2020年10月24日から始まった、劇団四季『オペラ座の怪人(こけら落とし公演)』観劇のレポです。あまりの感動に、備忘録がてら作成しました。全体通してだとめっちゃ長いので、興味のあるところだけ、かいつまんでお読みくださいね。


注意点
・劇のネタバレ、たくさんしてます。ご注意ください。
・04版映画、原作小説にも言及している箇所があります。ちなみに、スーザン・ケイ著の『ファントム』、舞台『ラヴ・ネヴァー・ダイ』は未読、未視聴です。
・セリフ、歌詞、時系列、歌のタイトル等、微妙に違うかもしれません。大目に見てくださると嬉しいです。


目次
1.オペラ座沼に入るまで
2.観劇に出発・開演まで
3.観劇前半〜幕間まで
4.観劇後半〜カーテンコールまで
5.観劇終了後・まとめ
6.おまけ(の考察と感想)


1.オペラ座沼に入るまで

 2020年9月、某少年マンガのオタクである私は、いつものように二次創作小説を書いていました。その小説は同人誌に収録予定のもので、テーマは狂愛。なかなかに闇深い、けれど個人的に性癖にくるものに挑戦するつもりでした。あ、のっけからヤバい話題ですが、私はいたって普通のオタクです! コワクナイヨー!
 その小説は、推しキャラがヒロインを軟禁するというもの。その中で、家に閉じ込めたヒロインのために、推しがピアノを演奏してあげるシーンがありました。そこを書くのに、なにか素材になるものが欲しいと思い記憶を巡らせることに。
「そういや、オペラ座の怪人に軟禁(監禁?)のシーンがあったような……」
 オペラ座の映画(04版)をはじめて観たのは大学生時代。演劇の講義で先生が取り扱っていて、しきりに「猿のオルゴールは重要なアイテムですよ!!」と言っていたことを覚えてます。序盤のシャンデリアが上昇していくシーン、モノクロからカラーとなって時代が移り変わる演出に圧倒されたのも良い思い出です。
 ただ、講義では先生の解説の声も入るし、後ろの席に座ると画面も見にくかったので、あんまりのめり込んで見られませんでした。なので後日、DVDをレンタルして自宅でゆっくり視聴したのですが、ハピエン厨の私には刺さらなかったのか、最後の結末がどうなるのかも今となってはあやふやでした。(この頃の私に「しっかり見ろや〜〜!!」とカツを入れたくて仕方ない。うっかりガラが悪くなるほどには)
 ということで、まずはwikiにアクセスしてあらすじを読みました。
「えっ……なにこれ切なっ……。こんな悲しい話だった? ……でも映画見返したい」
 そして2回目の映画視聴から約5年後、改めて04版の映画をレンタルするのでした。
 無事、見終わった私の感想はというと。
「あんまりだ!! あんまりなラストだ!! こんな悲しい話ある!?!? ファントムさ〜〜〜ん!!!(号泣)」
 自分でも引くほど泣きました。本当に、めっちゃ悲しかった……。Twitterでも叫びまくってました。
 実は、wikiのあらすじを読んだときから、ファントムさんのことが気になって仕方なかったんですよね。なので情に絆されまくって、ファントムさんびいきになっていたんだと思います。映画の中でクリスティーヌが、ファントムさんを罠にはめるためとはいえ、彼が嫌がり傷つくことを知ってて、聴衆の面前で仮面を剥ぎ取った部分に怒りを覚えるほどには……! ねえちょっとアンタ!! なぁんで人の嫌がることするわけ〜〜〜!?!? (うっかりオネエになる)
 とまあ、そんなこんなで「ファントムさんを幸せにしてあげ隊」を心の中で勝手に発足しました。ジェラルドファントムさんをスマホの待ち受けにし、原作小説を読み、試しに短いファントム二次創作を書きました。すべてはファントムさんを幸せにするため、そして素敵なファントムさんを見て自分が幸せな気持ちになるためです!


