【1】

ONEPIECE

年齢設定
現パロ
エース、サボ、マリィ→高校生
ルフィ→中学生




「ゴール・D・エース!!今日という今日は!!」

「うげっ?!なんだよ?!」

 廊下から聞こえる怒声とともに、聞き馴染みのある声が耳に入る。

「ちょっと、エースはまたなにをしたの?」

 そう問いかけてきたのは幼稚園からの親友であるノジコだった。机に広げられた菓子を摘みながら、ん?と訊ねられても生憎マリィには何のことだか分からないのだ。

「さぁ……なにしたんだろうね」

 教室の入口へと目を向けるも彼らの姿は見えない。しかし、喧々と風紀委員のイスカさんの声が響いているから、きっとそこにいるのだと分かる。

「アンタねぇ、仮にも一緒に暮らしてるんだから分かるんじゃないの?」

「え〜〜、そんなこと言われても……」

「まったく、エースも浮かばれないわね…」

 そんなことをボヤくノジコに耳を貸しながら、マリィは(そんなこと言われてもなぁ)と同じことしか言葉が出ない。
 ノジコの言う通り、マリィとエースは一緒に暮らしている。別に兄妹という訳でもなく、二人で暮らしている訳ではない、祖父や兄弟も一緒だ。エースは父の従兄弟の子で親戚である。後は父が後見人を務めるマリィとエースと同じ年のサボという少年も暮らしている。ルフィという実弟は彼らを兄のように慕っていて、どちらが血が繋がった家族か分からないくらいだ。
 母は仕事命!!の仕事人間で、家族仲は悪くはないがのめり込むと周りが見えないせいか家を空けている事が多いし、父も同様に海外を飛び回っている。祖父はハチャメチャな人間であるが、警察の高官という暇なのか忙しいのか分からない頻度で家に顔を出しては男は鍛える!と言って、エース、サボ、ルフィを連れ出しては扱いている。
 ちなみにマリィは親類の中で唯一の女の子という理由で溺愛されていた。マリィも一通り護身術くらいは身につけてはいるが、困ったことにエース、サボ、ルフィが過保護だったりする。理由はマリィ本人は覚えていないが、ガープがうっかり話した過去話のせいで拍車がかかった。
 さて、そんなことよりもマリィは廊下からの喧騒が静まり出したあたりでノジコと顔を見合わせる。今日は二人で寄り道して帰りたいのだ。エースはどうやらイスカさんに連れて行かれたようだし、サボは生徒会の集まりがあるという。
 二人は顔を見合わせるとゴミを片付け、カバンを持った。その様子にクラスメイトのデュースが声をかけてくる。

「おい、エースまだだぞ……」

「いーい?デュース、私たちはたまにはデートしたいの、二人で!!」

 ノジコの勢いに押されるデュースに、ごめんね!と両手を合わせる。ノジコがベルメールさんからもらったスイーツビュッフェの券が今日までなのだ。

「大丈夫!マリィにはわたしがついているんだし……ってことで、エースやサボに心配するなって伝えてね〜」

 チュッと投げキッスをするノジコに腕を引かれながら、マリィは「よろしくね〜」とお願いして、そそくさと教室から出ていった。
 二人とは幼稚園から一緒のくされ縁であるデュースは「……うそ、だろ…」と絶望した顔になるしかなかった。周りにいた同級生たちは「……どんまい…」としか声をかけることしか出来なかったのだった。
 無事に学校から出れた二人は街へと繰り出した。寄り道が初めてという訳ではないが、やはり女友だちと放課後は楽しく過ごしたいのだ。過保護な三人とてマリィが女友だちと遊ぶのに文句は言わないが、付いてくるのだ。どこへ行こうとも。
 二人はスイーツビュッフェを開催しているカフェにつくと、そこは女性客ばかりで、宝石のようにキラキラしたスイーツが並んでいる。

