05
流架を見送った後、蜜柑のいる教室に蛍と心読みくんが来た。
蜜柑の姿を確認すると、二人は顔を見合わせ
「僕…あっちに行くね」
「…………そうね…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…蜜柑」
「……あっ…蛍っ……ごめんっ!!遅くなってもうた!!行こうか…」
自分の机からノートを取出し、慌てて蛍に近寄った。
―バカンッ!!
「全く、遅いのよ…」
「…っ……ご、ごめっ…」
「……散歩でもしない?」
「へっ?」
「…そんな泣きっ面じゃ、すぐ戻れないでしょ」
そう言うと蛍は、さっさと歩きだし、蜜柑は蛍を追い掛けた。
「あっ…待って…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
北の森に入り、ゆっくりと前を歩く蛍が
「…何があったかなんて敢えて聞かないでおくわ」
「っ蛍!!………ありがとな♪」
言葉に出さなくても通じ合う蛍が大好きで、蜜柑は抱きついた。
「…っていうか、メンドクサイ事に巻き込まないでね」
「………アンタ…」
蜜柑は、何度目かのため息をつくと容赦なく、蛍の愛【バカン砲】が飛んできた。
「ウジウジ考えても何もならないわよ」
「………うぅっ…ほーたーるぅぅ〜」
「アンタはいつも笑っていればいいのよ。」
「………ぅん」
ぷにっと愛らしい頬をつねられ、蜜柑は頷く。
何か、感じたのか蛍は後ろを振り返ると
「…………ちょっと用事思い出したから…ココで待ってて」
「ココでっ!?森の中やでっ!!」
「そう…ココで。すぐ戻るわ。待ってなさい」
あまりの迫力に蜜柑は、何も言えず、うんと首を縦に振った。
「…早よ…戻って来てな…」
不安そうに送る蜜柑を置き、蛍はガサガサと掻き分けていくと、前方の茂みから黒髪の青年が現れた。
あちらも気付き、すれ違いざまに
「……あの子はこの先よ……これ以上、泣かせたら只じゃすまないから」
「…もう、そんなつもりねーよ!!」
「そぅ…クスっ……ハラ括ったのね」
「………フン」
蛍を見送った蜜柑は、森の中で待っていたけれど、もう夕方で森はいっそう薄暗くなっていた。
「…蛍…早よ戻ってこんかないな…おばけ出そうで怖いわ…」
心細くなっていたトコロに、ガサガサと音がした。
蜜柑は、恐くなり音が近づくと緊張が頂点に達し
「ギャ―――!?おばけぇぇぇ―――っ!!!?」
「………誰がおばけだ」
「イヤゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「…落ち着けっ!!水玉」
「………へっ?な……棗かいっ!?脅かすなっ!!ボケぇぇぇ!!」
「………うるせぇ…」
耳をつんざく声に、棗は耳を塞いだ。
二人は互いを見ると、しばし沈黙した。
(……なんか…久々だな…こんな会話…)
(…あっ…自然に喋れた…)
((ずっと…あの日以来話してなかったのに…))
例え、憎まれ口を立たれてもこの当たり前の会話が、嬉しくて、くすぐったくて…口元が弛む。
「「…………………」」
何から言い出したらいいのか分からず、二人は下を向いていたが、気になる事があったのか、蜜柑が恐る恐る聞いた。
「……その傷…どうしたん?ペルソナにやられたん?」
心配そうに手を伸ばしてくる蜜柑の姿が…心配されるのが…嬉しかった。
「……違う………流架に…」
「流架ぴょん…?何しとるん、アンタら…」
「流架に…素直になれって言われた…」
「は?」
「俺がウソついていたから」
「…ウソ?」
「……あぁ…」
真っすぐ見つめてくる紅の瞳に、蜜柑は動けなくなる。
「俺は――お前の事好きなのに…ずっとウソをついていた……自分にも…お前にも…」
「………えっ…」
言葉に赤くなるしかない蜜柑は、呆然としていたが、手を引っ張られて抱きよせられた。
わたわたと焦り、パニくる蜜柑に対し、棗は抱きしめたまま言葉を続けた。
「俺は…蜜柑が好きだ」
「……っ!?」
しばらく抱きしめたまま、返事を待つがなかなか言葉が返ってこない。
少し、照れたような声で棗が再び口を開いた。
「…………なんか…言えよ」
見つめる彼女は、いつも以上に真っ赤になり、恥じらう姿がやけに可愛くて…そんな姿を見ていたいが返事が欲しい。
俺は―――間に合ったのだろうか…?
