素直な気持ち

GAKUEN ALICE

それは小さい頃の思い出…


夕暮れの中、二人の少女が泣いている。




『…ウチの事…忘れへんでね…』


『忘れないよ…蜜柑ちゃん…』


『…遠くに行っても…ホンマに忘れちゃイヤやよ…』


『うん…大人になったら…会いに来るから…そしたら…ずっと―――…』



   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「―――そんでな、その子とはそれっきりやねん」


がやがやと騒がしい朝の風景。蜜柑は、委員長や野乃子ちゃんらと思い出話をしていた。横で聞いていた蛍は、経済新聞の株価を見ながら話に加わった。


「バカね…大人になったらって言ってたんでしょ? まだ子供じゃない、蜜柑」

「そやけど〜〜…でもホンマに可愛い子やったんよ!! 名前は…確か………あれ?…えーっと…」


蜜柑は必死で思い出の『あの子』の名前を思い出そうとするが…なかなか出てこない。委員長たちは、苦笑いをしながら


「…もしかして、蜜柑ちゃん…名前忘れたとか…?」

「え…えへへ…そうみたいや…アハハハハ」


頬を掻きながら笑ってごまかす蜜柑に、委員長たちはその友達がやたらに不憫に思えた。ガサガサと新聞を畳みながら蛍は


「はっきり言ってそんなんじゃ、二度と会えないわね」

「そんなっ!? うぅ〜蛍〜どうしたらええ!?」

「さぁ? でも相手もアンタの事なんて、キレイさっぱり忘れているかもよ?」

「うぅ〜〜ん…名前…名前…」


蜜柑が唸っているとちょうどチャイムが鳴った。


「ほら、さっさと席に座りなさいよ。ナル来るわよ」


蛍にドカっと蹴られてしまい、蜜柑は背中を擦りながら席につくとちょうど鳴海が教室に入って来た。


「はいはーい♪みんな、おはようv今日は素敵なお知らせだよ〜vV」


鳴海がやたら語尾にハートマークを付けて話しているのに、みんなはまたロクな事ではないと思いながら聞いていた。


「なんと!! 今日から新しいお友達が来たから紹介するね☆吉川くん、入ってvV」


鳴海の言葉に、みんながドアを見ていると茶髪に黒目の少年が入って来た。顔つきもなかなか端正で、棗や流架に勝るとも劣らない所謂「美少年」だった。
むろん、女子はざわざわと騒がしくなったが蜜柑はというと昔、仲良くしていた友人の名前が思い出せず、ブツブツと呟いていた。
隣にいた流架と棗は、蜜柑が転校生を見てたりしない事になにやら安心感があったりもした。


「はいはい、静かに」


鳴海が手を叩き、再び静かにさせると転校生に自己紹介を施した。


「じゃあ、簡単に自己紹介してね」

「…吉川悠です」


なにやら性格の方はクールというような雰囲気を携えていた。鳴海が付け足すように話を加えた。


「吉川くんは、すごく優秀でなんとトリプルでの入学なんだ。アリスも安定してるしね…」


一瞬、心配そうな顔をしたのは気のせいな感じを漂わせながら鳴海は話を続けようとしたが


「お前のアリスって何だよ?」

誰かが尋ねると、吉川はいきなり目の前に巨大な氷の柱を作り出した。しかし、その氷柱は簡単に水へと化していった。


「………氷と水のアリス…」


その言葉にクラス全員が強ばった。アリスが二つなのにも驚愕したが、このクラスのボス・棗とはよりによって真逆のアリスだからだ。

ここでようやく蜜柑は、ブツブツ呟いていたのを中断した。水をうったように静かなのに気付き、顔をあげると教壇には見知らぬ少年がいたからだ。


「…なぁ? 棗…あの人誰?」

「……………」

「佐倉…転校生だって…」


隣に座る棗にこそこそ聞くも、棗は無言で返し、流架が簡単に返した。
鳴海は静まりかえったのをなんとかしようと、吉川を席へと座らせた。そこで上手い具合にチャイムがなり、逃げるように教室から出ていってしまった。