「わぁ!」

「食べるのもったいない!」

「でも美味しそう!」

 ノジコと一緒にきゃっきゃ言いながら、シェア出来るように少しずつ皿に盛りながらテーブルに戻る。写真撮っていいですか?と尋ねれば、大丈夫ですよ。と言われたからスマホで撮影して、SNSへあげる。
 みんなからいいねを貰い、フォークでケーキを掬い口へ運ぶとあまりの美味しさにノジコと互いにへらりと笑ってしまった。相変わらず、みかんが好きな彼女はフルーツ系のタルトなどを食しては、こそっと「ベルメールさんのみかんの方がおいしいわよ!」などと、使われているみかんの評価をしていた。
 それに笑いながら、マリィはシフォンケーキを食べる。添えられてるホイップクリームにはヨーグルトが混ぜられてるのかさっぱりしていて食べやすい。自分でも作れたらなぁ、なんて思っていると、テーブルの片隅に置いていたスマホが振動し始めた。

「あ〜ぁ、マリィとのデートもまた終わりか〜」

 嘆くノジコに、苦笑いしながらスマホの画面には“エース”の名前が表示されている。さすがにここで出る訳にはいかないので、拒否ボタンを押し、すぐにメッセージを送った。まぁ、すぐにまた電話がくるのだが、少しくらい我慢してほしい。

『今どこだ』
『ノジコとデート中だよ』
『買い物行くんじゃなかったのかよ』
『行く予定だから、スーパーで待っててよ』
『迎えに行く、どこだ』

 そんなやり取りをノジコに見せると苦笑いするしかないらしい。

「サボはいないみたいだね」

「……そだね。もうすぐ体育祭あるし、大変なんじゃないかな」

「生徒会役員も大変だね。さて、エースをあまり待たせると面倒だし、行こうか」

 ある程度食べたし、お土産としてシュークリーム(高い)も購入しておいたのを持つとカフェから出る。どうやって場所を知ったのか、エースとデュースが待っていた。

「え?なんで場所わかったの?」

 まだ連絡してなかったし、と問えばノジコが一緒にいる時点でルフィを通じてナミちゃんに聞いて貰ったらしい。そういう変な所で弟使うの辞めなよ、といつも思ってしまう。

「はぁ、ナミのヤツ……」

 ノジコがやれやれといった風に両手を掲げ呆れていた。

「おい、スーパー寄るんだろ?」

「うん…ノジコどうする?」

「あー、デュースもいるみたいだし、送ってもらうよ。じゃ、また明日ね!」

「また明日ね」

「デュース、ちゃんと送れよ」

「わかってるよ!じゃあ、また明日な」

 ノジコが一緒だと知っていたからか、ちゃんと送れるようにとデュースを連れて来るあたり、エースは気遣い屋さんだなぁとたまーに思う。だけどこうしてノジコとのデートを邪魔はしてくるエースやサボにはムッとしてしまうのだ。干渉し過ぎ!と思いつつ「ほら、荷物寄越せ」とお土産のシュークリームを持ってくれるエースになんだかんだと絆されてしまう。

「……エース、荷物持ってくれてありがとう!」

「おぅ。今日のメシ何にすんだ?」

「う〜〜ん、何がいいかな?」

「ルフィなら肉!ってしか言わないだろうけどな」

「あぁ、うん、そうだね」

 困ったことに我が家は男共がやたら大食いでエンゲル係数がとんでもないことになっている。特に末弟のルフィなんかはどこに入るの?どこに栄養がいってるの?と分からないくらいに食べているのに痩せている。まぁ、食べた分動いているのもあるけど、燃費も悪い。
 エースも勿論大食いの類だが、もっと意外なのはサボだ。見た目、学校で『王子様』と言われるくらいの優男風なのに、ルフィ、エースに負けずに頬を膨らませながら食べるからギャップに驚いてしまう。小中学校から一緒の同級生は慣れてしまっているが、高校から女生徒たちはまだ知らないのが怖い。

「どうかしたか?」

「……うーん、驚きの食欲について考えてた…」

 なんだそりゃ!と笑うエースに、君等のせいよ…なんて思いながら、スーパーへと目指す。いつも買い物に来るからか、馴染のおばさんたちには「今日も仲良しねぇ」などと言われてしまう。カートを押してついてくるエースに、サボもだけど黙って付き合ってくれるのは本当に優しいんだな、っていつも思う。ルフィだとすぐに「肉!!」とカートを押して行ってしまうから、行きたい!と言われても、どうしてもエースかサボを頼るようにしている。

