廊下を歩いていると、向かいから香鈴が歩いて来た。きっと影月にお茶の差し入れでもしていたのだろう。


「香鈴?」

「あ、琳麗様」

「ねぇ、静蘭見かけなかった?」

「静蘭様ですか? 先程、お会いいたしましたけど……なんだか目が据わっていて、悪酔いでもされていたのでしょうか……?」


香鈴の言葉に、琳麗は苦笑するしかなかった。
静蘭が悪酔いなんて、本当に珍しい事だなんて思っている一方、香鈴は先程の影月との事を思い出し、頬を赤らめた。
影月となんだか、いい雰囲気だったのだが静蘭に邪魔されてしまい、でも「続きをどうぞ」なんて言われてしまって我に返った。
よくよく考えてみたらあのまま邪魔が入らなければ、影月と……。それを考えると恥ずかしさでいっぱいになる。


「――――鈴、香鈴? どうかした?」

「へっ! あ、いえ……あ、あの私、お茶の続きを淹れ直すのでしたわっ!」

「え…、あ、分かったわ……」


香鈴はわたわたとその場を去っていった。その様子に琳麗は小首を傾げて見ていたのだった。

そのまま、また廊下を歩いて行けば、庭院に通じるところに出た。月が膨らみ半月になろうとしているのを見て、ほぉ、と息をつく。
澄み切った蒼昊に浮かぶ琥珀色の月に、美しいと惹かれてしまう。

一歩、踏み出せば蒼い月光が降り注ぎ辺りが薄蒼の世界になる。


「……琳麗、様…」

「静蘭、」


酔いでも醒まそうとしていたのか石椅子に座ってこちらを見ていた。




   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



部屋に戻ろうとしたが、夜風に当たりたくなり庭院先へと出て来た。
膨らんだ月を見上げ、あの日からもう七日経ったのだと思う。
そんな風に思っていると、カツンと音がしてそちらに目をやれば、淡く輝く月光の中、愛しい人が立っているのが目に映る。
浮かび上がる白い頬が、光りを反射する濃緑かがった黒髪が、彼女を創る統べてが美しいと思った。


「……琳麗、様…」

「静蘭、」


微笑み、見つめてくる双眸に胸が高鳴ってしまった。
そんなのをお構いなしに彼女は自分に近づいてきた。この無防備さに、胸が苦しくなる。


「……どうかさないましたか?」

「なさいましたか、って静蘭を探していたのよ? なんだか様子がおかしいって秀麗が言ってたから。悪酔いでもした?」


上目遣いで見上げてくる仕種に無意識に頬が赤くなるのを感じる。もう、そんなに無防備に近づかないで欲しい……想いが、抑える事が出来なくなる。
白い手が前髪をかき上げていく。――気がつけば抱きしめていた。


「静蘭? ど、どうしたの?」

「……琳麗様、私と一緒に……」


顎を掴み、口唇を合わせそうとし時…………。


「静蘭、今夜は一緒に寝ましょうか?」

「…………は、い?」

「秀麗が言ってたの、静蘭が添い寝をしてくれるだの、子守唄を歌ってくれるとか言ってたって……静蘭、甘えたいみたいだし、私でよかったら添い寝してあげるわ」


にっこりと微笑まれ、静蘭は呆気に取られる。さっきまでの雰囲気が一気に消え去られてしまった。


「静蘭? あ、やっぱり秀麗の方が……?」

「い、いえ! 琳麗様さえよろしければ……」


なんだか変な応えになっているな、と静蘭は思った。だが、彼女は微笑すると「いいわ」と頷いてくれた。


「静蘭と一緒なんて、小さい頃以来ね。なんだか、恥ずかしいわね」


意識されていないのかと思えば、そうでもないらしい。せっかくの申し出を断るのも勿体ないので、静蘭は琳麗に添い寝をしてもらうことになった。


「琳麗様、ひとつだけ言わせて下さい」

「な、なあに?」

「他の……特に男性の方にはこんなことしては絶対にいけませんよ」


その辺はぬかりなく静蘭は琳麗に言い含めたのであった。だが、静蘭は知らない。琳麗が弟である主上と添い寝をしたことがあることを。
そうして、夜は更けていったのだった。


/終




あとがき

まずはサブタイトルを変更いたしました。「初恋〜」に入る前の話しですので別なものに。
今回、後半はドラマCDネタを使いました。なんか勝手に変えたりしましたが、そこは……ね!
ラストあやふやですみません。添い寝、添い寝ですよ!
夢主は危機感とかあまりないです。添い寝と言っている以上、ただの添い寝なんです!(主張)
雰囲気を壊された静蘭は呆気に取られたでしょうね。変なオチつけてごめんなさい。
静蘭からのキスされそうなのをさらりと躱したのは静蘭が酔ってるからだと思っていたからです。素面なんだと知っていたら、きっと慌てていたでしょう(笑)
なんか本当にダラダラと申し訳ありません。次こそ「初恋〜」に合わせたいです。
感想頂けたら嬉しいです!ご拝読ありがとうございました。



2008/01/05


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蒼天の華 / 恋する蝶のように