2.観劇に出発・開演まで

 オペラ座沼にハマって間もなく、東京の四季劇場「秋」にて、オペラ座の演目が開幕しました。しかも柿落とし公演! まっさらの劇場のオープニングを飾るわけです。
 オタクの私は大喜びでしたが、実際は「いつか観に行けるといいなぁ〜」という感じ。関西住みの私には、少し敷居が高かったのです。加えてこのコロナのご時世。葛藤やら苦悩やら周りへの説得やらで……ちょっと大変な思いをしました。
 ですが、周囲の理解と協力を得て、最終的には無事チケットを取ることができました!(奇跡的に2席空いてました)。週のはじめに座席を探して、週末には東京へ出発。こんな急に決まった旅行ははじめてで、その週はずっと浮かれていました。
 というわけで、10月31日にお連れさんと一緒に東京へ。ハロウィンだったので、ホテルの中でファントムさんの仮面を被って楽しんでました。(百均のダイソーで怪人マスクという商品名で売ってました。その仮面の下半分をはさみで切り取ると、なんちゃってファントムマスクができあがります)ついでにカラオケにも行って、劇団四季のオペラ座の曲も歌い、気分を高めていました!
 翌日の11月1日。赤と黒のオペラ座ネイルをし、そして前日に新橋の雑貨屋さんで買った赤バラのイヤリングでオペラ座モチーフを耳を飾り、オタクはでかけました! オタク、すぐに推しや作品イメージのものを身につけたがる!(気分上がる)
 午前11時少し過ぎに、四季劇場の建物に入りました! 入り口にある大きなスクリーンに、オペラ座の広告が流れているのを発見し、ウワッ!! ってなりました! ついに来たぞ! 四季!! オペラ座の広告が流れたタイミングでそばに立ち、ついでに写真を撮ってもらいました。ミーハーですみません。
 劇団四季の演目は、実は過去に数回観たことがあります。小学生の頃、学校で年に一度、演劇が観れる特別な日がありまして、四季が学校に来てくださったんです。その頃観た演目は『ライオンキング』。広い体育館をぐるりと、隅から隅まで走っていく役者さんの全身の演技を今でも覚えています。
 高校生の頃には、友人に誘われて一度だけ、宝塚を観に行きました。観劇の経験はそのくらいで、劇団四季の劇場まで足を運んだのは今回がはじめて。誰かに誘われて行ったわけでもなく、自発的に劇場に行けて、とてもワクワクドキドキしてました。
 昼食を食べ終え、2階席の観客の入場がはじまると、まずは入り口のお土産コーナーに。めっちゃかっこいい赤色のプログラムを買いました! せっかく上演前に買ったのに、ワクワクしてまともに読めませんでした(笑)
 上演まではまだ時間があったので、劇場内にあるお土産屋さんにまた立ち寄りました。あまりにも色々なグッズが欲しくて仕方ない……! ついつい店員さんに「いっぱい買いたいんですが、いいですか」って聞いちゃいましたよ! どんだけ買うつもりだよ。ちなみにお買い上げしたのは、東京限定のTシャツ、ハンドタオル、クリアファイル、ノート×2、ピンズ、チケットファイル……。本当のこと言うともう全部買いたかったよね。それはさすがに諦めましたけどね。
 そして、いざ座席へ。私たちの席は2階席の右側、S2の席です。勘違いかもしれませんが、確かこのあたりの席って、例の5番ボックスあたりではなかったでしょうか……?(原作小説読んでのぼんやりとしたイメージ)まあ、そうでなかったとしても脳内では5番ボックス付近というイメージでウキウキ過ごしていました。おめでたいやつです。それに、なんと言っても新品の劇場がすっごい綺麗で、テンション上がりまくり……。まっさらの赤いシート、うふふ……。
 さっきまで聞こえていたオーケストラの試し吹きが鳴りやみ、観客の喋り声が静まります。注意事項等の案内の後、徐々に暗くなる劇場……。
 あ〜!! ついに始まる〜!!!(テンション↑↑)


