きみの声

GAKUEN ALICE

――意識し始めたら…頭の中がいっぱいになっていた―――


最近というかここ2日ばかり、棗は蜜柑と会話をしていない。
特別、話す用もないのだが。それでも話せないとなると何か落ち着かない感じがする。
別に蜜柑は具合が悪いという風でもない。まぁ、変なのはいつもと同じなのだが
どうやら俺は―――避けられてるらしい


まぁ、静かでいいけどな。


などと思いつつも、教室内で騒がしい方を見ると流架を交えて水玉や今井らが話していた。


「え――っ…せやかて、ほ〜た〜るぅ〜」

「うるさい」

『バカンっ!!』

「ぎゃ―――っ!?」


そんな声が聞こえてくる
顔に雑誌を乗せて、一見寝ている様にも見えるが実際は起きていた。騒がしい蜜柑達の声に神経を傾けていたのだ。
スッと本をずらしてみると、今は流架と楽しそうに笑っていた。


――俺には話すどころか、笑いもしないくせに――


そんな想いが胸にあった。
なぜ、こんなにイライラするのか。気付きたくはないが、知ってしまった自分の気持ち



――どうやら、自分はあのバカが好きらしい――



親友の流架にすら向ける笑顔が眩しくて、羨ましくて腹が立つ


なんで俺には笑ってくれないのか…

まして、最近は話すらしていない…


はぁ〜とらしくもなく溜息を吐きながら、いっそのこと行動を起こそうと本を机の上に置き、流架たちの元へ足を運んだ。



「…流架」


会話しているところへ背後から話しかけると、流架は振り向いた。すると


「…あ、じゃあ、ルカぴょん。またな」


と蜜柑は目の前の棗に目もくれず、手を振ってさっさと行ってしまった。


「えっ?あぁ…」


流架は蜜柑が去っていく方を見て、態度の不自然さに今度は棗を見た。棗は片眉を上げ、蜜柑の後ろ姿を見つめていた。



「…棗、佐倉と何かあったの?」

「………」

「なんかあからさまに避けられてるよね…」

「………」

「何かしたの?」

「……しらね―」



苦虫を潰したような表情の棗を見ながら、流架は不思議だった。一方、棗にも何も心当たりがなかった。
散々今までやっていた事を思えば、避けられても…嫌われても仕方がない。
が、その時その時を振り返るも確かに蜜柑は激しく怒ったりしていたが、その後
は別に気にするようでもなかったと思う。

むしろ、今になってなぜ?

いい加減意味もなく避けられるのは気持ちいいものではない。まして、相手は自分が気にかけている人なのだ。
無視されてイライラが募るばかりだ。



放課後


蜜柑は居残りをさせられて、つい先程まで職員室にて掃除させられていたのだ。
西日がさす長い廊下を教室へと歩いていく。
ガチャリとドアを開ければ、教室に誰かいることを知った。
逆光で一瞬分からなかったが、それが棗だと知り蜜柑は一瞬たじろいた。しかし、この状況でも蜜柑は棗と会話しようとはしなかった。

そそくさと自分の席へと行き、帰り支度をして教室を出ようと入り口へと向かおうとした。しかし、それは棗によって遮られる。
入り口にて、サッと出された手をみて蜜柑は一瞬棗を見るが、すぐに目を逸らし後ろのドアへと行こうとする。


「おい、何シカトしてんだ」

「………」



しかし、蜜柑は何も答えもせずそのまま行こうとするも


「おいっ…みかん」


名前を呼んだのはいつぶりだろうか


蜜柑はビクッとしてしまった。反応があったことに棗はツカツカと蜜柑の前に回り込んだ。


棗が一歩距離を縮めようとすると、蜜柑は一歩後ろに退いた。



「てめぇ…どういうつもりだ」

「………」



また 一歩近づくが、また 一歩離れる。



なかなか縮まらない二人の距離

近付けない、傍によれない事に棗は焦りもした。

それを繰り返しながら時間が過ぎていく。


「……おい…」

「………」


何も喋らない蜜柑にとうとう棗は、一気に距離を近付けると蜜柑はさすがに焦ったように後ろへとまた下がろうとした


――――ドンッ…


背中に壁がぶつかった。キョロキョロと左右を見て逃げようとする蜜柑に棗は両手の檻に閉じ込めた。


―――たんっ


「てめぇ、いい加減にしろ!!何シカトしてんだっ!!」


紅の瞳で蜜柑を見ると、その答えに蜜柑はブンブンと首を横に振るだけだった。
棗は、体を押しつけ逃げられないようにすると片手で蜜柑の顎を掴んだ。

久々に間近に見る蜜柑の顔に棗の心臓は跳ねたような気がした。
大きな茶金の瞳、眩しいくらいの白い肌、綺麗なピンク色の口唇、流れる薄茶の髪
しかし、それでも蜜柑は口を開こうとしなかった。棗は瞳を見つめたまま、聞いた。