只でさえ、アリスを複数持つモノはそんなにいる事もないので、皆は少し離れていた。しかし、端正な顔つきのせいか女生徒は気にしていた。
委員長は、クラス委員として話かけようとしたとき


「委員長? あいさつするん? ウチも一緒にえぇ?」


このときの蜜柑に委員長は天使を見てる気分になった(笑)
委員長はおそるおそる吉川に話し掛けた。


「えっと…吉川くん。僕はこのクラスの委員長で飛田裕って言います。よろしくお願いしますね」

「……あぁ…」

「えっと、ウチは『佐倉蜜柑』言います…よろしく――…?」


蜜柑が自己紹介するなり、吉川の表情が変わっていった。


「…佐倉…蜜柑…?」


聞き返す転校生に蜜柑は?マークを出しながら頷いた。


「う…うん…そうやけど…」


その途端、無表情に近かった転校生の顔が急に変わり、蜜柑を引き寄せるといきなり抱きしめた。


「へっ!!!?」

蜜柑は面食らい、クラスは騒然の中、棗は無言で立ち上がり蜜柑の髪を引っ張った。


「いっ…!?」

「……なんだ…てめぇ…」


蜜柑は、引っ張られてる髪をおさえながら涙目で棗を見ると、紅の瞳がゆらゆらと燃えるように揺れていた。


「……な…つめ…?」

「おい…コイツてめぇの何だよ?」


棗は、蜜柑を見ながら尋ねるが蜜柑は首を傾げ、


「…そんなん言われても…初めて会うたのに…」


蜜柑がうそをついていないと分かると、髪を放し今度は転校生を見た。


「……てめぇは何なんだ」


ギロリと睨むが、吉川は竦む事もなくフッと笑い返してきた。


「オレは…蜜柑の――」


すぅっと指を蜜柑に移し、ニヤりと笑いながら


「――――婚約者だ」

その言葉に、クラス中が声にならない声を出した。


「「「△×◆□?!★」」」

「んなっ!?…っこっ…こここ…婚約者ぁぁ〜!!!?」


蜜柑は、素っ頓狂な声を上げ口をパクパクしていた。隣にいる棗は、顔を歪めるとニヤりと笑う吉川を見た。
吉川は、にっこり笑うと蜜柑の手を握り締め


「会えて嬉しいよ、蜜柑」

「ほへっ? えっ? えぇ?」


蜜柑は握られた手を放そうとぶんぶん振るが、なかなか手を放せてもえらなかった。棗がムカつき、手を放させようと手をあげるが


バカンっ!!


いち早く、蛍のバカン砲が炸裂した。




「ヒギャ!!…っ痛………蛍ぅ……」

「…このバカの『婚約者』ですって?」


蛍もまた吉川を見下ろした。吉川は、蛍を見上げると冷たい眼差しに変わった。


「…まぁ、『婚約者』というのは大袈裟だよ。昔、結婚の約束をした程度だよ」

「うそやっ!! ウチそんな約束したことあらへん!!」


蜜柑は首をぶんぶんと振り、否定をするも吉川は蜜柑にだけにこりと笑うと


「ひどいなぁ〜蜜柑ちゃん、忘れちゃったの? 大きくなったら、ずっと一緒に暮らそうね。って約束したじゃないか」

「…へっ? その言葉……なんでアンタがその言葉知ってるん?」

「あぁ、そういえばあの頃蜜柑ちゃん、俺のこと『はるかちゃん』って呼んでたよね?」

「――――っ!? は…はるかちゃん…? 思い出した!! あの約束のって……嘘や…はるかちゃんは女の子…」


蜜柑は、思い出したようにあんぐりと口を開けていた。吉川は、笑いながら


「あの頃はアリス学園に見つからないように女の子のカッコさせられてたから、仕方ないかな? でも蜜柑ちゃんには話したじゃん。俺が男だって。だから結婚の約束だってしたし。」