3.観劇前半〜幕間まで

 はじめは、1905年のオークションのシーンから。あっ、ハンニバルのポスターだ! 映画を観たときは気づかなかったんですが、これは序盤のオペラ座の演目のものだったんですね。
 すべてが映画に忠実で驚きました。いや、舞台を元にして映画が作られたわけなんですが、先に映画の方を見ていたのでそういう感想を抱きました。(連れの人もそう言ってた)
 猿のオルゴールが出てきたとき、その音色の悲しさにウワッとなりましたね……。ファントムさん……。そして思い起こされる講義中の先生の声。「猿のオルゴールは重要アイテムですよ!!!」ごめん先生、このインパクト強すぎてそれ以外の解説覚えてないです(こらおまえ)
 最初の鳥肌シーンは、やっぱりシャンデリアですかね! オークションの司会の声の後、すぐにカバーを剥がされ登場したシャンデリア! そして大音量で鳴る『オペラ座の怪人』のパイプオルガン!! ト、トリハダーーー!!! 生オーケストラぁぁぁ!!!
 シャンデリア、本当に豪華で驚きました。確か今回の公演からリニューアルしたんですよね。手作業でつけられたという数多のガラス、きらびやかだった! それが舞台でゆっくりと目を覚まし、舞台手前まで移動して、宙を舞いながら舞台外側まで上昇していく……。舞台装置すごいなあ……。
 見惚れていたらあっという間に、舞台も劇中の時代も変わってました。ハンニバルのリハーサル、登場人物紹介。カルロッタの「スィンク・オブ・ミー」。びっ、美声だ〜!! って、あれ? カルロッタの歌唱シーンが長い! 本来なら「忘れないでいてね 過ぎし……」で怪人がいたずらをするはず。ですが、ファントムさんの気が長くなったのか(笑)、彼女にもう少し歌わせてから異変が起きました。そういう細かな変更点があるのですね〜。
 そしてクリスティーヌとメグの登場! 今回は山本クリスティーヌさんでした。『スィンク・オブ・ミー』の歌い出しは、なんとも自信なさげ。けれど「過ぎし日の愛よ」あたりから伸び伸びとした、本来の歌唱力に。そして間奏が流れると同時に、本番舞台で歌っている様子に変わります! 素敵ぃ〜〜〜! この曲が大好きなのと、クリスティーヌの歌声があまりにも美しいので、序盤だというのに早、涙してしまいました(早すぎぃ!)。でもなんか、自然に涙出たよね……。
 するとボックス席から「ブラヴァー!」との声。加藤ラウルさんの登場です。「あなたラウルなのね!」と心の中で呟き、私がクリスティーヌになりました。加藤ラウルさんは、もう声がね、ドンピシャでした。カッコイイ! それから「赤いスカーフ」「リトルロッテ」などの意味が、原作を読んだ今では分かりました。分かる! 分かるぞ!(進研ゼミ)
 ふたりのやりとりを見てラウクリいいぞ〜、と思っていたときに、エンジェルの怒りの声が……。エンジェルめっちゃ怒ってるやん、嫉妬してるやん、いいぞ〜、とニヤニヤしつつも(おい趣味)、「無礼な若者め 愚か者め」と怒りを込めて歌うエンジェルなんているのだろうか、と思いました(笑)まあ、エンジェルといっても、いつでも優しいわけじゃないから……。
 『ザ・ミラー』大好きです。鏡の中、よく見ると仮面男がいるー!! ファントムさーん!! 待ってた!!! 「おいで エンジェル・オブ・ミュージック……」とまるで催眠術のような声に誘われて(好き)、クリスが鏡の中へ!!
 そして鳴るパイプオルガンの「ジャーン! ジャジャジャジャジャーン!!」テンションマックスです!!! この『ザ・ミラー』からの『オペラ座の怪人』の流れが好きすぎて!!! 本当にたまらん!!!
 そして、イケおじ佐野ファントムさんに連れられて、ボートに乗るクリス……。スモークによる湖の演出と、湖の中や舞台の上手・下手から出てきた無数のロウソクの演出が幻想的。さらに、二階席+オペラグラスありだったので、ボートの中に敷き詰められたクッションの刺繍まで分かりました。
 だが!!! 私はそういう細部を見ることをおろそかにして!!! オペラグラスでずっとファントムさんを見ていました!!! 「歌ってるー!!」「お帽子かぶってるー!!」「お帽子脱いだー!!」と、心の中はキャーキャー状態。だって、ファントムさんが生で動いてるよ……目の前で歌ってるよ……生きてるんだよ……??(そりゃそうじゃ CV:オーキド博士)
「ああ〜、今オペラ座を観にきてるんだなぁ〜」という実感も湧きました。何度でも胸に刻みたい、至福のときでしたね。ああ、もう満足したわ……もうなんもいらない……今日はありがとうございました……(早すぎるだろ)
 そして『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』。大好きだよこの曲〜! 映画版の『オペラ座の怪人』とこの曲のシーンを、YouTubeで流して、幸せなため息をつきながらメイクするのが好きなんです、私(なに情報だよ)。今までジェラルドファントムさんが至高!! と思ってましたけど、佐野ファントムさんの存在も大きくなってきましたね……。やっぱり生は違うんだね。「わーたーしーにー触ってほしい〜」、んじゃ さ わ ら せ て !!(声デカ)
 花嫁クリス人形が出てきたときは、心の中でちょっと笑いました。なんか「びよ〜ん!!」みたいな感じで、お人形が両手を広げて手前に出てくる感じなんですけど、それが面白かった。クリスは気絶してたけど、あれは私だったら笑っちゃうな、赤ちゃんくらい笑いのツボが浅いので……。まあこうして、クリスの不思議な一日が終わるのだった……。