「…なんで喋んねーんだ?」

「………」


沈黙


「……話し方忘れたのか?」

「………」


そんな訳ねーよな。と昼間、流架たちと話していたのだから。


「……口利けなくなったのか?」

「………」


また沈黙


だんだんと棗も焦ってきた。こんなに顔が近くにあるというのに…
いつもの蜜柑ならば慌てているだろうと。しかし、今日はそんな事を微塵も感じさせない。


そんなに自分は喋りたくもない位、嫌われたのだろうか?


キュっと口唇を噛むと


「……喋んねーと…キスするぞ」

「………っ」


ぐいっと顎を先程よりも上げ、親指で口唇をなぞった。さすがに焦り始めたらしく、茶金の瞳が揺らいだ。


棗は、そのまま瞳を開けたままの蜜柑に口付けしようと顔を近付けていく…


キーンコーンカーンコーン…


下校のチャイムが鳴り、息が掛かる距離まできた時


「ギャ――――っ!!!?やめんかいっ!!変態っ!!スケベ――っ!!!!」


叫び声と共にドンっと強く胸を押された。

さすがに勢いよく押され、棗の体は蜜柑から離れた。蜜柑は真っ赤になりながら、口をガードしていつもの口調で棗を睨みつけた。


「何するんじゃ!?ボケェ!!」

「てめぇこそ、いきなりなんなんだよ!!」

「うるさい!!うるさい!!うるさ――いっ!!」

「うるせぇのはてめぇ―だ!!ブス」

「〜〜〜なんやと―っ!!ウチのドコがブスやっちゅーんやっ!?」

「鏡みてから、言いやがれっ!!」

「うるさいわっ!!棗のアホ―――っ!!!!」


言い逃げしようとした蜜柑の手を棗はぐいっと引っ張った。


「おい、てめぇ」

「なんやねん」


キッと負けじと見てくる蜜柑にイラ立ちながら


「…さっきまでのシカトはなんなんだよ」


そう言われた瞬間、蜜柑はビクリっとなった。その反応を見逃す訳もなく、棗は眉を潜めた。


「あ――…その……それは…」

「それは?」

「えと……えーっと…」


一向に言う気がないのか、さっきまでの態度とは違って目を泳がせる蜜柑に棗は


「………さっさと言わねぇとパンツ脱がすぞ」


脅しを掛け、さっきよりも腕をギュッと強く掴んだ。


「あ、あれはっ……殿先輩が『2日間棗と会話しなかったら…何でも好きなモノ買ってくれる』言うて………って、棗には秘密って言われてたんやった―――っ!!!!」


いきなり焦った様に喋りまくり、ぐむむ…と慌てて口を塞いだ蜜柑の姿を見つつ、怒りのオーラを醸し出していた。


「……ほぅ…なるほど…な…」


その口調はいつもより低めになり、ぞぞぞ…っと蜜柑の背筋を凍らせたのは無理がない。

(殿先輩…堪忍してや…)

心の中で、黒髪で背の高い先輩を思い謝った。




後日―――


高等部の殿内が闇討ちに合ったという話題が出たのだった。
噂では『彼氏持ちの女に手を出した』からという話だったが、真相は分からなかった。しかし、『自業自得だろ』と高等部内では納得されていた。




END




あとがき

WEB拍手で使用いたしました。
なにが書きたかったのかというと『蜜柑に口唇を近付ける棗』しかも拒否されるのを書きたかったのです。殿の闇討ちの理由は間違ってますよ。
まだ蜜柑と棗は付き合ってないんで(笑)
しかも、蜜柑はあの後迎えに来た蛍によって窮地から救われてますので棗とはなーんにもなかったです。しかし、随分長くなってしまいました。
ちなみに下校のチャイムが賭け終了の合図でした。



サイトUP:2006/9/9


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