「今日はみんなで餃子作らない?」

「おぅ、いいな!」

「キャベツ増し増しでひき肉誤魔化しちゃお」

「ルフィが文句言いそうだな」

「ん〜、じゃあ、具材変えてみるとか」

 あーだこーだ言いながら、店内を見て回る。牛乳あったっけ?ルフィが今朝飲みきった。もう?!卵は?足りねぇかも。そんな会話が楽しくなる。
 セルフレジの「アリガトウゴザイマシタ」を聞き、外に出ると夕暮れなっていた。

「早く帰んねぇと、ルフィが騒ぎ出しそうだな」

「そだね。荷物、そっち持つよ」

「いいよ、お前には重いから。そっち持ってろよ」

 両手に持つエコバッグよりお土産として買ったシュークリームの箱を渡されてしまう。エースたちは私に重い物を持たせようとしない。いくら女だからといってそんなか弱い訳ではないのだから、やめて欲しいと思っている。
 だから、一度文句を言ってみたら「お前に重いのは持たせたくねぇ…」と過保護的な事を言われた。サボ曰く「特別だから」ともいうが。 

「……重かったら言ってよ?半分持つから」

「はいはい」


 多分、重いという言葉はマリィにとっては重いのだが、エースにとっては軽いくらいだった。前世むかしほどではないにしろ、あのジジイに「男たるもの女を守れくてどうする!」という騎士道のような、いや、女性マリィはなにがなんでも守れ!という精神なのかエースたちは鍛えられている。
 マリィが「重い?」と心配してくるが、全く重くなどない。でも気遣ってくれるマリィが愛しくて、隣に並び、彼女の速度に合わせるのが今のエースには至福である。
 だが、呼び出され中(掃除をサボった件で説教)にいなくなるのは本当に勘弁して欲しい。イスカから解放され、教室に戻ればマリィの姿はなかった。デュースに肩を叩かれ「ノジコとデートだと…」と疲れた顔をしていたが、まさか女二人のだけで行ったのか?!となった。ノジコとて顔とスタイルは良いのだ。ナンパされかれないのを理解しているのか……いや、自覚はしている、アイツはそういうヤツだ。ただ、マリィは自分はノジコのオマケだど思っている節があるから自覚して欲しいと思っている。
 前世むかしからの感情だとしても、エースにとってはマリィは今世いまも前世むかしも変わらず大事な存在であることに変わりはない。何度かドラゴンおじさんから、それは本当にマリィ・・を想っているのか?と訊かれた。何度も考えたりもした、サボやルフィにも相談した。でも、それでも、と行き先にはいつもマリィの顔だけが浮かぶのだから、この気持ちは間違ってはいない。きっとおれはなにがあろうとマリィしか好きにならないのだと思う。
 ドラゴンおじさんにそう宣言すれば、眉間に皺を寄せたまま「………同じ家に住んでいる以上は、その……家庭を乱すようなことはしないでくれ…」とぐったりしたように言ってきた。
 前世むかしとは違い、今は家族と暮らしている。そりゃ、前世むかしのような事は出来るはずもない。当時はサボもドラゴンもいないし、ルフィは……やや邪魔はされていたが、ちゃんと時間はくれた。ジジイは例外。バレた時はヤバいとマリィと理解していたからバレないように注意していた。
 今世いまは、まだ恋人繋ぎも出来ない関係で、物足りないけど二人で平和な世界を満喫するのは悪くないとは思っている。でも、寝起きの顔やお風呂上がりの姿を見てしまうと、前世むかしの感情が湧き出て、部屋に連れ込みそうになるので、せめて告白はしたいと思っている。
 隣で鼻歌混じりにニコニコと笑うマリィを眺めながら、思わず頬をむにっと掴んだ。