※ こんな感じで延々と語るとめっちゃ長くなるので、以下、なにか言いたいところだけ箇条書きにします。

・中華風衣装に身を包んだファントムさん可愛い。お帽子好きなのかな?? 可愛い。羽ペン動かしてなに書いてるんだろ〜。ドン・ファンの作曲中かな。後に配る支配人たちへの手紙も書いてるのかも。
・仮面を取られて怒るファントムさん。それから美への憧れを這いつくばりながら歌うシーンは、憐れでありながら、終盤のモンスター化(勝手にそう呼んでる)の片鱗を覗かせている感じ。心の闇を感じるけれど、思わず同情しちゃうよね……。
・支配人オフィスで、フィルマンとアンドレが話してるときだったかな? 奥の暗闇の方で、地下から地上へと誘導するファントムさんとそれについていくクリスの影が、ちょっと見えるんだよね。こういう演出に気づくと嬉しくなります!
・フィルマンとアンドレのふたりが好きです。主役キャラがいなくても楽しい。コミカルな歌の流れでなのか、全然説明的じゃなくて、楽しくシーンが進む!(ちなみに、連れの人が平良フィルマンさん推してました)
・マダム・ジリーの杖ドン(壁ドンではない)。映画より厳しめキャラなんだな。好きです!
・手紙朗読中に、ファントムさんの声がかぶさり、次第に本人が読み上げる演出いいな〜!
・カルロッタが椎名林檎さんに見える。なんか雰囲気が似てる……! イルムートのときのカエルの鳴き声は、ファントムさんお得意の腹話術だったのね! 分かる! 分かるぞ!(進研ゼm略)
・カルロッタ退場で一旦幕が降りて、支配人が舞台手前の指揮者さんとオーケストラに「バレエから始めるんだ!」と指示をしてたの、良かったですね〜。本当に、イルムートを観にきた観客になった気がする、お話に引き込まれる演出でした。
・イルムート上演中に、ファントムさんがシャンデリアよりも高い位置にいて、現れては消えてを繰り返し、アッてなりました(そのたびにときめくオタク)。右にいたと思ったら左から現れて……。移動大変そうです。(連れの人は、彼の替え玉を見たと言ってました。やっぱり、瞬間移動はできないもんね)
・と思ったら、バレエ団の後ろのスクリーンでブケーを殺害するファントムさんのシルエットが! 優雅なバレエを眺めつつも、観客には緊迫感が……。そして、ファントムさんの大きな高笑いの後、パイプオルガンの音! 宙吊りにされたブケー! ……宙ぶらりんの彼の姿を見て、小さいお子さんが泣き出したりしないかつい気になってしまったオタクです。(でもみんな声を上げなかった。エライ)
・『オール・アイ・アスク・オブ・ユー』、美しかった。いい曲ダナー。でもファントムさんの歌うリプライズはめちゃくちゃ切ない!! 天使像が降りてきて、その上で静かに悲しげに歌う彼。どこかで聞こえてくるふたりの歌に耳を塞ぐその姿、思わず抱きしめてあげたくなった……。ファントムさーん!!!
・彼の全力の宣戦布告を聴き、ジャジャジャジャジャーンを聴き、ここで一旦休憩、幕間に入りました。ちょっと、この時点でもうなんも言えねぇ……ってなりましたね。素晴らしくてね……。もうほんとすごくてね……。
・レポを書こうと思ったのも、このタイミングでした。ちゃんと言葉になるか、人語になるか分からなかったのですが、ちゃんと日本語になってますでしょうか〜!?(マイクを客席に向ける)
 めちゃ長レポ、後半に入ります。


