02

♪♬♪

[ 〜R side〜]



学内コンクールも終わり、サッカー部に復帰すれば、怒涛の練習漬け。
休部していた間に多少身体が鈍ったのかもしれないな。と思いながらエントランスを抜け、正門前に来れば、見慣れた姿が目に入る。

「あ〜、もう! なんで通じないのよ!」

携帯片手に叫んでいるのは、長いウェーブを一つに括り、首からカメラを下げている、報道部の天羽菜美。
コンクールの時も、その前のサッカー部に来た時も取材だなんだで散々ネタにされ、晒し者にした張本人だった。
関わってはマズイ、と警鐘が鳴り、顔を合わせないようにと思った矢先

「あ、土浦くーん! ちょうど、よかった!」

「……なんだよ、天羽」

「お願いがあるんだけどさ〜」

「断る」

手を合わせ見上げてくる仕種にすかさず土浦は却下した。だが、そこで引かないのが天羽菜美である。数少ない自分を怖がらない女の一人。

「ちょっと、ちょっと! そんなこと言っていいのぉ〜」

ニヤリと口の端を上げながら、こっちを見てくる天羽に土浦はため息を吐きつつ言葉を次いだ。

「……なんだよ」

「いやさ〜、ちょっと頼まれてくれない? 駅前通りの喫茶店で香穂と待ち合わせしてたんだけどさ〜、急な取材が入って行けなくなったのよ〜。それで何度か香穂の携帯に電話してるんだけど、出ないし、家電にかけたら、とっくに出掛けたとか言われて……。悪いんだけど、香穂に伝えに行ってくれないかな?」

「はあっ? なんで俺がっ!?」

「だから、時間ないし、連絡取れないし、ああっ! もうそろそろ行かなきゃ! やっと今日ならって取材OKされたから行かなきゃいけないから!じゃ、頼んだわよ! 土浦梁太郎!! 私の代わりに香穂とデートしてあげて」

走りながら、振り向きウィンクしていく天羽にやれやれと頭をかく。
しかも最後の台詞に、深いため息を漏らしてしまう。

「……デート、って…」

それは願ったり叶ったり、だがあくまでも天羽の代打であって……しかもシャワーを浴びたとはいえ部活帰りのジャージで……。
それはないだろう、と思ったりするのは代打でもなんでも休みの日に会えるのが、ひそかに嬉しかった。
一旦、家に帰って着替えようか、と考えたが、天羽の様子からだと約束の時間が過ぎているようだし、ずっと待たせて、もし、もしも誰かにナンパされでもしていたら。そう思うと、土浦は天羽から教えられた駅前通りの喫茶店へと足を向けた。
休みのせいか、結構な人込みで幾分いらいらしそうになった。カップル、親子連れが行き交う中、器用に人込みを抜け、喫茶店へと辿り着いた。
カラン、とドアを開けると店員の「いらっしゃいませ」の声が響く。

「お一人様ですか?」

「…いえ、えーっと……」

キョロ、と店内を見渡すと燃えるような赤い髪の探し人を見つけた。
店員も待ち合わせなのだろうと察したらしく、微笑みを返された。
とりあえず、あの席まで行こうとすれば日野の行動がやや、怪しかった。
急に手の平を空に浮かべ、払うようにひらひらさせている。かと思えば、ギクシャク、と変な動きを見せている。
なんなんだろう、と近づいて。いつものように柔らかい赤い髪の小さな頭へコツン、とした。

「日野、」

名前を呼び、振り向いた彼女は目を見開いた。

「つ、つつつ土浦っくん!?」

何をそんなに驚いているのか、やけに吃っている姿に笑いたくなる。

「……お前、どんだけ吃ってんだよ」

クッと笑うと日野が座る席の前に腰を下ろした。
状況が掴めていないのか、慌てているが、注文を取りにきた店員へ「アイスコーヒー」と告げた。

「えっ、えっ? どどうしたの?」

そう聞いてくる顔にはありありと、何故ここに?というのが見てとれた。
まあ、サッカー部のジャージ姿であるし、元々日野が待っていたのは天羽というのもあるだろうし、と思う。

「学校でさ、天羽に会ったんだよ」

「えっ? 天羽ちゃん、学校にいるの!? なんで!?」

「なんでもずっと断れてた取材が今日ならいい、とかいうことになったらしくてな。それでお前に連絡しても繋がらない。家に電話をすればもう出掛けた、と言われたらしくてな。どうしよう、と悩んだ時に見つかったのが俺だったらしくて、お前がこの喫茶店にいるから伝えてくれって頼まれたんだよ」

やれやれ、と頬杖をつきながら、話せば、日野は「えぇ〜」と声を上げる。

「天羽の奴、携帯に出ないんだよ!ってぼやいてたぞ」

「えっ、携帯、私持って来たよ!」

そう言うなり、隣に置いてあった手提げバックをごそごそと漁り始めるが、

「…………あれ? おかしいな、充電して…………あっ!」

「置きっぱなし、って訳か?」

「……うっ、うん…」

出てこなかった携帯と、呟いた言葉に、彼女は小さな肩を縮こませ頷いた。
充電して使えるようにしたんだろうが、なんとなくそれがらしすぎて、つい笑いそうになる。

「……ドジ、だな」

「なっ、ドジってなによ。ドジって!」

「なんかそんな感じだろ、お前って。楽譜落としたり、なんだりさ」

初めて会った時も、楽譜を落としていたのことを思い出した。
その言葉にむぅ、と頬を膨らませてる表情が、どことなく可愛くて、でもそんなこと素直に言える訳もないから、クッと笑ってごまかした。
それをどう思ったのか、日野は微苦笑していた。
カラン、と運ばれたアイスコーヒーの氷が鳴るのと、日野の呟いた事に目をやる。

「……そっかぁ、天羽ちゃん都合悪いんだ……」

その呟かれた言葉に天羽の言葉が蘇る。

『私の代わりに香穂とデートしてあげて』

だが、それを決めるのは彼女であって、自分からはなかなか言えない。
代わりに、俺が──だなんて、言えるはずもはいし、『代わり』というのもなんだか嫌な感じがした。
誰かの代わりではなく、俺とデートして欲しいと思う。のはやはり、我が儘なんだろうか──。
そんな風に考えながらアイスコーヒーを飲んでいると、視線を感じ顔を上げた。ぶつかる視線にやや気恥ずかしさがある。

「どうかしたのか?」

「うっ、ううん! なんでも、ない…」

聞いてみるが、慌てて手を振られ、「そうか」とまたアイスコーヒーを口にする。
本当は期待しているのかもしれない、彼女に誘われる事を。

「……あ、ありがとう。まだ、お礼、言ってなかった……」

やや頬が赤くなりながら、言われる礼に、いつものように笑って答えた。

「あぁ、ま、気にするな」

今日は会えただけ、こうして向かい合って喫茶店にいられただけでいいかもしれない、と思ってしまう。
だから、次に紡がれた言葉に驚いてしまった。

「つ、土浦くんっ! この後、時間ある? よかったら───」

顔を赤く染め、誘ってくれたこと嬉しく思いながら

「俺でよければ構わないぜ」

その返事に、頬が緩んだのがわかった。




END


あとがき〜side R〜

衝動的に書いてしまったside Rです。
なんつーか、訳がわかりません!土浦→←日野の微妙なのを書きたかったらしい、です。
設定はゲーム、なのかな?出会いが楽譜を拾う辺り。
まあ、適当に、お願いします。


2008/04/13


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金色のコルダ top