名前
「小日向」
「……」
「……? 小日向?」
目の前でひらひらとされ、かなではハッとして顔を上げればそこには怪訝そうに眉を潜めた律の姿があった。
「り、律くん…」
「どうした、体調でも悪いのか?」
「う、ううん。大丈夫だよ」
「なら、いいが」
「う、うん。それよりごめんね。練習中にボーッとして」
「いや、今日はもう止めにしよう」
「えっ…」
小さくため息を吐かれ、前に何度も練習して弾けなかった時のことを思い出す。
あれは私の為だったとしても、あの時はギュッと胸が締め付けられた。
(……上手く、弾けない…)
律に見放されたような気持ちが少し蘇る。が、ぽんと律の大きな手が頭に乗った。
「昨夜は眠れたのか? 朝からボーッとしているが悩み事でも?」
「怒ってない?」
「? 別に怒ってはいないが…悩み事か?」
心配そうに見つめてくる眼差しにドキドキと胸が高鳴る。
「小日向?」
だが名前を呼ばれ、考えていたことを思い出した。
(……そういえば、いつからだろう…)
昨夜、ニアと話をしていると聞かれたのだ。
『君と如月兄弟は幼なじみなのだろう? なぜ如月 律は君の事を苗字で呼んでいるんだ、昔からなのか?』
そう言われ、ハッとした。
小さな頃は『かなで』と呼ばれていたのに、どうして…?
それを考えていたら朝になってしまったのだ。
律はいつから『かなで』と呼ばなくなったのだろう……。
キュッと胸が締めつけられた気分にまたなった。
目の前には首を少し傾げている律の顔がある。
かなではギュッと拳を握ると、口を開いた。
「律くんっ!」
「どうした、急に大きな声を出して」
「あ、あのね……聞きたいことが、ある、んだけど……」
「なんだ?」
勢いよく言った割りにはだんだんと声が小さくなっていく、が気になるのだ。
「あの、ね……なんで律くんって私のこと『小日向』って呼ぶの…?」
「お前の名前だからだろう」
「違くて……前は、かなでって呼んでくれてたのに……」
そこまで言って、何を言っているんだろうと俯いてしまった。
だからその時、律が驚いているのをかなでは知らなかった。
「──かなで」
「っ!」
顔を上げれば、頬を少し赤くした律がいた。
「これからは、これから先はずっと名前で呼ぶよ、かなで」
「……っ、うん。大好きっ! 律くん!!」
「こら、いきなり抱きつくな。危ないだろう」
「律くん、律くん」
「なんだ」
名前を呼び、耳元に口を近付けるとかなでは顔を赤くしながら
「これからは苗字で呼んじゃダメだよ、大好き!」
「……あぁ、俺も……好きだよ。かなで」
優しく笑う律に、かなでは顔を赤くしたまま、太陽のように笑ったのだった。
END
あとがき
初コルダ3の律かな。
なんでかこんな話になりました。
かなり偽者ちっくな2人ですが……申し訳ないです。
なんで律って『かなで』を苗字呼びなんでしょうか。
幼なじみで小さな頃から苗字呼びはないんじゃないかと……。
響也は名前呼びなんだし、きっと思春期特有の中学に入ってから名前で呼べなくなった的な照れ隠しだったらいい。
響也は……まぁ、ずっと名前呼びだろうな。
初コルダ3でしたが、普通にノーマル二次を書くのは久々でドキドキ。
律×かなで……大好きだ!そこに響也も絡めばもっといい!
2010/03/18