複雑な感情
西日が射す長い廊下を歩いていた。
「………」
「…………」
教室のドアに手をかけようとしたその時、中から聞き覚えのある声がした。
そっとドアを開け、覗いてみると逆光の中くっついている二人が入った。
ゆっくりと口唇をくっつけて…
(―――――っ…流架と…水玉…!?)
認識すると急に頭が重くなり、その場にいたくなくて…音をたてないように逃げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
放課後の教室でしゃべっていたら、不意に目の前が暗くなり瞳を上げると碧い瞳がゆっくり近づいて、キスをした。
優しく柔らかい口唇の感触を感じながら、ふと瞳を開け視界に入ったのは黒髪の後ろ姿。
(―――――えっ…?)
と思った時には、トンッと流架の胸を押していた。
「……佐倉?」
不思議そうに見てくる流架に焦りつつ、蜜柑は慌てながら
「がっ…学校ではしない約束やろっ…」
「あっ…ごめん……えと、もう帰る?」
「う、ウチ…まだ用あるから先帰ってて…」
「えっ……あ、待ってる?」
「うぅん、平気や。職員室行くねん、大丈夫」
「そう?じゃ、後でね」
「う、うん…ごめんなっ…」
真っ赤になりつつ手を振る蜜柑に流架はニコリと笑って教室から出ていった。
足音が遠ざかるのを聞き、震える手で口唇に触れるとその場にしゃがみこんだ。
さっきの、あの黒髪は…棗だった―――。
そう思った瞬間、ポロポロと涙が伝い落ちてくる。
「……なんで…涙なんか……?」
そう呟くも、涙は止まらなくて。
こんなにもなにがショックなんだろう?
どうして涙が止まらないんだろう?
どうして…こんなにも…胸が苦しいの…?
分からない…
ワカラナイ…
そうその場で分からない感情が、ぐるぐると回っていた。
棗は、流架と蜜柑のキスシーンをみてから、苛立ちと悔しさと情けなさの感情にぐるぐると悩まされていた。
アイツらが付き合っている事ぐらい知っていたはずなのに――抑えきれない嫉妬と羨望が沸き上がる。
「…………くそっ」
落ちていた小石を蹴っていると、後ろから声を掛けられた。
「……棗?」
振り向くと親友の流架がいた。幸せそうに笑いかけてくる。
「………っ流架…!!」
「どうかしたの?こんなトコで」
普通に話し掛けられるも、苛立ちが沸き上がる。
流架は悪くない。
流架は悪くない。
流架は悪くないんだ!!
そう頭の中で言い聞かせようとするが、心が追い付かず声音が変わっている事に気付いた。
「……散歩だ」
「……そっか、じゃあ俺寮に戻るね」
さすがに気付いたのだろう。
イラついているのに…だからこそ、近付けないように突き放すような声で言ってしまった。
寮へと歩いていく流架の後ろ姿を見て
「………ごめんな…」
謝りつつも、胸に沸き上がったこの嫉妬と羨望は中々消えないと確信していた。
やるせなさだけが残る。
気付けば、太陽は傾き、天は綺麗なグラデーションになっていた。
END
あとがき
なんじゃこら?
はい、感情シリーズ番外編です。
いえ、書きたかったシーンがいくつかありまして、その一つなんです。
ちなみに蜜柑は、まだ自分の気持ちには気付いてません。
棗に見られた事により、なんでショックなのか分からないんです。
棗は棗で、行き場のない思いをしてしまいます。
まぁ、番外編ですので上手に終われなくて申し訳ないですが
ここまで読んで下さってありがとうございました♪
'05/2/3