04
北の森は、入り口付近にミスターベアがいる小屋があるが、森自体は外部から守るため深い。たまに遭難する人間もいるので、避難小屋があった。
中に入ると、ややカビ臭い匂いがするも雨を凌げるなら…と思った。
外は、間一髪というか激しい豪雨となっている。が、来る途中で濡れた服を乾かす為、棗は薪にアリスで火を着けた。
パチパチと燻る火を見ながら蜜柑は黙ったままだった。
しばし無言のまま時が流れていく。
やがて、独白なのか話しかけているのか曖昧な感じで蜜柑がしゃべり始めた。
「…ウチ……流架ぴょんの事…ほんまに好きなんよ…?嫌いやないんよ…」
「…………」
「それなのに…なんで…?」
「…………知るかよ…」
「そ、そやな……」
棗にとっては悔しくなる言葉だった。
やはり、蜜柑は流架が好きなのだど…。
無意識に自分は拒否された気がした、しかし……聡明な棗には、なにか負に落ちない何かがあった。
備えつけられていた毛布に包まり、蜜柑は揺らめく炎を見つめていた。
なんで…?
キスされると涙が出そうになったんだろう…?
別に本当にはじめの頃は、ただ恥ずかしくていた。
がいつの間にか…キスされる度、胸が苦しくなっていた。
確か、あれは―――
「………お前…流架を好きなんだろ?」
不意に真面目な顔の棗がこっちを見ていた。
この顔には見覚えがあった。初等部の頃、初めてのアリス祭の後夜祭で見た顔だ。
そして、初めて名前を呼ばれた時の―――。その途端、胸が熱くなって苦しくなる。
「…えっ…?うん…スキ……」
「………愛してるのか?」
「へっ?あ、愛!?………愛してる?」
愛してる?…なにか違う…気がする。
流架ぴょんは好きだが…それは……それは……?
ウチがいつもドキドキさせられるのは……いつも胸が苦しくなるのは……そばにいて気になるのは……――――あっ…なつめ………?
以前流架とキスしてる所を見られて以来、キスするのが苦痛だったのは…棗に見られてしまったから…?
ほんの偶然だった。放課後の教室で、何度目かのキスをした。
ふと目を開けたら、ドアの隙間から黒髪が見えていた。
見られた?
見られた?
見られた?
それからだった…泣きたくなったのは…。
あの事に流架は気付いていたのだろうか…?
自分のまわりを覆っていた薄絹の帳が突然切り落とされかのように、蜜柑は突然、理解した。自分が誰を思って泣いていたのかを…。
……考えた事もなかった。自分が棗を好きだなんて…。
棗は…ウチの事…どう思っているんだろう?
To be Continued
'04/11/11