今は、まだ胸の奥に…
最近、棗はますますモテるようになっている。今日も、中等部のお姉様方先輩が教室までやって来ている。
「「棗くーん」」「「日向くん」」
「………」
読んでいた雑誌を片手にチラッと一瞬見るも、次の瞬間には紅玉の瞳は本へと向けられる。
「ねぇねぇ、無視しないでよー」
「そうそう、ねぇ棗くん。アリスストーン交換しない?」
「ずるい!私と交換しましょ」
「だめよ、私とだってば」
きゃぴきゃぴとはしゃぐ先輩方をよそに、持っていた本をぱしんっと閉じると、煩いと言わんばかりに棗はそこから離れていった。
「「「「あ、棗くーん」」」」
ぱたぱたと尚もめげずに追い掛けていく先輩たちをみて蜜柑はため息をついた。
「なんで、棗なんかがモテるんやろ?さっぱりわからん」
「まぁ、人好き好きって言うからね。いいんじゃない?別に」
蜜柑の横にいた蛍は、どうでもよさそうに答えた。が、蜜柑はなにか微妙に気になってしまい棗が出ていったドアの方を眺めていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やがて、能力別クラスの授業が午後からあるので蜜柑は1人歩いていた。校舎の裏を通ろうとすると
「――好きなんですっ!」
突然、愛の告白が聞こえてきた。
(うひゃあ〜〜誰か告白してんやな…早いトコいっとこ…)
足早に通り過ぎようとした瞬間、見えたのはかなりの美少女と黒髪のよく知っている後ろ姿だった。
(――――棗っ!?)
そう思った時、美少女と目が合った。そして、彼女は棗に抱きついたのをみて蜜柑はドクンっと鳴った胸を抑え、そこから逃げるように立ち去った。
い、今のって…抱き合ってた?
目に焼き付いたその場面がどんなに拭い払おうとしても、頭から離れてはくれず蜜柑はどうしようもなかった。
自分の心が急激に萎んでいく。
なんで、こんなにショックなんだろう―――
なんで、こんなに胸が苦しいのだろう―――
なんで、こんなに哀しいのだろう―――
込み上げてくる涙が一度決壊したら、止まらないような気がして蜜柑は授業の間、無駄に笑っていた。
時折、翼や美咲が慰めるようにポンポンっと頭を撫でてくれて余計に涙が出そうになったが、聞かないでくれる優しさに感謝した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
授業が終わり、真っすぐ寮に戻る気もしなくて森の方へと足を運んだ。
少し広くなった場所にあるベンチに腰を下ろした。なんだか、蒼すぎる空が眩しくて堪らなかった。気分がよかったら、とても嬉しいはずなのに今はつらいだけだ。
なんで、ウチこんな気持ちなんやろ
ぐるぐると乱れるマーブル模様の気持ち
棗が誰と抱き合おうが全然関係あらへんのに――…
そこまで思うと、抑えていた涙が決壊し溢れだしてきた。
「あれ…あれ?…なんでやん?」
棗のことを考えただけなのに…
こんなに苦しくなるなんて……
もしかして…ウチ…
棗の事――――――
「――――――好きなんやろか…」
口にした瞬間、ボッと蜜柑の顔は赤く染まった。そして、浸透していく『好き』という気持ち
言葉にした瞬間、帳が落ちるように蜜柑は自覚したのだった。今は混乱しつつも認めたくないと思う一方、認めてしまえ。と素直になれ。という気持ちがあった。
ガサガサっ
草木を掻き分ける音がして、蜜柑はハッと顔をあげた。
そこには、今現在、蜜柑の心を全部占めていた棗の姿。蜜柑は、恥ずかしくなりパッと顔を逸らした。が、その行動に棗がムッとしたのはしごく当然だった。
棗は蜜柑に近付き、口を開こうとした時、蜜柑の頬を濡らしている涙に唖然とした。
「……おい、何泣いてんだ」
「え?ウチ、泣いてなんか―――…あ…」
今さっき泣いていた事を忘れ、棗の言葉に自分の頬を触ると冷たい感触が指先を伝った。棗は訝しげに蜜柑を見ると、近寄り蜜柑の頬に触れた。
「なっ、ななな…棗っ?」
真っ赤になる蜜柑を無視し、棗は指で涙を拭うと
「泣いてるとますますブスだな、てめぇは」
ぐにっと頬を掴まれ、言われたのは憎まれ口。
「なっ!?う、ウチ、ブスなんかやなーいっ!!」
「鏡見やがれ、ブス」
「むっかぁぁぁ〜バカにしよってぇぇぇ!っこのイヤミキツネ―――っ!!」
たった今、自分が誰を思っているか分かったというのに相手からこの仕打ち
蜜柑は、肩を落とすしかない。という気分だ。しかし、
「てめぇには泣き面っなんて似合わねぇんだよ」
不意に発せられた言葉にドキっとして棗をみた。真っすぐ見つめてくる紅玉の瞳
鼓動が早くなり、頬が急速に熱くなるのを感じる。しばし見つめ合った後、先に逸らしたのは棗の方だった。
さっさと歩いていこうとする棗の目尻が少し赤くなってるのをみて、蜜柑は嬉しくてニンマリしてしまった。
「なつめ―――!ありがとうな♪」
歩いていく棗に礼を言った。きっと、あれは棗なりの慰め方。
とっても嬉しくて、幸せだと蜜柑は心が暖かくなっていくのを感じ
今は、まだ言ってやらん。
お互い素直になるにはまだまだ時間がかかる気がして、蜜柑は胸をキュッと握り締めた。
END
あとがき
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんでしょうか?この意味不明な話は?
アリスこそ第1にリハビリが必要なんじゃないかっ!!
こ、こんなのが2周年企画だなんて……
本当に申し訳ございません。
それでもUPする自分に脱帽…orz
本当に申し訳ございません。
2周年ありがとうございます!
2006/9/29