06

GAKUEN ALICE

それぞれの思いを胸に宿し、夜が明ける。

これからどうなるのだろう。

これからどうしたいのだろう。

これからどうすればいいのだろう。

複雑な思いとは裏腹に 目の覚めるような青空があった。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



蜜柑は日の光に眩しそうに目を擦り、起き上がった。


「…む…にゅぅ…?」


ふと隣を見ると、棗の姿に真っ赤になりズサズサっと後退りして壁に激突した。


―ガンッ!!

「っつぅ…」


頭を押さえるのと同時に棗が目を覚ます。


「……………?…」


棗はボーっとした表情でいる。


「……………みかん…?」

「…へっ……」


不意に名前を呼ばれ、蜜柑は再び顔を赤くした。が、急に紅い瞳を見開くと今の状況を思い出したようだ。そして


「何やってんだ、ブス」

「んなっ!!ブスとか言うなっていってんやろ!!だ、だいたい…なんで棗がウチの横におるねん!!」

「……………」


じ―――っと見つめてくる棗に蜜柑は、顔を赤くしながら


「…な、なんやねん!!」

「………なんでもねぇよ」


ぼそり呟くとすっくと立ち上がり、小屋から出ていこうとした。


「オラ、行かねーのかよ」

「…あっ……ちょお、まちぃ〜!!」


二人は無言のまま森から出ようと歩いていた。その時、ガサガサとなったかと思うと


「佐倉っ!! 棗っ!?」


聞き覚えのある声にバッと振り向くと、流架、蛍、委員長がこっちに向かって走って来た。


「蜜柑っ!!」


蛍と委員長は、すぐに蜜柑のそばに駆け寄ったが、流架は蜜柑の近くにいた棗に目がいった。
棗も流架に視線を合わすも昨夜のコトがあり、うまく顔を見れなかった。

そもそも いつの頃からか…流架の顔をまともに見れなくなっていた。
流架は、何か言いたげな顔をしたが、何も言わず佇んでいた。


「……流架ぴょん…」


不意に、蜜柑が流架に寄っていくのを見て、棗は一瞬にして 寂しさが過った。
昨日 あんなにも近くにいた彼女が、自分から離れて 自分ではない男に近づくのにショックを受けた。
少しだけ期待していた分 胸が苦しくなる。


(…俺のコト………)


そう口に出かけるも 瞳を閉じると、踵すを返し棗はそっとみんなから離れた。
その行動に少なからずも視界に入ってた蜜柑は、切なく辛くなった。
しかし、自分の【彼】と名のつくモノは【棗】ではなく、目の前にいる【流架】なのだ。
ふと、顔を上げると流架もまた どこか切なく苦しそうな顔をして 棗の背中をみていた。


「………寮に…戻ろうか…」

「…うん……」


そう言って、流架は蜜柑の手を取り、気を利かせて、先に歩いていく蛍と委員長の後を追った。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