4.観劇後半〜カーテンコールまで

・第二幕は、オーケストラのオペラ座メドレー(アントラクト)で始まりました。ああ〜最高〜!!! 耳が幸せ……。ずっと聴いていたい。
・「マスカレ〜〜〜!!!」、ここもオペラ座の見所ですね! この大階段いっぱいに俳優さんたちが、色とりどりの細かい装飾をした衣装と仮面を身につけて歌い踊るのは、圧巻です。個人的には、ラウルの黒地に金の装飾のあるナポレオン・ジャケット(というらしい)がお気に入りです。クリスもセーラームーンみたいな月の飾りを頭につけてて、可愛らしかった!
・そして照明が段々暗く怪しげな色に……。音楽を遮るようにして表れたのは、待ってました、「赤い死」の登場です!! デン、デン、というリズムに合わせてゆっくり大階段を降りてくる、どくろ仮面さま(タキシード仮面さまみたいに言うなよ)。前日、リプでフォロワーさんとこの場面についてお話ししてたので、楽しみにしていたシーンのひとつでした! ついね、ニヤニヤしちゃいますよね!! 指輪を奪い去り、一瞬の火花を散らした後、地面の切穴の中に姿を消すシーンも……良かった……!!
・マダム・ジリーからファントムさんの情報を聞くラウル。建築家でデザイナー、音楽家で発明家。素晴らしすぎるスキルでしょ……。天才だ……。でも、見せ物小屋にいたという過去は、悲しすぎるよな……。
・みんなでドン・ファンの練習をするシーン。あれ? 映画版にこんなシーンあったかしら……(うろ覚え)。あと、映画版で大階段を降りながら「カルロッタは演技をもっと練習しろ」とか「クリスティーヌ、恩師のところへ戻ってきなさい」とかいうセリフがこの辺に移動してるんですね。変更点だ〜!
・映画版より、ファントムさんを罠にはめようとすることへのクリスの葛藤シーンが長い気がしました。クリスはクリスなりに悩んでいたのね。何度も、「私できない!」って拒絶してましたしね。そりゃああの人なにするか分からないから、殺人も平気でするから……怖いよね。(まあ私は好きですが)そのなにしでかすか分からん怖さもイイんだけどね!(暴走するファントムオタク)
・余談ですが、個人的にはクリスに「化けの皮を剥がすという名目で仮面を剥ぎ取るなんて、かわいそう」とか言って欲しかったな……! でも、彼女は恐怖に支配されているから、そういう配慮ができないのは当たり前かあ。あと、「異議あり!!」ポーズのラウル、かっこ良かった(逆転裁判好きです)
・墓場のシーン。クリスの綺麗な歌声……。お墓のセットも、光る大きな十字架があって綺麗だった。そしてそこにファントムさん立ってるからびっくりした。そ、そんなとこにいるんだ……。
・「おいでエンジェル・オブ・ミュージック……」、前半の鏡の中に誘われるシーンと、対比になってて良いですよね。あそこではラウルは関与できなかったけれど、今度は違う! ラウルがちゃんと助けに来る! 三人が三角形を描いて立ち(まさに三角関係を表してますね)、『エンジェル・オブ・ミュージック』のリフレイン三重奏を奏でるシーン。美しすぎて震えましたね……。こんな美しい三重奏初めて聞いたかも……。
・ファントムさんが持ってた、なんか火の玉が出てくる謎のステッキがちょっと面白かった(ツボ浅い問題)。欲を言えば、映画であった剣術の戦闘シーン、観たかったな〜! いつか舞台で実現してほしいです。
・そしていよいよ、『ドン・ファンの勝利』。演目の開会前に、客席後部(?)の左右のスピーカーから、「ドア閉めました〜!」という声が聞こえる演出、面白かったです。これが後の、ファントムさんの腹話術笑い声の演出に応用されるんですね……(いろんなところからファントムさんの笑い声が聞こえるやつ)。あと、松明を持った役員が、舞台手前の床面にあるライトに火を灯すと、スポットライトが順番にぽぽぽぽぽ、と灯っていく演出も良かったです。照明さん素敵。
・役者さんがご馳走を運んでくるシーンで、オペラグラスを装着する私と連れの人。心の中で笑いました。ふたりともご飯好きすぎぃ……!
・これは映画版を見て思った感想ですが、ドン・ファンの劇の内容自体が、怪人とラウルとクリスの関係性をほのめかしている気がします。さすが彼の作ったオペラ。
・クリスの衣装、胸元に赤バラのコサージュが! オペラ座のテーマのお花ですね! りんごで遊ぶクリスが可愛かった〜! そして、出てくる黒ずきんの男。ファントムさんが主役になり変わっているんですね。(映画版では被り物をせずに堂々と出てきてましたね(笑)マスカレードの大階段を赤の衣装で降りるときといい、勇気ある……!)彼の左手薬指にはクリスの指輪が光ってました。
・とうとうクリスが男の黒ずきんを取る! 仮面つけたファントムさんの姿が現れる! 彼が語ったあと、元々クリスのものだったエンゲージリングを彼女の指にはめさせて(ファントムさんの激アツ求婚シーン……!!!)、「クリスティーヌ!  君がすべ(て)――」 ジャーン!!! ジャジャジャジャジャーン!!! 
・……もう、この仮面剥ぎ取るシーンは何度見ても、つらい。あんまりだ……。仮面を取られると、彼のモンスター化(これが本性かも)を視覚的に表すためなのか、黒からブロンズへと(ファントムさんの地毛かな?)髪の色も変わってしまう。そしてはっきりとよく見える、顔の片側の醜い部分……。(ラウルが奇形と言ってましたね)
・再び地下へ連れていかれるクリス。「怪人を捕まえろ!」という大勢の声。「なぜなんだ!」と怒りと悲しみがない混ぜになった怪人の慟哭(悲しい)。そして、地下に着き、クリス人形がつけてた花嫁衣装のヴェールを彼女につけ、ブーケを持たせる。悲しみのクリス。けれどラウルが檻の外に到着すると、ブーケを放り投げてラウルの元へ走る。そして、怪人はラウルを檻の内側に招いて、その首をロープで吊り上げる……。
