鼓動はいつだって止まらない
付き合い始めて1週間。思いが通じて、恥ずかしいけどとても嬉しい。
なのに、なんで"恋人"である彼を避けてしまうのかは自分でも分からなくて……果てしなく困っている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい、蜜柑。帰るぞ」
授業が終わり、蜜柑の元に棗がやって来た。それは嬉しいのだが、なんだか顔が見れなくて蜜柑は俯いた。
「あ、きょ、今日は蛍と約束があるから……悪いんやけど……」
「……」
「じゃ、じゃあ! また後でな」
蜜柑はそそくさとその場から離れて、蛍のそばへと走っていった。
「蛍ー、一緒に帰ろう」
「……別にいいけど」
蛍はチラリ、と棗を一瞥してから無理やりに蜜柑に手を引かれ教室から出ていった。
それを見送った棗の紅い双眸は蜜柑だけを見つめていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、いったい何があったのよ」
教室から離れると蛍は蜜柑に繋がれていた手を放して訊いた。
「な、なにって〜〜別になんもあらへんよ…………痛いっ!」
「あんた、私を騙せるとでも思ってる訳?」
バカン砲を片手に蛍は目を泳がせていた蜜柑をなんの躊躇いもなく撃ったのだった。
涙目で見ている蜜柑に尚もバカン砲を突き付け、再度訊いた。
「……で、何があったの? 棗に何かされたの?」
もしそうであるならば、容赦はしない。と蛍は考えていたのだが、蜜柑から告げられた言葉を聞いてバカらしくなった。
「――――と、言う訳なんよ……ウ、ウチどうしたらええ? このままじゃ棗にどう接したらええのか……」
子犬のように縋る目で見られるが、蛍はため息を吐いた。
「そのまま棗に言えばいいじゃない。私には関係ないわ」
「そ、そんなー蛍様あぁぁ〜」
「――聞いていたんでしょ? 二人で解決しなさいよ」
蜜柑の後ろに向けて放った言葉に、理由を話した少女は慌てて振り返った。そこには先程教室で分かれた恋人の棗が立っていた。やや顔を赤らめて。
「……な、棗…」
「…………」
「後をつけてきたみたいよ。やーね、ストーカーかしら。まあ、後は二人で話しなさいよね」
そう言うと蛍はヒラヒラと手を振って、先に行ってしまった。
それを見送り、二人の間に微妙な空気が流れる。別に喧嘩した訳でもないのに、何を話したらいいのか、なんと言えばいいのか互いに分からないのだ。
「……あー、えっと……」
「…さっきの……」
「は、はいっ!」
意を決して話かけようとすれば、棗が口を開いたので蜜柑は慌てて姿勢を正して返事をしてしまった。
「……嫌いな訳じゃないんだよな」
「そ、それは……もちろん、です」
そう"嫌い"な訳ではない。むしろ"好き"だからこそだ。
付き合い始めてからは別に気にならなかった。
それまでセクハラ紛いのことを受けて来ていたのもある。だが、いざ付き合うという事になったら、それを自覚してしまったら、堪らなく恥ずかしくなったのだ。
手を繋ぐのも、触れられるのも嫌いなんかじゃない。
むしろ、嬉しいのに、それなのに恥ずかしいという感情が大きくなり、ついつい避けてしまうようになった。
手を伸ばされれば、躱わすように手を引っ込めたり、腕がぶつかるだけでビクッと身体が硬直した。
目が合えばすぐに逸らし、話かけられれば他人と話すということにまで至る。
そんな風に自分一人だけが、意識しまくっているのに恥ずかしくて嫌だった。
しまいには棗を避けるというとんでもない行動にまで出ていた。
それに自己嫌悪しながらも、蜜柑はぽつりぽつりとたどたどしくも話せば、棗は額に手を覆って空を仰いだ。
「な、棗……?」
嫌われてしまったのだろうか?と不安になり名前を呼んだ。
チラリ、と紅い双眸に見つめられ、不安と共に心臓が跳ね上がる。どくんどくんと心音がやけに大きく聞こえた。
「……お前…バカだろ」
「なっ!?――――っ!?」
そう言われ顔を上げればいつの間にか棗の腕の中にいた。抱きしめられている事に驚いた蜜柑は、うろたえた。
「な、ななな棗っ!?」
「それって、お前が俺を好きだからだろ」
「……は?」
さらりと言われた科白に蜜柑はポカンとしたが、すぐに顔を赤くした。
「な、なに言うて……」
「違うか? 考えてみろよ」
棗に言われ、蜜柑はそのまま考えた。
確かに触ったりしてもらえるのは恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しいと思うのは好きだから。
目が合うと気持ちがつつぬけになりそうで……それが嫌とかいう訳でなく、やっぱり恥ずかしいから。
考えれば考える程、恥ずかしいけど嬉しいという気持ちがある。そしてそれはやはり「好き」という気持ちがあるからだった。
出た答えに蜜柑は真っ赤になり、ふるふると震えた。
恥ずかしい、恥ずかしい!棗に好きだと告白したみたいではないか。
チラリ、と顔を上げればニヤッとした笑う棗の顔があった。
蜜柑はなんと言っていいのか分からずに暫くの間、ずっと棗に抱きしめられたままでいた。
その時の棗の様子は実に喜ばしい顔をしていたのを知るのは、二人を包む甘い空気だけだった。
END
あとがき
な、なつみかんでした。あー、もう久々過ぎて書き方がさっぱり分からない上に、ぞわぞわっときてます。
かなり心拍数が速いです、むしろ目眩を起こすんじゃないかと思いくらい大変でした。
しかし、書いてて意味わかんないね!えーっと、まあ、付き合い始めて、改めて意識し過ぎちゃったよ☆みたいな話です。果てしなく駄文です。
自分的に甘々を目指しましたが如何でしょうか?
ご拝読ありがとうございました。感想頂けたら嬉しいです。はい。
2007/09/18