オマケ

♪♬♪

「俺でよければ構わないぜ」

そう言ったのもつかの間、土浦は「あっ」と呟いた。

「え? なに?」

「そういえば、何するつもりだったんだ?」

「あ、えっとぉ〜…買い物をして、夕方から映画見る予定だったんだけど……」

「……そうか…」

不意の言葉に香穂子は不安に駆られた。

(やっぱり、ダメ……とか?)

顔を少ししかめたからなのか、土浦は言葉を続けた。

「いや、俺さ、着替えて来ていいか?」

さすがにジャージ姿でウロウロするのが気が引けるのか、癖なのか前髪をかきあげる。

「えっ、あ……うん…」

「荷物もあるしさ、一旦置いてこようかと思うんだけど……」

「う、うん、そうだね」

そう答えると土浦は携帯を取り出し、時間を確かめる。

「まあ、1時間くらいで戻ってこれると思う──っと、お前どうする?」

待たせるのも気が引けてしまうのだろうか、香穂子は口元に指を当て、考えるとちらりと土浦へ視線を向けた。

「ここで待ってるよ。携帯ないし、下手に動いてすれ違いになったら大変だし」

「そうか? 悪いな、んじゃ急いで戻るから待ってろ」

「あ、うん……」

香穂子の返事に土浦は席を立つとスポーツバックを肩に下げ、「後でな」と店から出て行ってしまった。
その様子を見送り、香穂子はペタンとテーブルに突っ伏した。

──反則だ!

思いがけない出来事の数々に心臓が持たない気がする。
休みの日に会えた事
喫茶店で向かい合わせに座った事
映画を一緒に行ける事
──再度、待ち合わせをする事

「待ってろ」と言われた言葉を反芻させると、顔が緩みそうになってしまう。
ペチペチと頬を叩くも、頬は緩みそうでどうしようもない。
本当は天羽ちゃんと行く予定の映画とはいえ、これではデートになってしまう。
しかも「待ち合わせ」からというのに、もうどうしたらいいのかわからなくなる。
頬を叩いていた頬が熱くなる。きっと赤くなってしまっているのは、叩いたからではない。


喫茶店を出て、土浦は早足で家へと向かった。
その顔をほんの少し緩ませながら。
そして、早く彼女が待っている場所へと戻ろうと思ったのだった。

偶然、とはいえ、こんなサプライズ思ってもみなかった。
互いにそう思いながら、待って、待たせて、胸を高鳴らせていた。



END


あとがき

はい「デート未満」のおまけのようなモノです。
「デート未満」を書いた時にその後を書こうとして途中まで書いてたのですが、オマケって感じになりました。
楽しんで頂けたら幸いです。
ご拝読ありがとうございました。

2008/04/23


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