・ここからのクリスの葛藤のシーンは、胸がギュッてなりますね。彼女の葛藤を思うと、どんなにつらい思いでその場にいたんだろうって……。真に愛しい人だけを愛して破滅するか、偽りの愛を怪人にささやき愛しい人を助けるか、究極の選択です。ラウルは危ない状態だし、怪人はもう、自分のこと(エゴ)しか考えてないから。仮面を外したら、心の仮面も外れちゃうんだね。クリスティーヌも言ってた、汚れた心(自分本位の心、怒り、憎しみ、嫉妬)があらわになっちゃうんだね……。
・怪人は気づいている。クリスは自分を愛していないと。だからこそ、冷酷な強硬手段に出た。愛することを強いた。愛を、恐怖で従わせて手に入れようとした。
・意を決したクリスが「私の愛を見せてあげるわ」と、怪人に本気のキスをする。それも彼をぐっと引き寄せて、二度も……(このシーンと『エンジェル・オブ・ミュージック』のリフレイン音楽で泣きかける)。きっと、クリスは怪人に心から同情したのでしょう。愛を知らないゆえに、このような汚れた選択を強いることしかできない人なのだと。かわいそうな人なのだと。クリスはラウルと育んだ本物の愛を知っているからこそ、怪人に「愛とはなにか」を教え、愛を分け与えることができたんだよね。
・怪人はしばらく呆然としている。クリスからこのような形で愛を教わり、愛を分け与えられて、衝撃を受けている。そして、悲しみながら、この人を力づくで手に入れることを、諦める。クリスが本当に幸せになれるのは、自分のそばじゃない。彼女の恋人を解放し、自分が身を引くのが彼女の幸せなのだと、苦渋の決断をする。それは、クリスに愛を教えてもらったからこそ、愛する人の幸せを優先することができた決断だった。恋は自分本位のもの。けれど愛は、相手の幸せを希うもの……。彼は愛を知ったんだ。与えられた愛を、愛で返したんだ。彼は悲しいけれど、正しい選択を、最後に選ぶことができたんだ。
・「出ていってくれ!」「お願いだから!」。ふたりが去り、ひとり残る怪人。猿のオルゴールの音色を聞いて、華やかな時期の象徴である『マスカレード』を一緒に口ずさむ。その歌声の悲しいこと……。クリスのヴェールを大事そうに抱えて、涙を流す怪人……。私ももう、涙を抑えることができませんでした。
・そして、行ってしまったはずのクリスがひとり、戻ってきます。そして指輪を、なにも言わずに彼に手渡す。これは、ドン・ファン上演中の怪人からの求婚を拒否するというより、「これは記念にあなたが持っていて。私を愛してくれて、ありがとう」という意味合いではないかと解釈しています。
・怪人は、最後に『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』のサビのメロディを歌います。そして玉座に座り、悲しみの淵で引きこもるかのように黒いマントで姿を隠します。そして……怪人を追いかけてきたメグが、地下の住まいに到着します。彼女は、玉座にかかっている、少し膨らんだマントを勢いよく取ってしまう。悲しみの底にいる怪人の姿があらわになると思いきや、その席には怪人のあのマスクだけが、ぽつんと残されていた……。
・これにてオペラ座の怪人は終焉です。悲しみと切なさのあまり、最後の方は情緒が乱れてしまい、ちゃんと見たいのに、見れば見るほど涙が溢れて……。ああ……ファントムさん……。
・余韻に浸っていたら、明るいカーテンコールが始まりました。俳優さんたちがひとりずつ舞台から出てきて、お辞儀をしてくださいました。拍手、拍手、拍手の嵐! 脇役キャラの後は、加藤ラウルさんが。拍手が大きくなります。次に、山本クリスティーヌさん。拍手がさらに大きくなります。それで素敵な演出、ラウルがクリスの手の甲にキスしましたよ! 萌えましたね……! そして、一番最後に登場したのは、もちろん主役の佐野ファントムさん! 拍手の大きさも、観客のボルテージも最高潮です!!! 私も心の中で奇声をあげましたよ!! ファントムさーーーん!!! ファントムさーーーん!!!!!
・俳優さんたちみんなで手を繋いで、お辞儀をしてくださいました。それも、カーテンが降りて「ああ〜行かないで〜」と思ったら、嬉しいことにまたカーテンが上がり……! みんながわたわたして、もう一度手をつないでお辞儀してくれるんです(可愛い)! 感謝と賛辞の拍手の嵐は鳴り止みません。そのカーテンコールが何度も何度も繰り返され、七回ほどかな、そのくだりをしてくださいました。カーテンが上がるたびに、ウワーッまたしてくださる〜!!! とオタクは大感激でした。
・そして本当に最後、手を振って退場する俳優さんたちに手を振りかえし、彼らが舞台からはけた後、ただひとり残ってくださっている佐野ファントムさん……。舞台の上手側で、もう一度丁寧なお辞儀をしてくださり、観客全員で割れんばかりの拍手をおくりました。ファントムさーーーん!!! また観にくるからね〜〜!!! 待っててね〜〜〜!!!(心の声原文ママ)ああ、名残惜しい!!!
・ファントムさんが去った後、ああ……ってなりました。満足感と、名残惜しさと、感動とが胸の中に渦巻いていて、なにも言葉にならなかった。観客の退場がはじまっても、連れの人に「なんも言えねぇ……って感じやわ」とため息混じりにコメントするだけ。本当に、ぺちゃくちゃ喋る気にはなれなかった。この余韻を、ずっと静かに抱いて、ずっと噛み締めていたかった。