「ひゃにふんの?」

「……なんとなく」

「はぁ?!」

 頬から手を離せば、眦を上げながら怒るマリィの頭に手を乗せて「ワリぃワリぃ」と軽くポンポンとする。

「……なんなのよ、」

 ほんの少しだけ頬を膨らませながら、口を尖らせるマリィがあまりにも可愛すぎで口元を手で覆う。

「……エース?」

「……なんでもねぇよ」

 参った。ニヤケそうになる口元を隠しながら、一歩先に歩くと「待ってよ!」とパタパタと付いてくる。
 こんな表情かおを見せられなくてとりあえず先に歩いていると、ぐい!とブレザーを引っ張られる。

「マリィ?」

 振り向けば、俯いている彼女の様子にエースは怪訝になる。

「…………エース、置いていかないで・・・・・・・・…」

 顔をあげた表情にドキッとする。まるで迷子のような不安そうな、前世むかしのマリィの感じに思わず手を掴む。

「へ?」

「ん?寂しかったんだろ?手ぇ繋いでやるよ」

「はぁ?そんな訳ないじゃない!」

 むぅとそっぽ向いたマリィを見て、戻った・・・と思った。先に歩き出した彼女を追いかけたのだった。
 帰宅すれば、ルフィはまだだったがサボが帰ってきていた。今日もジジイは遅いらしい。多分食べてくるんだろう。
 サボはマリィに今夜のおかずを聞くと、じゃあみんなで作るか、と同じ事を言うと着替えてくるように促した。やがてルフィが帰ってくると、餃子の皮に包めないくらいに具をのせるものだから不格好なのはルフィのにした。
 後片付けは主にエースやルフィがすることにしている。サボはマリィの手伝いを良くするので別だ。
 マリィが部屋にいるのを確かめてから、エースは今日の事を二人に伝えた。ルフィはおれもスイーツビュッフェ行きたかったと言っていたが、話はそうじゃない。
 マリィが時々、前世むかしに見せるような顔をする時がある事を話すと、二人は顔を見合わせた。

「ねーちゃん、記憶戻んのか?」

「でも、マリィは悪魔の実食べてないだろ?」

「あ、でも、とーちゃんが言うにはねーちゃん……あっ!!」

 ルフィの思わずといった感じの発言にエースとサボは弟を見つめる。

「ルフィ?」

「どういう意味だ?」

 前に、前世むかしの記憶があるのは大体能力者が多いと聞いていた。だからこそ、ルフィやエース、サボ、ドラゴンは前世の記憶があるのだ。だが、エースたちの記憶ではマリィは能力者ではなかったはずだ。
 ルフィのウソ下手なのは前世むかしと変わらない。目を泳がせ、口元もそっぽ向いている。何かを知っているに違いないのだ。
 エースとサボはルフィから話を聞こうとするも、運悪くマリィが降りてきた。

「ねーちゃん!!」

「え?ルフィどうしたの?」

 だだだ!とマリィに走っては抱きついた。まだマリィの方が背が高いが、ルフィの顔はマリィの顔にくっついていた。

「え、エースとサボがイジメようするんだ!」

「え?二人が?!」

 ルフィに甘いのはマリィだけではない。エースは厳しいところもあるが、結局はルフィに甘いし、サボも同じだ。

「ルフィ、何かしたの?二人の食べ物食べちゃったとか?」

「まだしてねぇ!」

「まだ、って……そうだ!シュークリーム食べよう?」

「シュークリーム!?」

「うん、今日のスイーツビュッフェの美味しかったから、みんなで食べようって思って」

「食べる!!」

 ぶんぶんとルフィにないはずのしっぽが揺れている気がする。エースたちはとりあえず追求するのは今は止めた。マリィがいる以上は訊けない。

「二人はどうする?」

 エースとサボは顔を見合わせ、食べると頷いた。紅茶?コーヒー?と聞いてくるマリィにルフィは追求されないようにと「ねーちゃん、おれが手伝う!」とくっついてキッチンへと向かった。
 ルフィではカップを割りかねないから、結局、エースとサボもキッチンへと行った。そこで見たものはオマケでついてたらしいチョコを食べさせてもらっているルフィがいたのだが、ペロリとマリィの指まで舐めたので、エースがルフィ!と声を荒らげた。うわ!と驚いたルフィはシュークリームの箱をリビングへと持っていき、サボは苦笑いしながら、並べてあったカップを運んでいった。
 マリィはルフィのやった事に「まったく」と笑うだけだが、そんなのを見せられたエースは面白くはない。
 ムスっとするエースにマリィはどうしたのか?と首を傾げながら、あぁ!と声をあげるとエースに声をかけた。