戻る途中、蜜柑は昨夜の無断外泊をした事の罰則を恐れていたが、そこは蛍と委員長がなんとかごまかし、バレない様にしていてくれた。


「そういう訳だから 感謝しなさいよ」

「やっぱ、蛍は大事な親友や!!委員長もありがとな♪」


蛍に抱きつきながら、委員長にもお礼を言うと


「うぅん、気にしないで。蜜柑ちゃん」

「委員長、ちゃんと恩に着せた方がいいわよ、このバカには。わざわざアリスまで使ったんだから」

「ほーたーるぅ〜」

「寄るな!!ハナ水女!!ちゃんと 寮に戻ったらゆっくり休みなさいよ。心配かけて…」


口が悪いが心配してくれる蛍に、蜜柑は嬉しそうにまた抱きついた。

蛍に部屋の前まで送ってもらい、ドアを開けようとした時


「……何があったか分からないけど…アンタはアンタらしくいなさいよ。……全てに決着ついたら、教えなさいよ。蜜柑」

「………うん…ありがとな…蛍」


蜜柑は、部屋に入るとベッドにバフリっ!!と横たわった。


ゆっくりと口唇を指でなぞり、昨夜の事を思い出す。
あの紅い瞳に見つめられ 自分は金縛りにあった気分だ。

…どうして 彼は キスをしたのだろう…

そんな事を考えてると

――トントン

ノックする音がして、カチャリとゆっくりドアを開けると――――流架がいた。

「流架ぴょん……」

「……ちょっと…いいか?」

「…う…ん……」

その手には、昨夜使っていたテキストがあった。
中に入ると机の上にポンっと置いたまま、流架はふり返らなかった。

お互い、何を話したらいいのか分からず沈黙が続いた。が、ふぅ〜とため息を吐かれ


「………昨日は…ごめん」

流架が口を開いた。
ふと俯いていた顔を上げると、まっすぐ 流架が見つめてくる。その碧玉の瞳は、切なそうで哀しげに見えた。


「流架ぴょん…その……ウチの方こそ…突き飛ばしたりして…ごめん……ごめん……」


再び下を向きながら、謝る蜜柑に流架は、近付き手を伸ばそうとすると、蜜柑はビクリっと身体を震わせた。
その瞬間 流架は何かを悟った。ゆっくりと手を下ろすと


「………昨夜…棗と何かあった…?」


その言葉に蜜柑は、再び身体を震わす。


「!! な、何もっ……何もあらへん…」

「ウソだね」

「本当に!!…何も……ない…」


ブンブンと首を横に振る姿を見ながら、流架はある事を質問してみた。質問というよりは確認に近かった。


「……………もしかして…佐倉……気付いた…?」

「……え?」

「…棗のコト 好きだって…」

「!? えっ!!なんっで……あっ…」



不意うちの言葉に蜜柑は驚き、誤魔化そうにもすでに流架にはバレていた。流架は、ため息を吐くと


「……そっか…やっと気付いたんだ…本当の気持ちに……」

「……本当の…気持ち…?」

「………俺は佐倉のコト 本気で好きだから…気付いてたんだ…佐倉の本当の気持ちに……それなのに…ごめん……縛りつけて……」

「……流架ぴょんは…悪いなんてコトあらへん……ウチが…悪いんや……ごめん…ごめん……ウチってサイテーや…無神経や…」

「…………そうだね。でも……いいんだ。それでも俺は佐倉と…ほんの少しの間だけでも付き合えたんだから……無理させてごめん……だから…俺から言うよ。
 『別れよう』俺は佐倉のコト好きだけと…佐倉は棗のコトが好きなら…俺はもう……付き合えない」


――ズキン


心に重しがのしかかった気分だ。

『別れよう』

これは望んでいたコト?
ウチは 流架ぴょんと 別れたかったんやろか?
ウチは このまま…… この優しい人を傷つけていいんやろか?

でも……棗を好きなまま 付き合うなんてコト、出来へん。そんなコト したらあかん。
でも このまま流架を失うのも、また 哀しいのだ。

そう思うとハラハラと涙が零れてきた。

こんな時 泣くなんて最低や。
でも 気持ちが乱れる
何が 哀しいのか…
何が 苦しいのか…
それすら分からなくて 涙だけが 出てくる。


「……佐倉…」

「…ごめん!!……泣くなんて…ホンマに最低や!!」

「………少しは…俺のコト 好きでいてくれた?」

「…大好きや!!今でも…流架ぴょんのコト……でも…」

「…棗の方が大きいんだろ?」

「―――…っ!!」


コクリ…


流架の言葉に頷くしか出来なかった。

なぜ この優しい人を傷つけてまで、彼を選ぶのか――なぜ 彼じゃなきゃいけないのか――
胸が締め付けられる。

ふわりと手を握りしめられ、顔を上げると哀しげな碧玉の瞳が映る。


「…泣かないで…佐倉…」

「……………っ…」


何を言っても謝るだけの蜜柑に、流架は


「…ありがとう…苦しめるつもりはないから…ごめん…でも笑って…俺は佐倉の笑ってる顔が好きなんだ…」


その言葉に蜜柑は作り笑いをする。


「…今まで……ありがとな。楽しかったよ」


そう話すと流架はそっと、蜜柑の頬に口付けをした。


「……さよなら…明日からは友達に戻ろう…」


そう言い残し、部屋から出ていった。
残された蜜柑は、苦しめるコトしか出来なかったコトで泣いていた。
いなくなったドアの向こうに語りかけるように


「……ウチはウチなりに…流架ぴょんのコト…好きやったよ…ありがとう…ごめん……傷つけて…ごめん……」


ドアに寄り掛かり、蜜柑の言葉を聞いた流架はそまま外に出た。

眩しい位の太陽がなんだか目に染みて 辛かった。

森の中に入ると動物たちが心配そうに集まってくる。
うさぎをそっと抱き上げると暖かかった。

ガサリ

人の気配がして振り向くと黒髪の少女がいた。
彼女は、そばに寄ってくるとプレスされたコットンのハンカチを出した。


「……バカね。泣く位なら…言わなきゃいいのに…」

「……じゃ、どうしろって言うんだよ……好きな女の気持ちが離れていくのを目の前で見てて平気な程、大人じゃないんだよ…」

「………そうね…ごめんなさい…」


やや節目がちにする蛍をみて、流架は言い聞かせるように話しだした。


「………俺は…佐倉も好きだし…棗も好きなんだ……だから…二人が幸せになるなら…それでいいと思ったんだ……邪魔者は俺だから……俺さえ諦めれば…いいって思ったんだ……」

「………………」

「……偽善かな…?俺は…逃げたかったのかも…佐倉に本当の気持ちを言われる前に……でも…なんで……自分から振ったのに…………涙が出るんだろう…?」

「……バカね…天気雨のせいよ…」

「きっと…俺も 佐倉も 棗も……どこかで すれ違った………ただ…それだけなんだ…」





To be Continued




あとがき

はぁ〜今までにないくらい長くなりました。
『すれ違う感情 act.6』でした。
とうとう別れてしまいました、流架と蜜柑。
しかし、流架はいいヤツなのか自分が可愛くて傷つきたくないのか…どっちなんですかね?
見事に表現がバラバラで…読みにくいかと…ι

そして、これで終わる予定だった「すれ違う感情」次の棗独白もあります。
それが終わりましたら第3部になります。
長くてすみませんですm(__)m



'04/12/3


-111-

学園アリス top