※ 一応背後注意で……!

 ラシャードはベッドの上で荒い呼吸を繰り返していた。身体は燃えるように熱く、勝手に涙まで滲んでくる。なにより、身体の奥がむずがゆく、誰かに触って欲しい衝動に駆られてしまう。
 無論、誰かと言っても、彼女のうるんだ瞳は彼しか捉えていないのだが。
 ――この薬で、貴女も心ゆくまで楽しめますよ。
 全ては、彼のあの言葉に耳を傾けてしまったからだ。少しでも、普段と違う体験ができることを期待してしまったからだ。
 ラシャードは、先ほどの自分の無邪気な好奇心を、ほんの少しだけ後悔していた。
「いかがです? そろそろ効いてきましたか」
 自身の髪紐をするりと解き、キンブリーは耳元でうっそりとささやく。
「欲しくなってきたでしょう」
「ま、まだ、そんなこと、は」
「そうですか。それは残念」
 特に残念がる様子もなく、キンブリーは緑色の小瓶の蓋を開ける。それがラシャードの強がりだと見抜いていたようだ。
 ラシャードには心なしか、彼の頬が赤く染まっているように見えた。そして、普段よりも落ち着きのないような声色に、違和感を覚えた。
 一言で言えば、冷静さを欠いている。
 ――もしや、彼も……。
 突如、ラシャードは顎を掴まれ、上を向かされた。
「口を開けなさい」
 言葉通りに小さく口を開くと、キンブリーの舌先からとろりとピンク色の液体が落ちてきた。それがさっきの媚薬だと気づいたラシャードは、逃げようとかぶりを振る。これ以上飲んでしまったら、間違いなく自分はおかしくなってしまう。狂ってしまう。
 しかし、顎を掴む手はそうやすやすと譲ってくれはしなかった。
「はぁっ、はっ……」
 ピンク色の薬は、ラシャードの口内になおも注がれ続け、くちびると顎を伝ってキンブリーの手を汚す。
 すっかり興奮した様子のキンブリーは、口角を妖しく優美に吊り上げながら、フーッ、フーッ、と息を乱している。珍しく顔が赤いのも、薬の恩恵を受けたからだろう。
 ラシャードはたまらずに、彼の解けたネクタイを引っ張った。ただこうして口移しをされているだけで、勝手にぞくぞくと身震いしてしまうのだ。まるで、そんな行為にすら熱を上げ、悦んでいるように。
 あふれた涙をこぼすと、自分と同じように興奮しているキンブリーが見える。それがまた、お腹の奥をぞくりとさせた。
 ――今から彼と繋がれる。どんな激しい夜になるのだろう。どんな気持ち良いことが待っているのだろう。
 白いもやが頭の中を支配し、期待ばかりが膨らんだ。
 ラシャードは、最後の一滴をごくんと飲み込む。けれど、もっと違うものが欲しくて、はしたなく舌を出したまま彼を見つめた。
「おや、物欲しそうな顔をして……。なんです、既に効いているじゃないですか」
 彼は期待に応えるようにとろりと唾液を落とし、そのまま彼女のくちびるを奪った。
 薬の分量を誤った彼らが、くたびれるまで夜の海を泳いだのは言うまでもない。

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大豆あずきさまからいただいた、うちの夢CP(キンラシャ)イラストを文章化しました。あずきさん、hotで素敵なイラストをありがとうございました! (20191009)