5.観劇終了後・まとめ

 ……しかし、売店でグッズをちゃっかり買う(またかよ)。普段お世話になってる方々へのお土産を買うついでに、東京限定のキーホルダーとメモ帳を追加購入。あの感動の後では、やっぱり欲しくなっちゃうし、もっと劇場にお金を払いたかったんだよね。
 それで、連れの人と帰路に着きました。ホテルに着くまでは、ずっとオペラ座の話をしてました(やっと感想を話せるようになったけど、あんまり言葉にならなかった)
連れ「最後、舞台に上がり込んでファントムさんを抱きしめてあげたいっていう、強い強い衝動に駆られて自分でも驚いたわ」
私「舞台に上がり込むw でもその気持ちめっちゃ分かるぅぅ〜〜!!!」
 ファントムさんがクリスのヴェールを抱いて泣くシーンで、連れの人が鼻をすする音が聞こえてきたんです。分かる、分かるよ……。
 鼻の話題ついでに。あまり言及すべきじゃない話題だけど、クリスを思って泣いているファントムさんの鼻の下に光るものが見えたんだよね。実は、そこに感動していて。全力で演技しているからこそ、全力でファントムさんに魂を乗り移らせているからこそ、だからこその泣き顔だったんだと思うから。その表情をもっと見たいのに、胸に焼きつけたいのに、そこから涙が滲んで、オペラグラスがぼやけてよく見えなかったんだよな……。
 私もみんなも、ファントムさんと一緒に泣いたよ。ひとりじゃないよ、ファントムさん。もしも彼に会えるなら、あなたの悲しみに寄り添ってくれる人が、こんなにもたくさんいるんだよ、と伝えたいですね……。