「エース」

「なん「はい、あーん」……」

 下から見上げてくるマリィの手にはルフィにあげた同じチョコの欠片があった。

「……なっ…」

「あ、エース、甘いのダメだっ……?!」

 思い出したように手を引っ込めようとしたマリィの手を掴むと、エースは彼女が持つチョコを指ごと口に含んだ。
 舐め取るようにチョコを舌で絡めた後、ちゅば!と指についていたチョコを吸いあげた。

「……あま、」

「……え、エース…」

 真っ赤になるマリィに、なんだか嬉しくなり、エースはなんでもない風に装い、ぽん、と頭を撫でるとリビングへと戻る。
 途中で振り返ると項うなじまで真っ赤にするマリィが見えて、エースはほくそ笑んだ。意識してもらいたいのだ、今世いまも。彼女を好きだから。

(…………あぁ、早く食べてしまいたい…)

 薄ピンクの唇も豊かな胸も両手で掴めてしまう細いウエストも、良い形の尻も、柔らかい二の腕も程よい太ももも、全部に触れたくなる。
 邪な思いを胸に、今は家族団らんをするべくリビングへと向かう。

「ねーちゃーーん」

 ルフィの呼び声に、マリィが「い、今行く!」と吃りながら返事をするのに口の端があがる。小走りで近づいてくるマリィが追い抜き様に「エースのえっち!」なんて舌を出しながら言うものだから、エースはあえなく膝から崩れ落ちた。

「えぇ?!ど、どうしたの?エース!?」

「……おま…ふざけんなよ……」

「え?な、なにが??」

 あまりの破壊力にエースは廊下に頭をつけて、悶えていた。マリィが訳が分からずに、「さ、サボ〜!」と助けを呼ぶと、「どうしたん……あぁ、マリィ、先にルフィと食べててくれ」とエースを見ながら言う。

「え?で、でも、エースが……」

「大丈夫!気にしなくて平気だ」

 背中を押してリビングへ行く彼女を見送ってから、サボはエースに近寄る。

「……大丈夫か〜」

「…………ダイジョバナイ…」

 両手で顔を覆いながら、デカい図体で廊下をゴロゴロするエースにサボは呆れながら、その場にしゃがみ込む。
 サボだって、マリィの事は前世むかしから好きだ。ただ、マリィはエースだけを見つめていたのを知っていた・・・・・。再会出来たのは、エースとの子どもが大分大きくなってからだった。多分、初めてエースと会った時と同じくらいだった思う。一人で子どもを育てるなんて大変だろうと、一緒に育てようと提案したが──玉砕した。エースの墓の傍から離れるつもりはないという彼女はエースだけをただ見つめていたのを、苦い思いで見つめていたものだ。
 エースはマリィが前世むかし、自分の子どもを産んだことは知らない。ルフィとドラゴンさんが言うべきことではないと決めたらしい。ルフィはエースに罪悪感をこれ以上持って欲しくなかったのと、それでエースがマリィから離れてしまうのではないか、と不安なっているからだ。ルフィはマリィとエースがくっつけば良いと願っている。エースの為、というよりはマリィの為らしい。

『ねーちゃんにはエースしかいねぇんだ』

 悔しいけど、きっとそう決まってんだ、と話すルフィは年相応ではなく、前世むかしのルフィに見えた。
 閑話休題。今はゴロゴロと転がるエースをどうしようか、とサボは思うが、意外にも短絡的な彼は足で転がるエースを止めた。

