オマケ
「俺でよければ構わないぜ」
そう言ったのもつかの間、土浦は「あっ」と呟いた。
「え? なに?」
「そういえば、何するつもりだったんだ?」
「あ、えっとぉ〜…買い物をして、夕方から映画見る予定だったんだけど……」
「……そうか…」
不意の言葉に香穂子は不安に駆られた。
(やっぱり、ダメ……とか?)
顔を少ししかめたからなのか、土浦は言葉を続けた。
「いや、俺さ、着替えて来ていいか?」
さすがにジャージ姿でウロウロするのが気が引けるのか、癖なのか前髪をかきあげる。
「えっ、あ……うん…」
「荷物もあるしさ、一旦置いてこようかと思うんだけど……」
「う、うん、そうだね」
そう答えると土浦は携帯を取り出し、時間を確かめる。
「まあ、1時間くらいで戻ってこれると思う──っと、お前どうする?」
待たせるのも気が引けてしまうのだろうか、香穂子は口元に指を当て、考えるとちらりと土浦へ視線を向けた。
「ここで待ってるよ。携帯ないし、下手に動いてすれ違いになったら大変だし」
「そうか? 悪いな、んじゃ急いで戻るから待ってろ」
「あ、うん……」
香穂子の返事に土浦は席を立つとスポーツバックを肩に下げ、「後でな」と店から出て行ってしまった。
その様子を見送り、香穂子はペタンとテーブルに突っ伏した。
──反則だ!
思いがけない出来事の数々に心臓が持たない気がする。
休みの日に会えた事
喫茶店で向かい合わせに座った事
映画を一緒に行ける事
──再度、待ち合わせをする事
「待ってろ」と言われた言葉を反芻させると、顔が緩みそうになってしまう。
ペチペチと頬を叩くも、頬は緩みそうでどうしようもない。
本当は天羽ちゃんと行く予定の映画とはいえ、これではデートになってしまう。
しかも「待ち合わせ」からというのに、もうどうしたらいいのかわからなくなる。
頬を叩いていた頬が熱くなる。きっと赤くなってしまっているのは、叩いたからではない。
喫茶店を出て、土浦は早足で家へと向かった。
その顔をほんの少し緩ませながら。
そして、早く彼女が待っている場所へと戻ろうと思ったのだった。
偶然、とはいえ、こんなサプライズ思ってもみなかった。
互いにそう思いながら、待って、待たせて、胸を高鳴らせていた。
END
あとがき
はい「デート未満」のおまけのようなモノです。
「デート未満」を書いた時にその後を書こうとして途中まで書いてたのですが、オマケって感じになりました。
楽しんで頂けたら幸いです。
ご拝読ありがとうございました。
2008/04/23