肆
涼しい夜風が気持ちよく、琳麗は風に乗せて口ずさむ。
『私は ここにいます
貴方を思いながら
貴方を待っています
懐かしき声が聴こえる度に
ずっとずっと…待ってます 』
「…琳麗様?」
不意に声を掛けられ、びくっと肩を揺らした。全く、気付かなかったから
「せい…ら…ん」
「こんなところでどうなさったのです。お風邪をひきますよ」
ぐいっ!と手を引っ張られ琳麗は静蘭の腕の中に納まられた。
「せ、静蘭っ!?」
「──今の歌…どなたの事を?」
「…え……あの」
顔を上げると同時に、目の前にある静蘭の顔に琳麗は目を見開いた。
端正な顔、いつも綺麗な瞳は閉じられていて長い睫毛があった。そこで口唇を塞がれている事に気付いた。
「っんん……」
琳麗は驚愕し、離れようとするが頭を押さえられ身動きが取れなかった。
尚も抗おうとするが自分を包む腕は緩むどころか、きつくなる一方だった。
苦しくて、息を吸おうと口を開けば熱い嵐がそれを許してはくれなかった。
──もう…ダメ……
そんな意識を最後に琳麗は頭の中が真っ白になったのだった。
──お前を愛してしまったから
私は……………
お前を恨んでなどいない……
だが、今度出会う時は……
お前から逢いに来ておくれ──
暗い暗い闇の中で、誰かがそう呟いたのが聞こえた。
ぎこちなくも触れる優しいその手。私はその手を知っている気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
気がつけば、静蘭に抱きかかえられていた。
「…………申し訳ございません」
どこか気まずそうに謝る静蘭に琳麗は首を傾げた。しかし、先程の事を思い出し真っ赤になって口唇を押さえた。
「せ、静蘭っ! あ、あのっ……」
口に出したものの何を言ったらいいのか分からず、ちらっと静蘭を見ると、なぜかニコッと笑われた。
へっ?と疑問に思うが、だんだん静蘭の端正な顔が近づいてきたので琳麗は慌てて静蘭の胸を手で押さえた。
「静蘭…? な、なに?」
静蘭は、琳麗の手を掴むとまたニッコリ笑った。
「琳麗様、そのように赤い顔をされて上目使いで見つめられては、このような事になりますのでお気をつけ下さい」
危ないですから。と告げる静蘭に琳麗は内心(静蘭が一番危険だわ)と思っていたが
「いま、何かおっしゃいましたか?」
「い、いいえ! なにも」
心が読まれたようでびくっとする琳麗だったが、自分の今の態勢をなんとかしようと身じろいだ。
「どうかなさいましたか?」
「え、えっと…そろそろ離してくれないかなーって…」
そう言うと三拍くらいしてから、そっと地に足を下ろす事が出来たのだったが、ちっ!と舌打ちが聞こえたのは敢えて聞こえなかった事にしよう!と思った。
立って顔を見合わせると口付けされた事を思い出した。
(……なぜ?)
そう問いただそうとしたが、先に口火を切ったのは静蘭だった。
「──そういえば、先程の歌ですが……誰か、想う方がいるのですか?」
その顔があまりにも泣きそうに見えて、琳麗は首を横に振った。そして、瞳を伏せると呟いた。
「──あのね、昔から…声が聞こえるの」
「……声、ですか?」
「う、ん……こう、月の光りが弱い夜や新月の時とかに……風にのって聞こえるの。ずっと待ってるとか、なんとかって……それが気になってね。それで歌っていたの………」
「誰か分かるのですか?」
「…………」
ふるふると顔を横に振った。その姿を見て、静蘭はそっと琳麗を優しく抱きしめた。
「静蘭…?」
「そのような得体の知れない者に心を寄せないで下さい」
「…………」
「私はあなたが大事なのです、誰よりも」
そうして、今度は琳麗の頬に優しく口を寄せ、そのまま歩いていった。頬を押さえ、琳麗は呟きと共に瞳を閉じたのだった。
胸の奥底で、警鐘が鳴ったような気がした。
第六幕/終
あとがき
今回、幕間だった武芸大会と第四章を合わせました。
武芸大会、アニメでは劉輝が静蘭を清苑と知る話ですが、原作にはない武芸大会ですが、ここの時点で静蘭=清苑とならないとインターバルにいけなさそうだったので。
実は、アニメを見直して思った事は邵可様がお茶係って実は霄太師ことくそじじいに仕返し的な感じかな?と思ってしまったので。
しかし、夢小説ではないですね。(苦笑)
とりあえずは、こんな陳腐な物を読んで下さってありがとうございました!
感想頂けたら幸いです。
2007/01/12
追加:絳攸との手巾話
なんか夢らしいものが今になってようやく書いたような…書けてないような。
ちなみに刺繍の柄は「花菖蒲」にしよいか悩みました。
ただ、静蘭は「むらさき草」でしたので絳攸も姓の「李」にしました。
他のはまた後日書けたらいいな。と思ってます(笑)
2007/01/29
さて、今回はアニメ軸に合わせて龍蓮出しちゃいましたが、難しいキャラですね!!
龍蓮ん上手く書ける方を尊敬しちゃいます!
なんか、もう分からない話で読んで頂けるだけありがたいと思います(本気で)
駄文ですが、読んで下さってありがとうございますm(._.)m
2007/01/24