「おやおや、主上は困った方ですね。ほら、あちらに行きますよ」


ズルズルと引きずっていったと思ったら、途中で振り向き


「琳麗殿、あちらで霄太師たちが…というか宋太傅がお待ちですよ。なんでも琳麗殿の酌で飲みたいとか……」

「あ〜…はい。分かりました」


琳麗は苦笑しつつ歩きだし、楸瑛の横に並んだ。


「わ、私もお手伝い致します!」

香鈴も後を付いて来た。秀麗は、はぁ〜とため息を吐き、劉輝に近寄り、宥めたのだった。それを見た後、クスッと笑い宴席へと足を向けた。


「やっと来たか、琳麗」

「宋太傅…大分呑んでませんか?」

「ふんっ! こんなのはまだまだ序の口だ! いいから酌をしろ!」

「宋よ、琳麗殿はおぬしだけの女官ではあるまい」


宋太傅の前に座っていた、霄太師はちらりとこちらを見て言った。琳麗は宋太傅の盃に酒を注ぎ、苦笑していた。


「何をいうか、霄! わしは琳麗を娘のように思っているのだ!! だから、琳麗の伴侶はわしが決めるぞ!!」

「……は?」


いきなりの発言に琳麗は口を開け、それを聞いていた楸瑛と絳攸はぎょっ!とし、秀麗と劉輝、そして霄太師と茶太保とお酌をしている香鈴はポカンとしていた。


「どこぞの馬の骨とは結婚させんぞ! お前に求婚してくる輩がいたら言うがいい!! このわしが見極めてやる! はーっはっはっはっ」

「……宋太傅、自分の結婚相手くらい自分で見極めますわ…」


笑うその姿に琳麗は頭が痛くなったのは言うまでもないかった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


香鈴に三師を任せ、琳麗は絳攸たちの傍に行った。
劉輝はもうメソメソしながら、室へと行っていた。二胡が聞きたい、と恐る恐る言う姿を見て、秀麗は仕方ないといった風に二胡を弾きに行ったのだった。


「どうぞ、絳攸様」

「あ、ああ。すまんな」


トクトクと盃に酒を注ぎ、今度は楸瑛の方へと向けた。


「藍将軍もいかがですか?」

「お願いしようかな?……って、どうせなら隣に座って注いでくれると嬉しいんだがね」

「それはちょっと…」

「……どうしてだい?」

「今までの経験上、何をされるか分かったものじゃありませんから」

「賢明だな、酒の席で楸瑛の隣は確かに危険だと俺でも分かる」


一口飲み、絳攸はニヤリと笑った。少しムッとした楸瑛は絳攸に琳麗を見ながら言った。


「君は、確か女嫌いじゃなかったっけ? そんな君が女性を隣に酒を呑むとはね」

「う、うるさい! 女は女でも琳麗は別だっ!」


その言い方に楸瑛の眉がひそかに動いた。


「おや、それはなぜたい? もしかして―――」

「藍将軍、あまり私の従兄弟殿で遊ばないで下さい。絳攸様が平気なのは、私を女と見てないからに決まっているじゃないですか」

「「……は?」」

「お二人とも、冗談が過ぎますよ! あまり私をからかうと静蘭が叱りに行きますよ?」


楸瑛の言葉を遮り、紡がれた言葉は絳攸と楸瑛が思っていたとは全く違う意味で、呆気に取られた。が、次に繰り出された言葉に今いない、静蘭を思い出した。


「「え? 静蘭? ──って!!」」

「やだ! お二人まで忘れていたのですか!?」


確かに忘れていた。多分、主上でさえ忘れているだろう。しかし、目下考える事は今、彼女が言った言葉の意味だ。


「い、いや……忘れて、というか……」

「う、うん…えーっと静蘭は公務で来れなかったんじゃないのか……な?」

「あら、そうなんですの? 主上付きだし……てっきり。じゃあ、静蘭は今日は羽林軍の方なんですね」


なるほど〜と考えているとジーッと見つめてくる視線に気付いた。


「? どうかなさいました? 絳攸様、藍将軍?」

「いや、その…」

「あーっと…さっきの静蘭が叱りに来るって言うのは、どういう意味なのかな?」

「え、ああ。なんだが、今まで私に冗談で「付き合って欲しい」と言った方々にたまに静蘭が注意しに行くらしいのです。冗談なんだから、わざわざ注意しに行かなくてもいいのにね」

「「…………………」」


クスクス笑う琳麗に、絳攸と楸瑛は顔を少し引き攣らせていたのだった。


(……絳攸…)

(な、なんだ……)

(…今夜の事はばれないようにしないと私たちの命が危ないかもしれないねぇ…)

(そ、そうだな…)


「「は、ははははは…」」


その場に乾いた笑いが響いたのはいうまでもなかった。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


皆が寝静まった頃、琳麗は一人宿の庭院に降りていた。

月のない夜空を見る。
さあ…っと風が凪ぎ垂らした髪を靡かせた。


 ―――私はお前を愛してる…

 いつか…私を見つけてくれ……

 私の元へ…戻ってくれ―――



どこからともなく声が聞こえた気がした。


「……あなたは誰なの?」


いつも闇夜に聞こえる声

それがいつから聞こえたかなんて分からない

ただ、自分にとってその声の主が大切な人なのかもしれない

そうでないのかもしれない。

ただそれが分からず琳麗は瞑目した。





親睦温泉旅行/終





あとがき

インターバル@でした!
題材はアニメドラマCD1の番外編『親睦温泉旅行』です。
なんかもうどうしようもなく、なんとも言えない夢になりました。
ちなみに男湯では、相撲をしている男性陣にはドラマCDでありました。

ご拝読頂きありがとうございました。

2007/01/14


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蒼天の華 / 恋する蝶のように