「…そんな……アホな…」

蜜柑は、展開に頭がついて行かずくらくらと目を回した。そして、しまいには吉川からの

チュッvV

という頬キスをされてしまい、そのままぐわんっと倒れてしまった。


「「キャー!? 蜜柑ちゃーん?」」


クラス内はまたまた騒然し、野乃子たちは声をあげ、倒れる蜜柑をなんとか支えた。が、それを吉川が抱えようとした時、制服の裾に火の粉が着いた。
見ると、眉間に皺を寄せた棗が燃える瞳で吉川を見ていた。


「……てめぇが触るな…」


その怒りの交じった声音に吉川は、蜜柑から手を離した。そして、ジロジロと棗を値踏みするかのように冷たい瞳は向けられた。


「…ふーん、お前が日向 棗か」

「………だったらなんだよ」

『あ、あいつ!! 棗さんを呼び捨てっ…』


声のする方をじろりと冷たい瞳で一瞥すると、そのクラスメートは凍ったかのようにピシリと固まってしまった。もう一度、棗に顔を向けると


「別に、噂の幹部生どのはそういえば蜜柑のパートナーだと聞かされていたけど、まさかそれで蜜柑に触るのは君の許可が必要なのかと思ったんだよ」

「………」

「必要なのかい?」


せせら笑うように冷たい声音で囁かれ、棗は拳を握り締めていた。
何か、圧迫されているかのような雰囲気を漂わせてくる目の前の少年に、気持ち悪さを感じた。


「……別に…そんな必要は…な…い……」


それは悔しさを漂わせる台詞だった。事実、彼女を縛りつける理由など棗には持ち合わせていなかった。
けれど、そうではない『何か』が存在するのも否定は出来ない。というよりは願望なのだろうか?


「じゃあ、オレが運ぶよ」


そう言うなり、野乃子たちが支えている蜜柑の腕を取ろうとするが、またもや緊張感を漂わせたまま口を開いた人物がいた。


「ちょっと、待ちなさいよ」


と涼しげな声で、蛍が声をかけた。


「さっきから黙って聞いていれば、なんなのよ。蜜柑は私のよ。汚い手で触るんじゃないわ」


と吉川へと言葉を投げ掛けていく。さすがにそれは、吉川や棗、クラスのみんなの緊張感を破るものがあり、誰もが彼女の言い分は正しく思えた。


「……蜜柑の幼なじみの今井さんか…」

「そうよ、あまりよろしくしたいとは思わないけど、覚えておいて」

「…わかったよ。」


触れていた手をパッと放し、吉川は冷たく笑った。両者はしばし睨みあうが、先に逸らしたのは蛍だった。そして、おもむろに気絶している蜜柑に向けてバカン砲を撃ち込んだ。


バカン!バカン!バカン!


何もそんな事をしなくてもいいのではっ!?と心配そうに委員長は見ているが、イタタ…と唸り声をあげ蜜柑は目を覚ました。


「……痛いやないかっ!! 蛍っ!!」

「やっと起きたのね」


蜜柑は、頭を擦りなが文句を言った。


「……助けてあげた恩人に向かって中々の言い分ね」

「恩人…?」


蜜柑がキョロキョロしながら周りを見渡した。なにやら、凍った雰囲気にきょとんとしていた。が、そこは蜜柑。
そんな事はお構いなしに、この冷たい空気を作り上げた吉川に話しかけていく。


「…あ、あんな…はるかちゃん…?」

「なに? 蜜柑?」


蜜柑は、なんと言ったらいいのかと考えながら


「あ、あんな…婚約者とかってのは…さすがに小さい頃の約束なんやし、その…」

「あれは小さい頃の約束だから、気にしなくていいよ」


吉川は、くくっ…と笑うと蜜柑はホッとしたように胸を撫で下ろした。
同じように、その場にいた棗や流架も内心ホッとしていた。しかし、吉川は蜜柑にだけ笑うと


「…でも、もし相手がいなかったらいいかな?」

「え…?…えぇっっ!?」


吉川の発言によりまたもやクラスは騒然となる。

「もちろん、好きな人とかいなければ考えてみて♪」

「すっ…好きな人なんて…おらんけど…」


そんな事を言いつつ、蜜柑は棗が見ているのが気になりドキドキしていた。


(…な、なんで棗が気になるんやろ…)