「エース、マリィが可愛かったのは分るが、早くしないと」

「シュークリームうめぇ!!な、ねーちゃん、もう一個食っていいか?」

「人数分しかないならダメだよ……お姉ちゃんの少しあげるよ」

「ねーちゃん、だいすきだ!!」

 リビングから聞こえる声にエースはすっくと立ち上がると、リビングへと突撃していた。

「ルフィ、おめェってヤツは!!」

 ぎゃあぎゃあと始まる兄弟ケンカに、マリィがオロオロとしていたのを見たサボは「ここは任せて、部屋に戻っていいよ」と言った。
 こうなったエースとルフィを止めるのは面倒だからいつも物理的になんとかするが、あまりマリィには見られたくはない。

「皿とかも片しておくから気にしなくていいよ」

「……う、うん……喧嘩、無理させないようにしてね!」

「大丈夫だ。そうだ、お土産ありがとな」

 礼を言えば、どういたしまして。と笑顔が返ってきたが、エースを撒いてノジコと二人だけで行ったのは明日あたり注意しておこうと思った。
 ノジコやコアラたちに過保護と言われるが、大事な女の子が変態に目をつけられたことがあると聞けば、過保護にもなろうってものだ。
 ぎゃあぎゃあと騷ぐ二人は、エースの分のシュークリームはなんとか死守されたようだが、エースが許せなないのはマリィの食べかけのをルフィが食べたのが許せなかったらしい。姉弟なんだし、いいじゃないか、と思うが好きな女との間接キスをそう簡単に許せる男はいないだろう。まぁ、サボから見れば、エースも許せない存在ではある。
 自分だって、あわよくば彼女と恋人になりたいという気持ちがある。でもこの恋も報われないことを直感的に分かっているのだ。出会った順なのか、前世からの繋がりなのか、彼女の気持ちはまだ無自覚だとしてもエースを見ているのをサボは知っていた。だから、だから少しくらい邪魔したっていいだろうと思っている。
 朝、一緒にご飯を作る時は虚しいとは思いながら新婚気分になれる。お弁当のおかずが余った時は、ナイショねと「あ〜ん」してくれる。その可愛らしい仕草に部屋に戻った際に頭を壁にぶつけてたりした。

「サボって、家事手伝ってくれるし、良い旦那さんになりそうだよね」

 そんな下心もなく純粋に言うものだから「じゃあ、マリィの旦那さんになろうか」と言ってしまったが、きょとんとされて「わたしにはもったいないよ」とお断りされてしまった。
 あれは照れたとかではなく、完璧なくらいに脈ナシで、ちょうど居たドラゴンさんに肩を叩かれたくらいだった。恥ずかしくて穴に入りたくなった。その日、エースへの当たりは酷かったと思うが、そのくらいは良いと思っている。
 とりあえず、二人の喧嘩を辞めさせた。ぜぃぜぃと息を切らす程なのかと思いながら、自分のシュークリームを見ると、無残な形になっていて、サボは再び二人の頭にはたんこぶを作ったのだった。
 ルフィが言った事が気になったものの「おれ一人じゃ判断出来ねぇから、とーちゃんに決めてもらわねぇと言えねぇ」と言うものだから、エースとサボは自分たちがまだ知らない何かがあるのかと訝しい顔をするしかない。
 エースは納得いかない感じだったが、マリィに関してエースが知らない事の方が多いだろう。それはエースの為であり、マリィの為でもあった。エースがなんの罪悪感を持たずにマリィと向き合えるかにもよる。
 サボは自室に戻り、はぁ、とため息を吐く。今も前世むかしもサボが大事なのは兄弟であるエースとルフィだ。無論、マリィも別枠で大事であるが、エースとルフィとは切っても切れない絆がある。次に大事なのはかつての仲間たちと、ドラゴンさんと家族として迎え入れてくれているガープもだ。

「…………いっそのこと、早くくっついてくんねぇかな…」

 そうならば、早くこの気持ちにケリをつけられるのに……ヘタレなエースのせいで、未だに片思いのままだ。マリィの気持ちも大事だが、サボとてキツいのだ。でもまだダメなのだ。まだ足りないとドラゴンさんやルフィが、おれもそう思っている。


-3-

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