そんな焦りすらあり、早く返事が聞きたかった。
蜜柑は、なんと答えたらいいのか分からず、下を向いていた。
嬉しくて、恥ずかしくて…うまく言葉が出てこない。
でも、もう後悔はしたくないのだ…自分の気持ちを知っているのだから…。
顔をあげ、見上げると紅の瞳に自分が映る。
ドキドキと鼓動が早まる中、口を開いた。
「…なんかって……ウチは――――――…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
森の中が静寂に包まれた頃、中庭のすみっこで踞ってるスミレの元に、心読みが近づいた。
長く伸びた影に気付いていたスミレが、振り向くと相変わらず表情が少ない彼がいた。
心読みも泣き腫らした瞳をみて、ほんの一瞬真面目な顔をした。
「何よっ!!来ないでよ!!」
「…………………」
「………心の中を読まないでよ!!」
「…………………」
「あっち行きなさいよっ!!見ないでよ…私の中を……」
「…………………」
心読みは、何も言えずくるりと向きを変え、行こうとした時、制服を引っ張られた。
またスミレを見るとスソを掴んだまま、泣いていた。心読みは、そのまま何も言わず、スミレのそばにいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日が西に傾き、美しい夕焼けが見える屋上で、流架は一人、夕日を眺めていた。
そんな場所に一人の少女がやってきた。
「…やっと、まとまったみたいね」
「………あぁ……やっとな…」
「……お疲れさま…」
隣に来た蛍に、流架は目線も合わせず答えた。
そして、独り言のように呟きはじめた。
「…俺は…卑怯だよな…」
「………そぅ?」
「…棗の気持ちを知っていて…棗が俺に遠慮する事を分かっていて…棗の幸せを願っているのに………佐倉を手に入れたんだ…すべて……俺が悪いんだ…」
ドロドロと醜い感情が沸き上がる。
あんなに好きなのに…
手を離さなければならないなんて
なぜ、彼なのか?
いつも優しくしてたのは俺の方なのに…
あんな意地悪ばかりする棗に――…
「………でも、アンタは蜜柑の事、好きだったんでしょ?」
「…あぁ……」
「…なら、それでいいのよ。恋愛だもの…醜い気持ちよ。
誰もが悪くて、誰も悪くない。そんなものよ。誰も傷つかない恋なんてないわ。」
俺は…傷つくのが恐かった。
だったら…初めから……
「……………誰も好きにならないならいいのに…」
「バカね…それじゃ寂しいじゃない」
流架は、隣でクスッと笑う少女を見た。
なぜ、彼女には弱音を吐けるのかと…あんなに好きな佐倉の前では吐く事の出来なかった弱音を吐ける。
緊張もし、安らぐのはなぜか…?
そんな事を思い眺めた。
「……あ」
彼女の声に、前を見ると薄闇の天に一番星が輝いていた。
END
あとがき
終わったぁぁぁぁぁ!!
なんか、一番長かったね。この話。
やっと、結びつきましたよ。棗と蜜柑が。
さて、何げに最後の方CPになってますが、まぁ、なんとなくね…。
最後の蛍の言葉は、中学生とは思えない台詞ですが、実際こんなもんです。
まぁ、このシリーズの中で悪くないと言えば、パーマくらいです。
彼女は何も悪くないです。
最後の一番星ですが、友人が棗と流架のケンカにより
『この後は夕日に向かって走り、あれが俺たちの星だ!!』
とか言うの!?とか言ってきて、爆笑しました!!
ですから、最後に星を出しました(笑)
'04/12/14