「制服のシャツが行方不明になった?」
明らかに胡乱げな表情で同じ言葉を反芻するジャミルに、🌺は困ったように笑い返す事しかできなかった
「一体何をしたらそんな物をなくすんだ?」
「いやぁ、それが私にもさっぱり…」
見るからに呆れているジャミルだが、シャツがなくなるなんて事態、当の🌺も全く予想していなかったハプニングである
「とりあえず学園長にも伝えて、新しいシャツの発注はしてもらってるんだけど…」
「届くまでの間が…という事か…」
そう、一先ず犯人探しは後にして、当面の制服をどうするか…というのが今の議題である
🌺とジャミルは揃って頭を悩ませているが、傍で同じように頭を悩ませていたカリムが徐に手を打ち鳴らす
「ジャミル、お前が使ってないシャツを🌺に貸してやったらどうだ?」
「は?!」
あっけらかんと告げられた提案に、ジャミルはギョッと目を剥いた
「だってお前、どうせパーカー着ててシャツは使ってないだろ?」
「いや、それは確かにそうだが…」
「じゃあ何も問題ないよな!頼んだぞ、ジャミル!」
「………はぁ」
ジャミルの心情など慮らないこの暴挙
カリムらしいといえばらしい程の無頓着っぷりだが、こうなるともうジャミルには反抗の手立てがない
深々をため息をつきながら、ジャミルは🌺の手を掴むと無言で自室までの道を歩き出す
そして…
「外にいるから、とりあえず袖を通してみてくれ」
それだけ🌺に言い置いて、ジャミルは返事も聞かずに部屋を出ていく
「………」
残された🌺は少しの間渡されたシャツをジッと見ていたが、やがてゆっくりと着替えを始める
あまり使われていないシャツは新品も同然で、けれどずっとこの部屋にしまわれていたそれからは微かに彼と同じ匂いがしている
「………(やっぱり、ちょっと大きいな)」
指先しか見えない袖口を口元に当て、🌺は小さく笑う
カリムの提案には驚いたけれど、こうしているとジャミルに包み込まれているようで、ふわふわと胸が踊った
「おい、終わった…か……」
そんなささやかな幸せを噛み締めていると、廊下で待っていたジャミルがノックと共に扉を開ける
だがその瞬間飛び込んだ光景に、ジャミルは不自然に言葉を収束させた
「ねぇ見てジャミル!ぶかぶかw」
ジャミルの登場に気づき、ニコニコと楽しそうに駆け寄る🌺
しかしジャミルの視線は袖口に釘付け状態である
「………っ」
自分のシャツに身を包んでいるという前提条件がインプットされている今
🌺の細い指先だけを覗かせているその有様は、🌺が【女】である事をまざまざと見せつけているようで…
「……(くそっ、顔が見れない…っ)」
そんな事、ずっと昔から知っていたはずなのに
それでも今更のように早鐘を打つ心臓が落ち着かなくて、ジャミルは🌺の顔を見る事ができなかった