肆
コツコツコツ…と歩いてくる足音に皆が息を呑んだ。が、現れたのは府庫の主と宮廷女官であった。
「邵可…琳麗…」
「おや、お揃いで。ちょっとお茶を沸かしてる間になにやら盛り上がっていたようですね」
殺気を消し、いつもと同じ笑顔を見せる父に琳麗は顔に出さずに苦笑した。
「殺気が消えた──?」
「一体……」
武官である静蘭と楸瑛は唖然としている。そこへ、時鐘が鳴り響いた。
「二人共、そろそろ仕事に戻った方が良いのでは?」
邵可はにこにこと笑いながら、彼らを見た。毒気を抜かれたように彼らは頷いた。
「……あ、そ、そうだな」
「そ、そうですね」
「あ、仕事〜仕事! さあ、急いで主上に目を通して頂かなくてはならない件案があるんですよ」
「あ、待て! 楸瑛、途中まで一緒に行く」
慌てて出て行こうとする四人に琳麗は苦笑した。そして卓子に置かれた漆塗りの重箱を見て、最後に出て行こうとする劉輝に声を掛けた。
「劉輝様、昼餉を召し上がっていらっしゃらないのですか?」
重箱の蓋を開け、琳麗は彼を見た。
「……う、うむ…」
「もう、きちんと召し上がらないと午後のお仕事に差し支えますよ」
「す、すまない……」
しょぼんとする劉輝の姿に年上でありながら琳麗は、可愛いなどと思ってしまった。
クスッと笑うと、父様を見てから持っていた重箱を開けた。
「さあ、お座りになって下さい。少しお腹に入れた方がいいですよ」
器に菊花焼売と炒飯を出した。もちろん、父の分も。
「琳麗の料理も美味しいんですよ、主上」
「…初めて食べるな。すまない、これは邵可のだったのだろう?」
「大丈夫ですよ、たくさんありますから」
邵可は頷き、劉輝は箸を取って口へ運んだ。他の三人は既に退出していた。琳麗は、劉輝を見てこそっと耳打ちすると彼は満面の笑みを浮かべたのだった。
その後、劉輝も琳麗も仕事へと戻り邵可は一人、府庫でお茶を啜っていた。
「秀麗が嫁に行く日ですか。父親とは淋しいものですね。なんて考えていたら、つい我を忘れて殺気を放ってしまいました。私も修業が足りませんねぇ…」
ぐびっ…とまた一口呑むと微笑した。そして、もう一人の娘もいつかは…手を離れていく。それを考えると淋しくなった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただ今、帰りました」
静蘭が帰ってくると家にいた紅一家は、揃って出迎えた。
「お帰りなさーい」
「お帰りなさい」
「お帰り、静蘭」
先に帰って来ていた琳麗たちは笑顔で答えた。
「お仕事ご苦労様。すぐ夕ご飯の支度するから、静蘭着替えて来るといいわ」
秀麗は、そう言うと庖厨へ行ってしまった。琳麗も支度をしようと行こうとしたが、静蘭の視線を感じそちらを向いた。
「…どうしたの? 静蘭、今日も暑かったから疲れたの?」
心配そうに見上げるが、静蘭はそのままじっと琳麗を見つめた。
「琳麗様、」
「やぁね〜 また人の顔、じっと見たりして」
「私は…」
「うん?」
何か言いたげな静蘭の姿に琳麗は首を傾げた。しかし、静蘭は小さく首を振り
「いえ、着替えてまいります」
一言呟き自室へと歩いて行った。その後ろ姿を見送り琳麗は、首を傾げた。
「変な静蘭……っと! 夕飯夕飯、父様、待っててね!」
「ああ」
庖厨へと去っていく琳麗と自室へ向かった静蘭を見て邵可は、茶を啜った。
昼間、邵可は最初から聞いていたのだ。
「秀麗も琳麗も誰を選ぶのか私は見守るだけです。秀麗と琳麗が決める事、あの子たちが決めた事ならきっと…」
幸せになるだろう──と邵可はまた茶を啜ったのだった。
第一幕/終
あとがき
ようやく「黄金の約束」編に入りました〜。
って、まだ燕青が出てないし…
相変わらず、ドラマCDからのネタを入れさせて貰いました。
あまり夢主出てこなくてすみません!すみません!!
さて、ドラマCDのネタは劉輝が悪夢を再び見た辺りからがドラマCD内容になります。
かなり笑えたので入れたかったんです!
まあ、秀麗の台詞を夢主に言わせてたりしますけど。
ちなみに劉輝は、静蘭と秀麗の仲を誤解してます。っていうか勘違いしてます(笑)
静蘭は夢主を想っているという事をすっかり忘れてますので、こんな話になってしまいました。
インターバルで出そうと思っていたのですが、まだ燕青がいないようなので第一幕にいれちゃいました(苦笑)
本当、夢小説らしかぬ書き方で申し訳ございません。m(__;)m
燕青…別人になりそうですが頑張りたいと思います。
ご拝読ありがとうございました!
2007/02/02