先程の事を知らない蜜柑だったが、それ以外のクラス全員は明らかに棗に対する挑戦だと思った。不機嫌な棗は、とうとう紅い瞳を燃えさせ吉川に言った。


「……そんなのは俺が許さねぇぞ」

「な、棗っ…!?」

「…ふーん、じゃ、俺と勝負しないか? 蜜柑を賭けて」

「…っな? はるかちゃん!?」


吉川の突然の言い分に蜜柑は、オロオロしているとガシリっと頭を捕まれ


「……てめぇみてぇなヤツには渡さねぇ」


と言うなり、吉川の制服の裾に火が灯った。


「…へぇ、本気みたいだね? 俺も本気でいくよっ!!」


とたんに、火は簡単に消え棗の頭上に氷の塊が出来上がっていく。


「んなっ!? 棗っ!? はるかちゃん、止めっ!!」

「…てめぇは下がってろ、みかん」


とんっと後ろに押され、蜜柑はよろめいた。尻をつきそうになった時になんとか流架に支えてもらった。
蜜柑は、流架に喧嘩を止めてと願うが、流架とて簡単に蜜柑を渡す訳にはいかなかった。


ジュッと、氷が瞬時に溶け炎が吉川を囲むがさすがアリスが安定しているのか、棗の炎を消していく。そんな事を繰り返していく内に蜜柑はだんだん腹を立てていった。


(…人の気持ち…無視しおって…)


その一瞬、棗が咳き込み火が弱くなった隙をつき吉川は氷の柱を棗に向けた。



「っ!! だめぇぇぇぇ!!!!」


真っ白い閃光と共に火や氷はすべて消えていた。蜜柑は、棗を庇うように前に立っていたのである。


「…みかん?」


棗と吉川を睨みつけると


「…バカな事で喧嘩すんなっ!! 振り回される身になれっ!! アホッ!!!!」


そう言い放つと教室から出ていってしまった。




棗は、出ていった蜜柑を追い掛けていくと、大きな木の下にいるのを見付け近づいた。


「………おい…」

「なんや、アホ…」

「………悪かった…」


むぅ―っとしていた蜜柑だったが、素直に謝って来た棗に対し怒りが消えていく。
くるりと、後ろを振り返ると棗の表情に驚いてしまった。悔しさと苦さを表したような顔だったのだ。


「……ひとつ、聞いてもえぇ?」

「なんだよ…」

「なんで、怒ったん?」


蜜柑の発言に、激しくニブいのかと思い顔を見ればにやりと笑っていた。


「…嫉妬〜?」

「…っな!?…てめぇ……悪かったな、そうだ」

「へっ!? ほ、ほんまに…?」


自分で聞いておきながら蜜柑は、彼の言葉に真っ赤になった。形勢逆転とばかりに棗は笑うと、ツインテールを引っ張り抱き締めた。


「うぎゃっ!?」

「…ばーか……」


蜜柑は、真っ赤になり悔しくなりながらもなんだか心の中は笑っている気がした。


素直になれば、答えは簡単に見つかるのに
素直になれないのは…『何か』みえないモノに負けたくないという気持ちのせいかもしれない。



END



あとがき

もはや、なんなのか分からないくらいの駄作っぷりです
難しいですね、オリキャラ使う話って。
最初に決めていた話とはかーなーりー大きくかけ離れてしまってどうしたらいいのか分からなくなりました。
そんな訳で無理矢理終わらせてみれば、納得いかねぇ〜出来で困り切ってます。
なら、書きなおせばいいだろ。となりますが、ぶっちゃけ同じになりそうなんで書きたくないです。

こんな果てしない駄文にパケ代や時間を無駄にさせてしまって申し訳ございませんでした。
ここまで読んで下さって本当にありがとうございますm(__)m


'05/06/16


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