まとめ

 ここまで色々と情熱のままに書き連ねてきましたが、感想を一言でいうなら『劇団四季のオペラ座はすごいらしいではなく、すごい(確信)』ですかね!(キャッチコピーお借りしました)
 オーケストラの美しい生演奏、ロイド=ウェーバー作曲の至極の名曲たち、驚きいっぱいの舞台装置、精巧な美術、華美な衣装、照明、演出、音響……そしてなによりも、俳優さん方の、魂揺さぶられる全力の演技、表情、歌声!
 物語自体は美しくも悲しい話だったのに、得も言われぬ感動と生きる活力を、たくさん、たくさんいただきました。コロナ禍の不安定な時期にもかかわらず、最善の形で尽力してくださった四季の劇団員の方々、スタッフさんたちに心からお礼を述べたいです。こんなに素敵な経験をさせていただき、ありがとうございます! また何度でも観に行きます!
 この観劇体験で、作品への愛もより一層深まりました。引き続き、『ファントムさんを幸せにし隊』は、他のオペラ座関連作品を吸収して、いそいそと創作活動に励みたいと思います。
 そして、読みにくい部分がたくさんあったにもかかわらず、この長文レポにお付き合いいただき、ありがとうございました! このレポが、みなさんの観劇体験を思い起こすきっかけとなったり、私と同じように初観劇を体験したいと思われたりしましたら、幸いです。
 これからも一緒に、四季を、オペラ座を愛していきましょうね!


6.おまけ(の考察と感想)

・はじめてファントムさんがクリスを地下に連れてきたとき、美への憧れを口にしますよね。あれって、単に美しい容姿への憧れだけでなく、美しい愛への憧れもあったのかなぁと。外側の美だけでなく、内面の美(愛)にも焦がれてたのでは、と考えるとグッときます。
・映画版では『ポイント・オブ・ノー・リターン』あたりまで、クリスが魂のレベルで音楽的に、または恩師や男(性)としてファントムさんに惹かれてる部分があると思ってたけれど、舞台版は「できあがったラウクリ←ファントム」みたいな感じを受けました。怪人には目もくれてない感じかな。(個人的感想)だからこそ、ファントムさんびいき目で見るとかなり切なかったなぁ。「音楽を与えた、愛を与えた、そのお返しがこれか!」まさにコレ。
・『ポイント・オブ・ノー・リターン』、「もはや退けない」。罠にかけるクリスの心情をよく表してるし、劇中で求婚を考えている怪人の気持ちも表してますよね。さらに、地下でラウルを人質にしたときにも、このメロディが。「もはや退けない」。今度こそ、後戻りはできない。クリスの大きな葛藤と、怪人の無我夢中の必死さが伝わります。
・冒頭で、年老いたラウルがハンニバルのポスター、猿のオルゴール(特にこれ)をどれだけお金を積んでも手に入れるという行為。ラストを知ると、その重みが分かりますね。ラウルは、長年ファントムさんのことを気の毒に思ってたんだよね。クリスと結婚した後は特に、口には出さないけれどあの怪人のことを考えて、すまないことをしたと思ったときもあったんじゃないかな。若い頃はそうは思わなくとも、成熟しまくった老年期にはそういう思いを抱くことが多かったのでは、と妄想しました。
・『オペラ座の怪人』は、仮面と赤いバラがモチーフになっているけど、劇中でバラが出てくることはほとんどありませんでしたね。映画版みたいに、ファントムさんが黒いリボンを結んだバラを置いていくことがなかった。(原作小説では墓場にバラが咲いてましたね)。けれど、赤いバラを一本贈るという意味は「あなたしかいない」「あなたを愛しています」だから、ファントムさんがクリスに想いを寄せている、愛の物語である、ということを表すには、ぴったりのモチーフですよね。だからメインイラストとして使われているのかな?
・『The PHANTOM of the OPERA』のタイトルロゴの話も。あれは割れた鏡をイメージしているように思えます。映画版の最後では、ファントムさんがヤケになっていくつも鏡を割るシーンがありましたよね。そこをなんとなく彷彿とさせます。舞台でも映画でも、鏡というのは大きな役割を果たしてましたしね。
・そうそう、見どころのひとつであるシャンデリアの落下シーン! その落下のタイミングが、映画とも原作小説とも違うんですよ! どこのタイミングで落ちるかは……舞台を見てからのお楽しみということで♡
・最後に……。ファントムさん、好きだ結婚してくれ(落ち着いて)

 今度こそ終わりです! こんなところまでお付き合いいただき、ありがとうございました! オペラ座はいいぞ……!

(了)20201103