくてな。どうしよう、と悩んだ時に見つかったのが俺だったらしくて、お前がこの喫茶店にいるから伝えてくれって頼まれたんだよ」


頬杖をつきながら、見てくる土浦に香穂子は「えぇ〜」と声を上げる。

「天羽の奴、携帯に出ないんだ!ってぼやいてたぞ」

「えっ、携帯、私持って来たよ!」

ごそごそとバックを漁り、ほら!っと見せようとするが、なぜかない。

「…………あれ? おかしいな、充電して…………あっ!」

「置きっぱなし、って訳か?」

「……うっ、うん…」

やや肩身を狭くし、頷くしかなかった。
そうだ、充電してて、メールが届いたのをチェックした後、多分、机の上に置いてきたのかも知れない。バックがその横にあったし、すっかり入れた気でいたのだ。
すると前にいる土浦くんが呆れたような目で見てくる。

「……ドジ、だな」

「なっ、ドジってなによ。ドジって!」

「なんかそんな感じだろ、お前って。楽譜落としたり、なんだりさ」

その言葉にむぅ、と頬を膨らませると、クッと笑われてしまう。でも、なんだかそれも可笑しくてつい苦笑してしまう。
飲みかけのアイスティーを持ち、ストローに口をつける。こくっと飲んでからコップの縁を指でなぞった。

「……そっかぁ、天羽ちゃん都合悪いんだ……」

せっかくの映画、どうしよ。
それは今日までの上映で、天羽もちょうど行きたいけど、なかなか行けずにいたから、と都合がついた今日見る約束をしていた作品だった。
ふと、香穂子は目の前の土浦に目をやれば運ばれて来たアイスコーヒーを口にしている。

(…………一緒に、行って…くれないよね……?)

視線を感じたのか、土浦がこちらを見た。

「どうかしたのか?」

「うっ、ううん! なんでも、ない…」

慌てて手を振ると、土浦は「そうか」とまたアイスコーヒーを飲む。
部活の後に来てくれたのを考えると、もしかして喉が渇いていたのかもしれない。
そんな風に思うと頼まれたとはいえ、来てくれた事に意味もなく嬉しくなってしまう。

「……あ、ありがとう。まだ、お礼、言ってなかった……」

「あぁ、ま、気にするな」

にっ、と笑う顔にドキッとしてしまう。
せっかくのチャンス、かもしれない。
暇だったら、よかったら、迷惑でなければ……そんな言葉を頭の中で繰り返しながら、キュッとスカートを握りながら口を開いた。

「つ、土浦くんっ! この後、時間ある? よかったら──────」

頬が赤くなるのを感じながら、誘えば、一瞬、驚いたような顔をした後

「俺でよければ構わないぜ」

その返事に、頬が緩んだのがわかった。




END



あとがき〜side K〜

なんとなく書いてみた話です。
なんとも微妙な二人、友達以上恋人未満な、というのか互いに思い合ってるのに関係が壊れるのが怖くて踏み出せないって感じでしょうか?
設定はゲーム設定って感じで。多分ごちゃまぜになりそうですが。
次は土浦サイド書いてみようかと思います。

ご拝読ありがとうございました。



2008/04/12


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金色のコルダ top