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GAKUEN ALICE

深い深い海の底に、誰も知らない人魚の国がありました。そこでは、毎日美しい7人の人魚姫が歌を奏でています。
今日は、7番目の蜜柑姫の15歳のお誕生日です。蜜柑姫は、この日を楽しみにしていました。
なぜなら、人魚は15歳になると、初めて海の上にある世界を見にいけるのです。


「やったぁ!ようやくウチも一人前に上の世界を見に行けるんやね?」

「……そうね。でも海の中が一番安全なのよ?」

「そりゃ、蛍は前に行った事があるからやろ!!ウチは初めてなんやし〜〜」


蜜柑は、少し前に15歳になった姉・蛍に言いました。
蛍は、今採れたばかりのカニミソを食べながら淡々と話します。


「地上には『火』という危険なものがあるのよ、気を付けなさい」

「『ひ』?なんや、それ。どういう物なん?」

「この海の世界には相容れない物よ。地上の人間はこの『火』を使って魚たちを食べるのよ」

「……な、なんか怖いな…」


蜜柑は蛍の言葉にやや悪寒を感じた。が、やって来た使いの人魚の言葉に顔を明るくさせた。


「蜜柑姫〜トリトン王がお呼びですよ。こんにちわ、蛍姫」

「お父さまが?分かった、今行くわ♪ありがとうな、委員長」

「は、はい」


蜜柑は、満面の笑みを浮かべひゅーっと父の元へと急いだ。


「お疲れさま、委員長」

「いえ、これが仕事ですから」

「敬語……使わなくていいって言ってるでしょ」

「あ、はいっ!!…じゃなくて…うん」


蛍のほほ笑みに、委員長は慌てて言い直した。




   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇




華麗な泳ぎをして、蜜柑は父王であるトリトン王――それは公称であるが、本来の名前はナルである――の元へとやって来た。


「お父さま♪お呼びですか?」

「あ、来た来た。蜜柑ちゃん」


王は、美しい金髪の髪をなびかせながら、3つ又の槍を持ち玉座に座っていた。
一見、いい加減そうな王様に見えなくもないが怒らせると蛍姫の次に怖いのだった(姫の次かよ)


「ご用事ってなんですか?お父さま」

「うん、まずは蜜柑ちゃん。誕生日おめでとう」


ニコニコと普段可愛がっている末娘に向かって、父王は話かけると蜜柑は照れたように礼を述べました。


「ありがとうございます」

「さて、本題だけど今日から君も一人前の人魚として海の上に行けるようになりました。しかし、決して人間に姿を見られてはならないよ?
 この人魚の国を人間には知られてはいけないんだ。分かったね」


いつもは優しく茶目っ気のある父王だが――(蜜柑にはそう映ってる)真剣な眼差しに蜜柑は、ゴクンと生唾を飲み込んだ。


「…分かりました。ひとつ聞いてもいいですか?」

「なんだい?」

「どうして知られてはいけないのですか?」

「……我々人魚の存在が地上の人間に知られると、君だけではなく、この国に棲む他の人魚にも危険が及ぶ事なんだ。分かったね?海上に出ても人間に見られてはいけないよ」

「……はい」


蜜柑は唯ならぬ父王の雰囲気に、ぞくりとなりながら返事をした。
ナルは、いいこだ…と思いニコリと笑った。

父王の間を出て、蜜柑は言われた言葉を反芻し、ドキドキしていた。が、それもまた若い娘の好奇心には勝てないものだった。
誕生パーティーを終え、蜜柑は高鳴る胸を抑え明るい碧色の水面を目指して、どんどん泳いでいきました。


「あの光りは…なんやろ?」


水面に近づくにつれ、キラキラ光っています。
胸をときめかせて、初めて空気に触れた蜜柑が見たのは、薔薇色に染まった美しい空。


「…あれが、蛍やお姉さまたちが話してくれた『夕焼け』…すごい…綺麗や…」


夕焼けを見惚れていると、ずっと先に立派な船が浮かんでいます。
蜜柑は見つからないように眺めていると、夕闇の中、船には沢山の明かりが灯り、楽しいダンスの音楽が聞こえて来ます。
そして、ドーン!!という大きな音が上がると、夜空に赤や黄色の花が咲き乱れました。


「…っ!?は、花が生まれたっ!?」


蜜柑は驚き、もっと近くで見たいという好奇心が疼き、船に近づきました。
船に近づいた蜜柑は、船の上から海を眺める一人の男性に目を奪われました。
吸い込まれそうな漆黒の中に染まる黒い髪、そして、怖いくらいな紅い瞳、しかしそれは淋しそうにも見えました。


「……どうして…?」


なぜか蜜柑は、その男性をみて胸が詰まる思いをしました。
そんな男性を余所に、船のパーティーは夜まで続いていました。



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ゴォォォォォ――ッ…

しばらくすると、風が強くなり、あっという間に真っ黒い雲が輝く星を隠しました。唸り始める大波。嵐が来たのです。

バリバリバリッ!!!!

空から、唸る雷が落ちて船は二つに割れ、黒い波に飲み込まれてしまいました。


「大変やっ!!」


蜜柑は、海中に沈んでいく男性を抱きかかえて夢中で泳ぎました。嵐が過ぎ、お陽様が海に昇った頃、白い砂浜に着きました。
気を失った男性を寝かせ、蜜柑は祈ります。


「…お願いや……目を開いて…」


祈りを込め歌い、額にかかっていた黒髪をすくい上げます。


カーン コン♪
カーン コン…♪


歌に合わせたかのように、遠くから鐘の音が鳴り響きます。

ピクリっと男性の目蓋が動き、蜜柑は慌てて岩の影に隠れました。


「王子っ!!ご無事でっ!!」


見ると、眼鏡をかけた一見厳しそうな男性が助けた黒髪の男性へと駆け寄りました。
むくりと起き上がった『王子』は、戸惑いながらも自分の状況を把握しようとしてます。


「俺は…海で……」

「はいっ!!知らせを聞き心配しておりました!!」

「…誰か…美しい声の女に…そうだ!!女に助けられたっ…」


王子は、くらくらしながらも確信を持ち、そう言うが執事と思われし眼鏡の男性が、怪訝そうに王子を見ていた。
視線に気付いた王子は、執事を一瞥すると城へと歩き出した。


「…なんでもない。行くぞ」


物陰から見ていた蜜柑は、見られた事にドキドキしながらもあの王子の事が気になっていた。


昨夜、見たあの寂しげな紅いの瞳が頭から離れなかったのだ。


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